深く、しっかり息をして 川上未映子エッセイ集
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「深く、しっかり息をして 川上未映子エッセイ集」のおすすめレビュー
「主人」って、あなたは夫の所有物なの? 川上未映子が10年以上書き続けた、うまく”生きる”ための力強い言葉に勇気づけられる
『深く、しっかり息をして』(川上未映子/マガジンハウス)
同窓会に参加した話、妊娠した時の体力的な辛さ、サイン会で10代の子が泣いた話、孤独について、金縛りについての話、パートナーの呼び方について……。日常で感じる種々雑多な心持ちを描いたエッセイでありながら、実は一貫して「生きる」ことについて気づきを与えてくれるのが、本書『深く、しっかり息をして』(川上未映子/マガジンハウス)である。
本書の大きなテーマは「生きる」ことである。エッセイのひとつひとつを読み進めるうちに、最終的に人間がどう生きているか、あるいはどうすればうまく生きていけるか、という考察をほぼすべての話から得られることがわかった。
例えば、「初めて出会うお友だち」の回が興味深い。中学校の同窓会に参加した話で、同学年だった400人中、川上氏を含めて60人が参加したらしい。何十年も前にかつて3年間、時間と場所を共有した「知人」ではあるが、ほとんどの人が激変しており、顔のどこを見て何を話せばいいのかわからない、といった印象があった。しかし、世間話などから始めじりじり話していくうちに、不思議…
2023/7/13
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深く、しっかり息をして 川上未映子エッセイ集 / 感想・レビュー
starbro
川上 未映子は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。雑誌Hanakoに11年間連載していたエッセイ「リボンにお願い」の書籍化、著者はエッセイよりも小説の方が好い気がします。https://magazineworld.jp/books/paper/3243/
2023/08/10
hiace9000
川上さんは自己省察と日本語遣いの魔術師だと、私は思う。その作品が与える読み心地たるや、世界観に取り込まれるのみならず、文字表現の醸す馥郁たる文学的香りに包まれ、日本語そのものに惚れ直す時間となるほど。 本著はHanako寄稿のエッセイ集。小説よりぐっとライトな語り口で作家・川上未映子の変容と成長と日常所感が綴られる。言葉の魔術師らしく、浮かんでは消える感情や言葉との真摯な向き合い方、言葉による支配や縛りつけによる生きづらさを、柔らかくもコミカルに、そして時には辛辣に、読み手の前に広げ向き合わせてくれる。
2023/12/17
いつでも母さん
実は何となく敬遠していた川上未映子さん。2011年からの12年間Hanako連載エッセイ集。エッセイなのだが、どれも小説を読んでいるような・・そんな感じだった。読了には数日かかった。最初の『悲しみを乗り越えられるわけ』が好い。12年間って干支が一巡りしちゃう。あの頃私は・・(汗)正直あとがきがしっくりくる。川上さんのファンには堪らないエッセイ集だと思う。
2023/07/29
mukimi
「きみは赤ちゃん」から読み始めた川上未映子氏のエッセイ。女性向け雑誌の連載であり年下女性への応援歌のよう。感受性豊かで少し不器用な女子の先輩の話みたいな。空の色や風の匂いに幼少期の思い出がぐっと押し寄せて涙が出てしまうようなセンチメンタルを、持っていていいんだよ、それが生きていく力になることもあるよと、教えられて、新生活の始まるこの時期に、少し涙が出そうになった。人間はいつも現在を取り逃す宿命に晒されていると言い切ってくれたのも、今を全力で生きるというよくある指針の曖昧さに立ち尽くしていた私に染みた。
2024/04/03
ちゃちゃ
飾らぬ等身大の未映子さんが垣間見られるエッセイ集。女性読者の目線に立ち、子育ての苦労から大好きな洋服や着物の魅力、コロナ禍における社会の変化にまで言及し話題は多岐にわたる。けれど一読者として興味を抱くのは、やはり言葉や人の心、世界的に評価され多言語に翻訳された『夏物語』など彼女の作品に纏わる話題だ。出産・子育てを経験した彼女は『夏物語』で“生む性”として女性のあり方に正面から対峙した。かけがえのない命を生み出す女性に寄り添い、年齢や立ち場に応じて見えてくる風景を、今後も社会に鋭く発信してほしいと切に願う。
2023/10/05
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