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ぼくの兄の場合 (エクス・リブリス)

ぼくの兄の場合 (エクス・リブリス)

ぼくの兄の場合 (エクス・リブリス)

作家
ウーヴェ・ティム
松永美穂
出版社
白水社
発売日
2018-07-14
ISBN
9784560090565
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ぼくの兄の場合 (エクス・リブリス) / 感想・レビュー

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ケンイチミズバ

僕は臆病ではありませんでした。父が喪失に耐えつつ、できれば兄の代わりにどの子を死なせたかったか考えているのがわかった。あまりに痛々しい弟の思い。晩年まで残されたしこり。一番愛され期待された兄、期待されなかった姉、弟。しかし、兄は野戦病院で両足を切断され、人生が永遠に変わってしまったことを知り、もう青春はないと思いながらあっけなく死んだ。19才、出征しわずか数ヶ月。世の中と一体になることを望んだ父親のせいで志願した。母宛の手紙には戦闘について一切書かなかった兄の思いやり、両親が亡くなりようやく書けた真実。

2018/08/27

ぐうぐう

歴史における戦争は、戦争の記憶によって形成されている。個々の記憶には差異があり、それ以前に記憶は曖昧なものだ。国家によってその曖昧さが利用され、歴史が捏造されることもままある。しかし、書き換えるのは国家に限ったことではない。16歳年上の兄がヒトラーユーゲントから武装親衛隊となり戦場にいたとき、著者であるウーヴェ・ティムはまだ三歳にも満たなかった。戦場で命を落とした兄は、日記を付けていて、家族に何通もの手紙を送っている。(つづく)

2018/08/25

くさてる

第二次世界大戦に武装親衛隊の一員として戦い、負傷して命を落とした兄について、残されたわずかな資料と自分の記憶をもとに綴った内容。派手な内容でないし、お涙頂戴のロマン性もない。むしろ、ここにあるのはただの家族の歴史だ。そしてそこから生まれる、歴史のなかにただ「在る」普通の人々の息遣いのようなもののリアルに圧倒された。静かだけど、強い一冊。

2018/08/16

ヘラジカ

兄を介しての戦争体験や家族との記憶、ホロコーストに対する論考をつらつらと書いた自伝的小説。ノンフィクションかと思いきや、訳者の解説を読むとオートフィクションという半自伝とのこと。事実にしては些か平々凡々とした人生が、ただの記録ではなくフィクションも入り混じっているということに逆に驚いた。エモーショナルで揺り動かされる読書というわけではないので失礼な話少し退屈してしまったが、大切に読まれるべき作品なのはよく分かる。確かに教科書に載っていそうだ。

2018/07/21

ソングライン

第2次世界大戦時のドイツ、武装親衛隊に志願し東部戦線で戦死した兄が残した戦中日記。16歳年下の弟である作者が、父、母、姉が亡くなった戦後復興したドイツで、やっと記すことのできた家族の戦後。長男を亡くし、自分の存在理由を見失っていく父、兄の亡くなった地を死ぬ前に訪ねたかった母、戦後の青春を失った姉の想い、そして兄はあの虐殺に関与していたのか。家族が、自国が築いてきた教養も文化も、あの悪業の前では無力で黙殺せざるを得なかったのか。作者の苦悩にみちた家族の告白が胸に迫ります。

2019/04/20

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