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鹿川(ノクチョン)は糞に塗(まみ)れて

鹿川(ノクチョン)は糞に塗(まみ)れて

鹿川(ノクチョン)は糞に塗(まみ)れて

作家
イ・チャンドン
中野宣子
出版社
アストラハウス
発売日
2023-07-28
ISBN
9784908184451
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鹿川(ノクチョン)は糞に塗(まみ)れて / 感想・レビュー

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キムチ27

表題からすると「山水画と汚物の対比・・まさにアイロニー」頁を捲ると孤児院、虐待横行の取り調べ、運動圏(反政府運動、その後政治を牛耳る流れなって行く人らの闘争)我が国の昭和初期の雰囲気だ。20C半ば生まれの筆者の本職は映像。さもあらん!作品は訳も手伝って、サラサラ川のように流れる語り文。実に読み易い。核となるのはかの国に吹き荒れた戦争と分断の爪痕。国起こしの基となった中産階級を象徴するのは鹿川に聳え立つマンション群。経済発展とともに生まれたそれは「糞と汚物の上」に在る。人々の軌跡の中にもまれ、流された男女が

2024/02/09

Neishan

少しの間、積読になっていたが、読み始めたら進みが早かった。暗い、貧しい、希望がない話が多いのになぜこんなに面白いのだろう。個人的には「運命について」と「星あかり」が好きだった。この方の映画も好きで観ているが、ずっと未見だった『グリーンフィッシュ』を今年リバイバルでやっと観ることができ、表題作とのリンクを感じた。急激な近代化でインフラも脆弱な1980年代くらいの話が多いのだろうか。時代や社会に取り残された人々の声と生活が、しっかり描かれている。作中の人物の横顔はみな、泣きっ面でも凛々しい。繰り返し読みたい。

2023/12/20

sanukinoasayan

「オアシス」で第59回ヴェネツィア国際映画祭監督賞受賞の作者が、小説家から映画監督へ転身する契機となった作品集である本作。反体制デモを見物していて誤認逮捕された際に出会った男の、転げ落ちるように先鋭化して行く様。若い頃は共産主義に傾いたものの、年経て廃人同様の暮らしをしていた父親がスパイ容疑で逮捕された息子等。映画のように書き、小説のように撮る、と評される作者が冷徹な視点で、韓国が民主化される以前の独裁体制と朝鮮戦争によって引き起こされた、理不尽な抑圧と人々の葛藤を描いた息詰まるような作品群。

2023/09/05

ざじ

物凄く詩的な映画を撮り、物凄く映像的な小説を書く人だということが分かった。表題作のラストなんて、実在しないはずのイ・チャンドンの映画のラストシーンとして鮮明に脳で再生される

2024/02/26

Yuho Tanuma

韓国を代表する映画作家のイチャンドンが映画を作る以前に書いた短編集。どの話もイチャンドン映画に通じる市井の人々が不条理な現実のなかで踠くような痛みに満ちた物語。90年代初頭に書かれたものなので、80年代の韓国の民主化運動の爪痕が色濃く感じられる。韓国は日本と比べるとつい最近まで非常に抑圧的な社会だった。そこからの高度成長に伴い様々な歪みも生まれた。 こういう現実の中で生活していたからこそ書ける作品。 共産思想に懐疑的に関わった女学生が不条理な取調べを受ける「星あかり」が特に良かった。

2024/02/26

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