映画術 その演出はなぜ心をつかむのか
ジャンル
映画術 その演出はなぜ心をつかむのか / 感想・レビュー
どんぐり
動線、顔、視線と表情、動きから映画の演出を語る映画監督の連続講義録。溝口健二の『西鶴一代女』にみる男女の「向こう側」と「こちら側」、成瀬巳喜男の『乱れる』で男女の越えてはいけない一線を距離感と関係性から演出した「人物をどう動かすか」の動線の分析が面白い。ほかにヒッチコックの『サイコ』で死体となったジャネット・リーの焦点を欠いた瞳と鳥化したアンソニー・パーキンスの顔の不気味さ、俳優に対して「機械的に動け、無表情になれ」と要求した小津安二郎など、カメラの前で起こる出来事をいかに魅力的で深いものにするか、→
2022/03/19
くさてる
アクターズコースで行われた演技と演出をテーマにした講義を書籍化したもので、これが滅法面白かった。「動線」「顔」「視線と表情」「動き」「古典ハリウッド映画」というテーマを具体的な映画を例に挙げて分かりやすく解説しているのだけど、その説明が実に明瞭で、映画の構造や仕組みをよりリアルに感じられる内容になっている。なるほど、こうみせるのか、こう組み立てるのか、という感じ。映画以外の小説やドラマ、マンガを楽しむ際にも役に立ちそうな視点だった。
2022/03/05
しゅん
映画における「動線」と「演技」の概念が今までよくわかっていなかったのだが、この本ではじめて近づけた気がした。あとがきに書かれているように、「演出」の授業をしようと思ったが、生徒が俳優志望の学生だと後で知れされて、急遽「演技」に近づけたという本著。その折衷が、強い魅力となっているように思う。『サイコ』のオリジナル版とリメイク版の顔の比較は、演技の良し悪しの提示としてマジでわかりやすい。三隈研次『座頭市物語』における背中の使い方の解説も見事。面白すぎて一日で読んでしまった。
2022/05/18
one_shot
映画を見ていて「何かとんでもないことが起こっている」と感じる時、大体はそれが何だったのか知れないまま映画館を出て友人と「あそこの場面、映画だよなぁ」なんて知ったような口をきく。本書は映画監督の塩田明彦氏によって僕たちが「映画的瞬間」などと言っている瞬間に本当は何が起きているかが解剖されている。役者志望の生徒への授業再録という形で書籍化されたもので「動線」「顔」「視線と表情」「カサヴェテスと神代辰巳」などタイトルだけでも魅力的な七本が並ぶ。あい間に挟まれる巨匠の現場ゴシップも面白かった。
2021/12/12
たかやん
「映画とは◯◯である」なんてことは全然言ってくれなくて、むしろクエスチョンマークがどんどん膨らんでいく。印象的だったことの1つは、ヒッチコックのオリジナル版とガスヴァンサントのリメイク版の『サイコ』とを比較した箇所。見比べてみて初めてわかるぐらいのちょっとした違いが、同じ脚本ほとんど同じカット割りの2つの映画をまったく別物にしてしまう決定打になるのだから、映画ってつくづく不思議に思えます。
2019/09/18
感想・レビューをもっと見る