古屋兎丸短篇集 1985年のソドム
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古屋兎丸短篇集 1985年のソドム / 感想・レビュー
ぐうぐう
単行本未収録作を集めた古屋兎丸最新短編集。谷崎潤一郎「少年」、太宰治「女生徒」のコミカライズが、オリジナル作「ソーマキルの予告」「麻布十番に死す」と並んで収録されているのだが、そこに違和感はまるでない。少年少女の屈折が時代もジャンルも超え、創作者を捉え続けていることの証しなのだろう。創作者と言えば、表題作は必見。この自伝的作品で古屋は、漫画家を志すまでを描いているのではなく、少年期の古屋が自身の表現を獲得するまでを描こうとしている点がユニークだ。(つづく)
2023/09/03
阿部義彦
古屋兎丸先生の単行本初収録の作品集。わりと近年(2015~2021年)発表された作品です。巻頭の谷崎潤一郎の原作の『少年』だけは確か中公文庫の『谷崎潤一郎漫画読本』で既に読んでました。白眉は表題作である『1985年のソドム』です、ほぼ自叙伝に近い様ですね、YMOやストップひばりくん等、そのまま描かれてます、親をだまして、吉祥寺の高校に進学して、憧れの生徒の通う美術予備校に入り、女子二人組と仲良くなり、インディーバンドに嵌り、誘われて見に行った東京グランギニョルの「ライチ光クラブ」で人生にスイッチが入る。
2023/10/08
まるのすけ
短編集。はじまりから趣味的偏執性の高い描写があるなぁ。と思っていたら、収録作には2018年、2021年出版の同人誌作品もあるとのこと。 あの当時の感じや、表現欲への素直さ青さ、友人たちとのゆるやかな別れなど、真っ当に若さを満喫していらっしゃって、素敵でした。 この作品があるから、途中収録の女生徒の息苦しさが救われる。
2023/08/25
読書好きの変人
太宰治や谷崎潤一郎、「ベニスに死す」といった作者が思春期に影響を受けたもののコミカライズが楽しめる。特に自伝的な表題作「1985年のソドム」が良い。閉鎖的な地元を飛び出して東京のきらびやかな明るみに出たいという気持ちは自分に重なるところもあるが、主人公が努力してる描写が弱く、それでいて人生うまくいっている感があるから主人公の抱える悩みがとても浅く見える。この人が描く青年の顔はすごく好みなんだけれど、どうもプロットに面白みがないらしく、ずっとコミカライズだけしててほしい。
2024/04/25
Yuuki
ライチ光クラブに出会うまでの自伝的表題作を楽しみに。 どの話も良かったーーー でもやっぱり1985年のソドムが良かった。表現を続ける人生を送っていらっしゃるなとそしてこれからも表現をし続けたいという欲が最後の数ページに特に凝縮されていて本当によかった。
2023/08/27
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