『オズマガジン』編集長の「今日のよりみち」 日常はよりみちのなかにおもしろさ ② ~青森編~

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更新日:2018/4/11

 ダ・ヴィンチニュースは、雑誌読者のことを一番よく知っている各雑誌の「編集長コラム」企画をスタートしました! 今回ご登場いただくのは『オズマガジン』の古川編集長です。

 ダ・ヴィンチニュース読者のみなさん。こんにちは。オズマガジン編集長の古川と申します。先月からここで小さなコラムを書かせていただいております。オズマガジンを読んでいない方にも、そもそもオズマガジンなんて知らないという方にも、せっかくいただいた機会ですので、オズマガジンのことを知っていただけたら嬉しく思います。せっかくたくさんの方に読んでいただけるので、なにか少しでも実際に役に立つか、役に立たなくてもなにかが心に残るか、そんなコラムになるように頑張ります。自分自身にとっても、1ヶ月に1回のコラムですので、1ヶ月ごとの定点で、季節だったり、自分の感覚や感情が確認できるのは意義のあることだなぁと思います。

 編集部はもう12月の号を作っており、なんとなく過去のことに感じてしまうのですが(それは作ることに集中はできても、届けることの意識が弱くなってしまいがちという課題でもあるのですが)、今月のオズマガジンの特集は「週末ひとり旅」特集です。

 編集長になるとなかなかページを制作することはないのですが、今月号は高知県の中芸地区(東部エリア)と、青森県の八戸市に行ってページを作成させていただきました。

 今日は青森県の八戸に行ったときに感じたことを書きたいと思います。

 ひとり旅に向いている町、向いていない町というのは確実にあって、例えば人がたくさんいすぎると、みんなワイワイ楽しんでいる中でひとりになってしまい、なんだか落ち着きません。それからあまりに人がいない町も、逆の意味でひとり退屈で寂しい気持ちになりやすいものです。そういう意味で、例えばオズマガジンの読者の方にオススメできる近場なら、松本や名古屋などはとてもオススメです(名古屋はちょっと人が多いけど)。なぜならそれらのエリアは、前述の内容を満たしているというほかに、そこで1人で楽しめる「その土地ならではのトピック」がある。松本は民芸品や、そこから派生したかわいいものたちの宝庫だし、名古屋は喫茶店文化が発展しており、喫茶店を巡って、小倉トーストや鉄板のナポリタンなど、名古屋独特のメニューをいただけば、お腹も心もいっぱいです。

 その文脈で考えても、八戸はひとり旅向きの町でした。

 東北の、しかも青森県と聞くと、その先入観で尻込みしてしまいそうですが、八戸までは東北新幹線で3時間かからずに到着します。しかも八戸は東北地方にも関わらず、ほとんど雪が積もることなく、冬でも過ごしやすいのが特徴です。

 八戸でなにをして過ごすか? オズマガジン的に答えるならば、「読書」「海鮮ごはん」です。

種差海岸。広大な芝生広場は、なかなか見られない風景です
芝生に座ってぼんやりするだけで、旅に来たなあと思います

 まずは読書から。八戸は本の町として、行政が主導となり民間を巻き込んで読書を推奨しています。その象徴が市内の真ん中にある八戸ブックセンター。わかりやすく乱暴に言うと、代官山のTサイトが八戸市内にあるみたいなイメージでしょうか。選書は下北沢B&Bの内沼晋太郎さん。デザインはグルーヴィジョンズ。まさに、この場所に来なければ出会えない本と出会える本屋さんです。本を1冊選んだら、そのまま店内でビールやコーヒーを飲みながらのんびり過ごせます。「旅に出てまでそんな東京でもできることを」と思ったあなたは、本を買ったらお店を出て、バス停から、あるいは電車に乗って種差海岸を目指してください。市内から30分で到着するその海岸は、司馬遼太郎をして「宇宙からの来訪者があったら、いちばん先に案内したい海岸」とまで言わしめた美しい海岸。砂浜ではなく広大な芝生の海岸線に座っていると、ほんとうにいい気分で過ごすことができます。好きな場所で好きなだけ、ビールやコーヒーを片手に読書をお楽しみください。

那珂湊の朝市は日曜日を除く毎日開催です

 海鮮はなんといっても陸奥湊の朝市で。地元のおばちゃんたちが明るく話しかけてくれるから、むしろひとり旅の方が、会話が弾んで楽しいかもしれません。市場に着いたら、まずはホカホカの白いごはんとお味噌汁を買います。そして市場内を歩き、ごはんに乗せるために小分けされた海鮮を選んで、好きなだけ乗せるのです。イクラは200円、ウニは250円、オクラは50円、といった具合です。最後に醤油をかけたら、あなただけの海鮮朝ごはんのできあがりです。もしかしたらこれは、日本一幸せな朝ごはんかもしれません。

海鮮だけでなく、果物や乾物などが揃います

 時間があれば電車に乗って、十和田や青森市内の美術館(ふたつとも素晴らしいです!)へ。寺山修司記念館にも行きたかったけど、今回はタイムアップ。

 こんなこと書いていたら、また青森に行きたくなってきました。ひとり旅のいいところは、行きたくなったら誰かとスケジュールを合わせる必要がないことですね。そして行く前も、行った先でも、すべてが自由なことです。スケジュール帳の空いている週末を見つけるだけで(もちろん平日でも、むしろ平日が楽しいことも)、あなたはどこにでも自由に行ける。

 もし、その気になったなら、ぜひオズマガジンをご覧ください。今回は編集部がセレクトした12のひとり旅エリアと、そのエリアでの過ごし方を提案しています。あなたのひとり旅のお手伝いができたら、とても嬉しいなと思います。では、また来月お会いしましょう。来月は、最近なにやらじわじわ楽しい「東京・日本橋エリア」の特集です。

 ではまた来月。いい1カ月をお過ごしください。

『オズマガジン』最新号は10月12日(木)発売!

OZ magazine 2017年11月号
(スターツ出版)

古川誠(ふるかわまこと)編集長

1998年スターツ出版入社。販売部の営業を4年務めたのち、2002年よりオズマガジン編集部に配属。2008年より編集長に。ほかクルミド出版より小説『りんどう珈琲』を出版。2018年には2作目の小説「ハイツひなげし」をセンジュ出版より刊行予定

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▶次回の古川編集長のコラムは、11月12日頃更新予定です!