ポスト・ディストピア論: 逃げ場なき現実を超える想像力
ポスト・ディストピア論: 逃げ場なき現実を超える想像力 / 感想・レビュー
パトラッシュ
なぜディストピアがテーマのフィクションが急増しているのか。小説や漫画、映像の傾向調査から、そうした作品を求める社会状況を分析していく。新型コロナのパンデミックに分断を厭わぬトランプ流政治、防犯カメラやポリコレ強化による監視国家化などで閉塞感を覚える人びとが、現実からの逃避を求めていると見る。冷戦の最盛期に世界破滅小説が流行したように、未来を信じられなくなっているのだ。言及されていないがライトノベルでの異世界転生物の隆盛も、脱出願望の具現化だろう。絶望があればこそ希望もあると思えるほど人は強くないのだから。
2024/02/01
ヤミー
ディストピア小説にどんどん現実が近づいていくような気がずっとしていた。コロナ禍を経て決定に時間がかかる民主主義の弱点が浮き彫りになり、独裁や監視社会の強みが指摘されたり、ポリコレの過熱化で正義の在り方が問われたり、女性観の変化に伴う様々な複合的な要因による少子高齢化や経済の停滞などでフェミニズム対アンチフェミニズムの対立が顕著化していたり、想像を超えるほど高度なAIの運用が本格化していたり。「古今東西のディストピア作品」を通して現実の社会問題を考えると、その解決の糸口が見えてくるのではないだろうか。
2024/03/13
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