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ある女の生涯

ある女の生涯

ある女の生涯

作家
島崎藤村
出版社
ゴマブックス
発売日
2016-07-20
ISBN
9784777146154
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ある女の生涯 / 感想・レビュー

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帽子を編みます

本当は、青空文庫で読みました。読友さんの感想を読んで、絶対読まなくてはと手に取りました。淡々とした筆致、色の薄い水彩画のような文章。彼女の生涯、裏切られ、望みはかなわず。描写される、父の入った座敷牢、隠された包丁や鋏、ちょっとした失敗への反応。本人は自覚なく、周りの人たちは、「やっぱりね」「もうね」「これでは…」声に出すことはなく決められる療養、彼女の見た犬、本当にいたのか…。何も自分では選べず、満足な生涯ではなかった。寂しい話でした、こんな人もいた、そう思わせる作品でした。

2020/07/27

S.Mori

島崎藤村の名作。有名な『破戒』よりも好みでした。おげんと呼ばれる不幸な女性の生涯を憐れみ深く描いて、胸に迫る内容です。夫の度重なる裏切り、自分の家族の無理解、女性が本当に人間らしく生きられない社会の仕組みなどにより、おげんは心を病んでいきます。寂しさが漂う彼女の葬式の場面には胸の詰まるような悲しさがありました。この小説は島崎藤村の姉をモデルにしているそうです。封建的な昔の日本では、こんな風にして寂しく死んでいった女性も多くいたでしょう。この小説はそんな人たちに対する鎮魂の書だと思います。

2020/07/21

うきぽんぬ

中山道の須原宿を歩いていた時、【清水医院跡】という看板があった。島崎藤村『ある女の生涯』の舞台となった場所だと知ったことがきっかけで読む。須原は小さいながらにも歴史を感じる味わい深い宿場町であったが、その情景がありありと浮かぶ自然描写、明治の女性の壮絶な人生を垣間見ることができた。もう一度須原へ行きたい無性に。

2023/04/24

champclair´69

#島崎藤村 #読了 障害のある四十の長女、甥の少年を連れて流浪する老女おげん。女にだらしがなく放蕩の末死んだ夫、座敷牢で狂死した父を持つ。そしておげんもまた幻覚に悩まされ、寂しく惨めな一生を精神病院のなかで終える。 藤村の姉の人生をモデルに描いたのだという。救いようのない物語だが、空想の中の話ではなく、明治という時代には、間違いなくこのように辛酸を嘗めた女性が実在したという事実。これが自然主義文学ということか。

2022/04/27

小魚小骨

後に尾を引く作品。何度も思い返す。特に犬の下りは背筋が粟立った。狂うということは違う世界に行ってしまうのではなく、現実と少しずれた道。隣り合わせよりもっと近い曖昧な境界線なのだな。「狂う」って実に的確な表現。調律が狂う感覚なのかも。身近に精神疾患者の多い藤村(家系的に)だからこそ書けた作品と感じた。哀しくも美しさを感じる文章。苦しくなった。

2024/01/31

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