出版流通の危機を読み解く② なぜ書店が減っている?―雑誌で食べてきた街の本屋さん〈文化通信コラム第3回〉

ビジネス

2018/4/11

 この頃、新聞やテレビで、書店が減っていると報道されることがあります。全国で書店がない自治体がいくつあるとか、人々に愛された小規模な書店が閉店したといったニュースです。では、書店はどのぐらい減っているのでしょうか。そして、なぜ減っているのでしょうか。

 全国の書店数としてよく引用されるのが、アルメディアという調査会社の統計と、一般社団法人日本出版インフラセンター(JPO)という業界団体が発表している数字です。

 このうちアルメディアは、30年以上前から『ブックストア全ガイド』という書店名簿を発行してきた会社で、書店数のデータを90年代から集計しているのはこの会社だけです。一方、JPOが書店数の集計を始めたのは、出版社が共同で運営していた「共有書店マスタ」という書店データベスの運営を開始した2009年以降です。

 両者が発表する数字には違いがありますが、文化通信社では以前からアルメディアのデータを元に年に1回、全国の書店数統計をまとめてきたため、継続的な統計を行うため、アルメディアのデータを使い続けています。

 アルメディアの調査によると、昨年5月時点での書店数は1万2526店。ただ、この中には営業所や本部といった売場のないところも含まれており、売場面積がわかる店舗は1万1202店。さらに、この中には少しだけ雑誌を扱っていたり、ほとんど開店休業状態の店も入っています。

 図書カードを発行する日本図書普及によると、カードリーダーの設置店舗数は9080店(2017年3月末時点)ですから、それなりに書籍を揃えている書店は1万店を下回っているとみられます。アルメディアの統計をさかのぼると、いまから20年ほど前の書店数は2万3000店以上でしたので、この間に半数以下になったわけです。

 それでも、日本には書店が多いのです。例えば超大国アメリカには、正確な統計はありませんが、独立系書店が2311店(2016年の書店団体会員数)、最大手書店のバーンズ&ノーブルが約650店など、おそらく全体でも5000店にみたないと思われます(書籍販売で書店以外のチャンネルも大きいのですが)。

 また、欧米で比較的独立系書店が多いドイツでも、書店数は国内で3000店、オーストリアとスイス、ベルギーなどのドイツ語圏を合わせても5000店と言われています。それに比べると、減ったとはいえ日本には書店が多いのです。

 欧米と比べて日本に書店が多い理由は、前回のコラムでも書いたように、日本では書店が書籍と雑誌の両方を扱ってきたからです。欧米の書店は基本的に書籍を販売する店です。欧米の雑誌は読者による定期購読が多く、書店に雑誌が置いてあったとしても、ビジネスとしては小さいのです。

 日本の書店、特に中小書店は、雑誌の販売で利益を得てきました。ですから、日本には小規模な雑誌・書籍小売店が多かったのです。その雑誌市場が縮小したため、小規模な、いわゆる街の本屋さんが激減しているのです。

星野渉(ほしの・わたる)編集長
1964年東京生まれ。株式会社文化通信社常務取締役編集長。NPO法人本の学校理事長、日本出版学会副会長、東洋大学(「雑誌出版論」2008年~)と早稲田大学(「書店文化論」2017年~)で非常勤講師。著書に『出版産業の変貌を追う』(青弓社)、共著に『本屋がなくなったら、困るじゃないか』(西日本新聞社)、『出版メディア入門』(日本評論社)、『読書と図書館』(青弓社)など。

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