高校生のときの味を求めて…『オズマガジン』統括編集長がおすすめする「日帰りの旅」

暮らし

2018/5/17

 ダ・ヴィンチニュースの読者のみなさま。こんにちは。オズマガジンの古川です。

 5月に入ってもう半分が過ぎました。1年でもいちばん過ごしやすい季節が通り過ぎていくのを毎日窓から眺めています。春はいいですね。

 最新号のオズマガジンの特集は「日帰りの旅」特集です。オズマガジン編集部のメンバーが自信を持っておススメする都内近郊の10の町が紹介されています。

 たいていの僕たちといえば、週に2回の休みがあって、カレンダーを見ると一見ずいぶん多くの「休日」があるように見えます。でもみなさんの多くが実感されているんじゃないかと思いますが、僕たちの日常はなんだかんだ「やること」や、「やらなくてはいけないこと」が多くて、そんなにたくさんの余裕に溢れているとはとうてい言いがたいのではないでしょうか?

 でも一方で「あれ? 明日1日なんにもすることがない」という日も、ときどきあるのも事実ですね。そういう神様がくれたご褒美みたいな日に、その日がちゃんといい1日になったらいいなと思うし、オズマガジンはそういうときにこそあなたのそばにいられる雑誌でありたいと思っています。

 そんな「なんでもない日」に、読みかけの本と財布をカバンに入れて、身軽に出かけられる「日帰りの旅」特集。ぜひあなたの「なんでもない日」の役に立てるといいのですが。

 個人的な話になりますが、今回の特集の10の町のなかでひときわ感慨深いページがあります。それは「群馬県高崎市」。東京から新幹線で1時間。在来線でも2時間で到着するこの町は、僕が生まれ、高校時代の3年間を過ごした思い出深い町です。

 毎日通学して、放課後を過ごしたこの町は、僕にとっては「地元」であり「故郷」で、旅の目線でこの町を見たことはありませんでした。でも高校を卒業して20年以上経ってあらためてこの町を歩いてみると、たくさんの新鮮な発見がありました。

 たとえばパスタ。高崎は小麦の生産が盛んで、パスタのお店がたくさんあるそうで、市民のパスタの消費量がとても多いそう。僕がそのことを知ったのは最近のことでした。「パスタの町」という名前がついたのも、きっとここ最近のことなんじゃないかと思います。しかし今では県外からも高崎にパスタを食べにくる人もたくさんいるそうです。そして名店と呼ばれるお店もたくさん存在しています。

 でも、この名店、実は高校生のときに僕らが毎日のように通っていたお店だったんです。

 僕が高校生のときは、高崎はパスタの町なんて呼ばれていませんでした。あらためて「言葉は価値を作る」ということを感じます。パスタを価値化する言葉の出現により、この町の昔からある地元住民に愛されていたパスタ屋さんが、多くの人の知るところになる。たとえばこんな風に、雑誌やコラムで書かれることもそのひとつです。

 高校時代、僕は野球部で(群馬県は野球が盛んで、僕も名門校と呼ばれる高校に通っていました)、練習が終わって学校を出るのがだいたい20時過ぎ。朝は毎日8時からグラウンドの整備だったから、いま考えるとだいぶタフな毎日を過ごしていました。

 田舎出身の僕は高崎から電車で20分くらいの町に住んでいて、その町へ帰るローカル線は20時39分の次が終電、22時17分でした。急げば39分の電車に乗れる(学校から高崎駅までは自転車で20分くらい)けど、毎日へとへとに疲れていた僕たちはダラダラと学校を出て、あいた時間をそのパスタ屋さんで過ごしていました。

「デルムンド」のスパゲッティ&オムライス(昼1004円、夜950円)

 店名は「デルムンド」。僕はこのお店のパスタを高校時代に軽く100食は食べていると思います。おススメはハンバーグにデミグラスソースがたっぷりかかった「ハンブルジョア」。それからトマトソースに魚介のダシがたっぷり絡んだ「ペスカトーレ」。海山と呼ばれる海の幸と山の幸のコンビのパスタも捨てがたい逸品です。

 ほら。パスタが食べたくなってきたでしょう。ぜひみなさんも、高崎にパスタを食べに出かけてみてください。

「そんな非効率なこと」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう意味の少ない行動をしてみるのも、たまにはいいものです。

 編集長はオズマガジンのコラムで「いつのまにか行動するよりも先に、自分の気持ちを予測変換する癖がついていた」と書いていました。僕もほんとうにそうだなあと思います。

 言い尽くされた言葉ですが、百聞は一見にしかず。高崎、オススメです。それ以外のよりみちスポットもたくさん掲載していますので、ぜひオズマガジンをご覧になってみてください。1日じっくり楽しめると思います。

 最後に嬉しかったことをひとつ。

 久しぶりに高崎の町を編集部のスドウを連れて歩いたとき、デルムンドを訪問しました。そこでは高校生のときから変わらない店主とその奥様が、変わらない姿で厨房に立っていました。その姿を見られただけでも嬉しかったし、久しぶりに食べたハンブルジョアの味は涙が出そうでした。全く変わっていなかった。今にも高校生の僕がドアを開けて入ってくるんじゃないかと、そんなノスタルジックな気持ちにもなりました。

 あれから僕は美味しいものをたくさん食べたし、高いレストランにも行くようになりました。でも、高校生のときに毎日のように食べていたこのパスタは僕の外食の原点。僕が右往左往して人生を生きてきた間も、この場所でこの味は守られ続けていて、僕みたいにお腹をすかせた高校生の放課後の拠り所になっている。それは本当に素敵なことだなあと思いました。

 帰りにレジで「実は高校生のころ…」と言い出す前に、奥さんが「ひさしぶりねえ~。野球部の。変わらないわ~。いい奥さんもらって」と、あのころと変わらない笑顔で僕の肩をたたきました。

 数カ月後、地元の高崎に今でも住んでいる高校の同級生から連絡があり「まこちゃん(僕のことです)デル(デルムンドのことです)行ったっしょ。若い奥さん連れてたってデルで話題になってたよ」

 田舎は狭い(笑)。こんどは僕もこのオズマガジンを持って、新しい気持ちで高崎をまわってみようと思います。みなさんもぜひ。

 では、来月の特集は初めての企画で、またおもしろい特集になると思います。楽しみにしていてください。ではまた。いい1日を。

『オズマガジン』最新号発売中!

OZ magazine 2018年6月号
(スターツ出版)

古川誠(ふるかわまこと)統括編集長

1998年スターツ出版入社。販売部の営業を4年務めたのち、2002年よりオズマガジン編集部に配属。2008年より編集長に。ほかクルミド出版より小説『りんどう珈琲』を出版。2018年には2作目の小説「ハイツひなげし」をセンジュ出版より刊行予定

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