「新語・流行語大賞、誕生物語。」『現代用語の基礎知識』編集長コラム

文芸・カルチャー

更新日:2019/12/23

『現代用語の基礎知識2020』(自由国民社)

 ダ・ヴィンチニュースをご覧の皆さま、はじめまして。『現代用語の基礎知識』編集長の大塚です。これから4回にわたって、年末恒例となった「『現代用語の基礎知識』選・ユーキャン 新語・流行語大賞」についてご紹介していきたいと思っています。

 つい何気なく気軽に口にする言葉こそが「流行語」になりうる言葉です。

 今からさかのぼること35年。昭和の時代の後半=昭和59年(1984年)にスタートした「新語・流行語大賞」は、時代の流れとともに、いつのまにか「年末の風物詩」のようなものとして世間の皆さまに認知されることになりました。

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 そもそもは『現代用語の基礎知識』という年度版の新語事典のPRのため「言葉の賞」としてはじまりました。この本に掲載している言葉のなかから、毎年のノミネート語を選出して、現在では「トップテン」として1年の間に発生したさまざまな「ことば」の中で、軽妙に世相をついた表現とニュアンスをもって、広く「大衆」の目、口、耳をにぎわせた新語および流行語を選ぶとともに、その「ことば」に深く関わった人物・団体を顕彰するものです。1948年(昭和23年)に創刊した『現代用語の基礎知識』が、毎年「新語、新事象を記録し続けてきた」からこそ、1年を振り返り、記録する賞として成り立ったのだと思います。

 1984年の第1回発表時には、近年ほどの報道陣の数ではなかったとも聞いていますが、当時は「なにか面白いことをはじめたぞ」くらいのイメージだったかもしれません。大賞事務局が「時代の言葉を賞にする」という新しい視点でスタートしたからこそ、ここまで長く続けてこられたのかもしれません。

 新しく生まれる言葉や流行語からは、その時代の世相をみることができます。言葉は世相をうつすものだから、です。2019年という今年は、いったいどんな年だったのか、先日発表された第36回・最新のノミネート語は下記サイトでご覧いただけます。
>30語のノミネート語

 今年の特徴としては、まずスポーツ関連の言葉が多くあげられたことでしょうか。ラグビーワールドカップが日本で初めて開催されて、4年前の南アフリカ戦の番狂わせとともに五郎丸選手の「五郎丸ポーズ」を思い出した方も多かったのではないでしょうか。今回は開幕戦での勝利から盛り上がりをみせたことで、ラグビー関連の言葉の数々が候補語のなかに目立ちます。

 また、全英オープンゴルフで42年ぶりの勝利(メジャー初出場で初優勝)という快挙を成し遂げた当時無名に近かった渋野日向子選手の「スマイリングシンデレラ」もイギリスからの発信として、日本を明るく照らしてくれました。そして3月のイチロー選手の引退会見も、多くの方が深夜のテレビ報道に釘付けになったのではないでしょうか。会見時の語録の数々が話題になりました。

 ほかには、生前退位による改元で明るい雰囲気のなか、「平成」から「令和」へと改元となり、関連の皇室行事も多く祝日も増え、多くの方が皇室関連のテレビ中継に釘付けになった年だったのではないでしょうか。

 11月に発売となりました『現代用語の基礎知識2020』には、ノミネートされた用語はもちろん、言葉の数々でこの1年を振り返ることができる用語解説が掲載されています。装いも価格も手に取りやすく新創刊となりました本誌、ぜひ書店で手にとっていただけたらと思います。これから4回にわたって、新語・流行語大賞のこれまでと、これからのお話をしたいと思います。

大塚陽子
『現代用語の基礎知識』編集長
2008年版から「現代用語の基礎知識」編集部に配属。

『現代用語の基礎知識2020』発売中!