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十六の言葉

十六の言葉

十六の言葉

作家
ナヴァー・エブラーヒーミー
酒寄進一
出版社
駒井組
発売日
2023-09-20
ISBN
9784911110003
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十六の言葉 / 感想・レビュー

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buchipanda3

著者はイランで生まれ、幼い時にドイツに移住。本作の主人公も似た境遇で、彼女の分身のように思える。両国の言葉を解す彼女。言語は意味に加えて文化の風味も携えるが、実生活と離れた言葉は当人にとってどんな存在だろう。モウナーは祖母の葬儀でイランへ帰国し、二つの母国の狭間で覚束ない自分と向き合う。連想ゲームのように十六個のペルシャ語を客観的に見つめながら。彼女の祖母が奔放でパワフルだったのが印象的。それは迷走する主人公を鼓舞するかのよう。それ故に旅路を本当の意味で終えた彼女が発した恋しくてという言葉がとても沁みた。

2023/10/02

たま

祖母の葬儀のためイラン訪問中のイラン系ドイツ人女性の語り。16のペルシャ語(ドイツ語に訳すのが難しい)を章題とする構成で言葉にまつわる随筆を予想して読み始めたが、彼女の恋愛と家族の歴史が少しずつ語られ、最後には「主人公の出生を巡る衝撃的な事実が明かされる」(訳者あとがきと帯)。語り手の暗さ、語りの韜晦の理由はこれで分かったが、この事実から始めてもよかったのではないか。それまでに家族との関係が書かれているだけに後出しジャンケンのようであり、また、語りがこの事実を十分に物語に取り込めていない印象を受けた。→

2024/04/23

ヘラジカ

国境とは必ずしも地理的なものだけではなく人々の心のなかにも存在する。それは言うまでもないことなのだが、この作品を読んで移民にとっての”境界線”が如何に縺れ絡まりあったものであるかを再確認した。文化はもちろん、人間関係や個人的な記憶によって、二つの国に跨ったパーソナリティは四次元と言ってもいいような複雑さを見せる。そんな混沌と向き合いながら生きていくことを、飾らず簡明であり、時にユーモアを垣間見せる言葉で綴られた良作であった。新たに世界文学を担っていくかもしれない作家の作品が日本語で読めたことが喜ばしい。

2023/09/14

かもめ通信

イラン生まれドイツ育ちのモウナーは、著名人の自伝を書くゴーストライターのゴーストライターをして生計を立てている。祖母の葬儀のために、母親と共にイランを訪れた彼女は、祖母にまつわる思い出をたぐり寄せながら、自分自身のこれまでの人生をも振り返る。二つの言語の間を行き来しながら生きる自分自身を見つめる物語は、どこか艶やかでそれでいてなまめかしすぎず、異文化への戸惑いを感じさせながらも懐かしさや切なさがつまったしみじみとした読み心地。とても良かったが巻頭の「この小説を読む前に」はこの位置にはいらなかったかな。

2023/12/11

フランソワーズ

イランで生まれたが、ドイツの育ったモウナーを軸に、祖母、母の三代の女性の生き様が描かれる。そして特徴的なのはやはり、”二つの祖国”を持っていることであり、それゆえにアイデンティティに揺らぎがあること。アラブ的な旧弊な面があると思えば、ヨーロッパ的な奔放とした面もある。それが彼女たちの日常風景に投影されていて、とっても面白かった。

2023/11/21

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