KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

今日の花を摘む

今日の花を摘む

今日の花を摘む

作家
田中兆子
出版社
双葉社
発売日
2023-06-21
ISBN
9784575246384
amazonで購入する Kindle版を購入する

今日の花を摘む / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

Kei

帯に、中高年世代の性愛に挑む、とあるが、以上に、50代女性を取り巻く今の社会生活、自身の更年期不調、親の介護、女友達とのいざこざ、昇進問題や部下の教育、定年後の生き方などが重層的に描かれている。登場人物皆それぞれ、具体的、例えばジミーチュウの靴を履いている、で、とてもよくわかる。芸術全般へのオマージュも多くて、ふふふ、となる。茶事を、茶会を開くまでの用意や裏方の動きから見せて、かつ濃密閉鎖性の中で、秘め事を膨らませる。案外に、人は好きなこと、推しで、救われる、が、気分良く生きる主人公に相応しい結末でした。

2023/09/02

のぶ

女性のための女性の小説という感じだったが、男性の自分が読んでも面白かった。出版社に勤めるかたわら茶道を嗜む愉里子は、一見地味な51歳の独身女性だがその趣味は、男性との肉体を伴ったかりそめの恋。それをひそかに「花摘み」と呼んでいる。これが茶道で知り合った70歳の万江島との関係の中で意味を問われることとなる。生活での幸せもある。仕事での幸せもある。趣味の幸せもある。性愛の幸せもある。家族の幸せもある。性愛の問題以外にとらわれず、職場でのセクハラ問題、親の介護問題にも踏み込んでおり、内容の深さを感じた。

2023/07/09

Ikutan

ああ、タイトルの『花を摘む』ってそういうことだったんですね。中高年の性愛をタブーを怖れず挑んだという今作品。51歳の独身の主人公の趣味は『花摘み』つまり、男の人との肉体を伴ったかりそめの恋だという。前半は主人公に共感もできず、読むのを止めようかと思ったのですが、途中から井上荒野さんの『あちらにいる鬼』を彷彿する女同士の連帯感、さらに職場でのセクハラに立ち向かう姿などに引き込まれてしまいました。そして、自分を機嫌よくさせるって大事だなと。茶道の描写が丁寧に描かれているので、知識があればもっと楽しめたかも。

2023/11/25

ネギっ子gen

【今日一日の花を摘み取ることだ。明日が来るなんてちっともあてにはできないのだから】挫折本になる可能性がありますけど、それは勿体ない。傑作です!(当社比) 前半さえ乗り越えられたら、その後は、想定の斜め上を重層的に話が展開する、至福の読書。冒頭の、<私は、私を機嫌よくさせるのがうまい。他人に機嫌を取ってもらわず、自分をちょっと、甘やかす。そういうふうに自分を拵えてきたのだ>から、小説世界に引きずり込まれました。※元が「小説推理」連載なので、白紙で本書に臨まれたい方は、以下のコメントは読まないことを推奨。⇒

2023/10/30

とよぽん

読友さんのご感想に誘われて。田中兆子さん、今度はどんな意外性を与えてくれるのかと期待しつつ読んだ。そして、読み終えた今は、期待以上の広く深く遙かな世界を見せてもらって大満足の力作だと思った。個性あふれる登場人物、出版社勤務という日常と芸術文化の茶事を、そして中年から老年へと歳を重ねていく心身の変化に絡めて描く、魅力あふれる物語だ。後半の社内セクハラ事件も、スリリングで読み応えがあった。

2023/11/17

感想・レビューをもっと見る