陽炎の市 (ハーパーBOOKS)
「陽炎の市 (ハーパーBOOKS)」のおすすめレビュー
スティーヴン・キング絶賛、全米ベストセラー3部作の第2弾! マフィアたちの欲望と暴力世界からの逃避行
『陽炎の市(まち)』(田口俊樹:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)
ドン・ウィンズロウ『陽炎の市(まち)』(田口俊樹:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)は『業火の市』に続くダニー・ライアン三部作の二作目である。1980年代、アメリカ東海岸の街プロヴィデンスを舞台に、アイルランド系とイタリア系のマフィアが文字通り血で血を洗う抗争を繰り広げる前作から数か月後、主人公のダニー・ライアンとその仲間たちの逃避行から本作は始まる。舞台は前作と打って変わり陽光眩しいカリフォルニア州、ロサンゼルス。前作のプロヴィデンスという街を舞台にしたローカルな世界の出来事から、一気に広がりを見せる本作は、ダニーたちの抗うことのできない欲望がショービジネスの世界にまで入り込んでいく。暴力の世界から抜けだそうとするものの、他の生き方を知らない男たちは、新たな欲望に絡めとられ、より深い暴力の世界に引きずりこまれてしまう。そんなダニーたちが底なしの欲望を掻き立てる街ハリウッドに足を踏み入れるのだ。当然ながら「しあわせに暮らしましたとさ」というお話になるはずがないのである。
そして犯罪小…
2023/6/27
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陽炎の市 (ハーパーBOOKS) / 感想・レビュー
W-G
流浪の末にハリウッドに辿り着くダニー一行。華やかな虚業の裏側に食い込んで力をつけていく流れかな?と期待していたのに、お母さんの家でニートしながら時々、強盗やたかり屋に精を出しているだけにも見えて、イマイチ大物に成りきれない。地元のモレッティファミリーのその後がお得意の群像劇で描かれ、キャシーの意外な顛末やピーター夫妻の最期と、血の匂いは主にそちらで濃い。『犬の力』シリーズと比較すると、暴力や殺戮の描写が圧倒的に少なく、どこか気の抜けた進行であり、これが最終作での爆発のための溜めであればいいのだが。
2023/07/01
のぶ
ダニー・ライアン三部作の第二弾。感想を一言で言えば、ウィンズロウらしいハードでストレートなギャング小説で圧倒的な面白さに満ちている。一人の女性を巡るマフィア同士の抗争に巻き込まれたダニー・ライアンが仲間と共に自由を求め、逃亡し、家族のために全うな人生を送ろうともがき苦しむ。やっと掴んだと思った幸せな時は砂漠の陽炎の如く消えていくが、それでもダニーは諦めずに安息の時を追い求める。今回はテーマが映画製作に関わる作品なので、前作のような派手さはなく、比較的静かな雰囲気で続いていく。第三弾に期待が高まる。
2023/07/01
harass
三部作の二作目。破れた主人公たちは散り散りになり逃亡。司法取引などで一段落する。潜伏先でそれぞれの生活と野心。自分たちの戦いを映画にする話があり、制作に主人公たちが絡むのだが… しかし迂闊すぎるだろ。アマゾンのレビュではあまり良い評価ではなかったが、これはこれで楽しめた。まあ一作目に比べると間延びしているのは確かだが。乗りに乗った筆致とストーリーに唸りつつページを捲る。実に読ませる作家だ。おすすめ。次の三作目でこの作家は筆を折るとのこと。
2023/07/24
icchiy
ダニー・ライアン三部作の二作目。アイルランド系ギャングファミリーのサーガが描かれているが、中心はダニーの生きざまである。チャラ男の全く正反対にいる男の子なかの男としてファミリーを率いていこうとするが上手くいくばかりではなく、どちらかというと多くを手にするが不幸せになっていく落ちが用意されている。今回はハリウッドを中心に書かれており、映画産業との絡みも興味深い。ダニーの悲壮な恋物語もあり、飽きさせない。あと最後の3作目でウィンズロウ作品ともお別れなのは悲しすぎる。
2023/12/21
ポルコ
まさかのハリウッドへの展開。でもまたまた悲劇的な話が多く、ページをめくるのが辛い。ラストシーンは納得できないこともあるが、次作の第三部は楽しみ。解説ではドン・ウィンズロウが今回のシリーズで作家引退と書いてあったが、そんな事言わずに軽い作品でもよいので書き続けて頂きたい。
2023/07/03
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