夏といえば「湘南」。湘南らしい音楽とソウルフードって?『散歩の達人』編集長コラム

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公開日:2021/7/22

散歩の達人
『散歩の達人』8月号(交通新聞社)

 こんにちは。散歩の達人編集長の土屋です。

 いよいよ東京オリンピック開幕!なのに、またも東京は緊急事態宣言。夏なのに開放感からほど遠い状況です。そんなときこそ本誌8月号。本誌を読んで、まるで夏の湘南エリアを歩いているように読んでいただけると嬉しいです。

「湘南」といえば、その範囲が曖昧で、いろんな説のあるエリアですが(湘南の範囲についてのあれこれは「『湘南』とはどこからどこまでか?」や7月31日配信のYouTUBEさんたつチャンネルをご覧ください)、今回は藤沢~大磯間という西側のエリアをご紹介。

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 湘南随一のターミナルで、古いものと新しいものの調和が心地いい藤沢。サザンやサーフィンのイメージが強く、湘南エリアの代表格ともいえる人気タウン・茅ケ崎。界隈きっての商業地としてにぎやかな繁華街を擁し、下町感が楽しい平塚。海水浴発祥の地で、古くから各界著名人の別荘地として独自の文化を育む大磯。辻堂も含め、JR東海道線の5駅周辺は街の個性が際立ち、わざわざ行きたくなる魅力が詰まっています。ここ数年でさらなる進化を経て、より楽しくなっている本エリア。その魅力をたっぷりお届けします。

 今号の大特集は藤沢~大磯とエリアが広いこともあり、第2特集なしの一本特集なので、おすすめ企画もたくさんありますが、その中でも本コラムでは個人的にも気になる「湘南サウンド」「湘南のソウルフード」について紹介したいと思います。

 まずは「湘南サウンド」。湘南の音楽といえばすぐに「サザンオールスターズ」と出てくるでしょうが、そもそも「湘南サウンド」とは何なのか。この言葉が広く使われるようになったのは1970年代後半~80年代前半。当時は、大瀧詠一や山下達郎のリゾート色が強いシティポップが人気で、その中でも特に「海」「夏」「リゾート」「サーフィン」的な、葉山~大磯あたりの海辺にイメージがつながるような音楽が「湘南サウンド」と呼ばれてきたようなのです。

 詳しくは誌面を読んでほしいのですが、その1970年代後半~80年代前半に思春期を迎えていた私は、その湘南サウンドにはまった口で、海に出るには2~3時間電車に乗らないとたどり着けない内陸に住みながら、そんな音楽を聴いて憧れの湘南に思いを馳せたものでした。

 特集内の企画ではさまざまなアーティストを紹介していますが、ジャケット入りで詳しく紹介できなかった中で特に好きだったのが、杉山清貴&オメガトライブ。たまたま実家に帰った時に、いくつもレコードが出てきたので懐かしくなりました。1985年発売のアルバム『ANOTHER SUMMER』に入っている「Route 134」には「パシフィック茅ケ崎」と、サザンも歌にした「パシフィックホテル」も出てきます。杉山さんは横浜生まれでハワイに住んでいるイメージが強く、今回大きく紹介していませんでしたが、じつは今は湘南エリアに住んでいるという説も! 残念ですが、杉山清貴さんフィーチャーは次回の特集に譲ることにします。

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茅ケ崎の雄三通りと鉄砲通りの交差点には、加山雄三さんのデビュー60周年記念モニュメントが2021年4月に誕生。

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茅ケ崎サザン通り商店街の街灯には、サザンの曲名が書かれたプレートもあり。

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サザン通り商店街には、かつての商店街事務所を改造した「サザン神社」も!

 続いて「湘南のソウルフード」ですが、それはカレーやしらす丼ではありません。今回2大ソウルフードとして紹介しているのは「タンメン」と「ジンギスカン」。中華と肉、なのです。湘南エリアは町中華の名店が多く、例えば藤沢ではサンマーメンの『古久家』。藤沢駅前の老舗ビルの地下1階にある昭和20年代開業の老舗で、サンマーメンや餃子のおいしさはもとより、お店の空間が「まさに昭和」な雰囲気で渋くて落ち着くのです。今回の取材時でも3回も寄ってしまいましたが、そんな知っている人を特に引き付ける魅力があるのが、湘南のソウルフード。

 平塚にある『老郷(ラオシャン)』の「タンメン」は、野菜たっぷりのあのラーメンではなく、やわらかな酸味を感じるあっさりスープに細麺、その上にたっぷりとワカメが浮いています。これがなんともやみつきになる味で、私も平塚に行くとつい寄ってしまいます。飲んだ後にもぴったり。「ジンギスカン」は海沿いの湘南エリアなのになぜか多く、系列店だけでも平塚、伊勢原、茅ケ崎に5軒、のれん分け店はなんと7軒。店内は煙モクモクの昔ながらの焼肉店ですが、ねだんが安くて、タレもなんだか癖になる味わい。お酒も進むいい店なのです。湘南のソウルフードと呼ばれるこれらのお店、機会があればぜひお立ち寄りください。

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藤沢市民のソウルフード『味の古久家』のサンマーメン。今年は汁なしサンマーメンも登場。さらに湘南台には今年5月に24時間営業の餃子無人販売所もオープン!

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『老郷(ラオシャン)』のタンメン。途中で卓上のラー油やお酢を入れて味変するのが、地元の人たちの食べ方。

 さて、本特集「湘南さんぽ 藤沢・辻堂・茅ケ崎・平塚・大磯」にはほかにも様々な企画がずらり。タイトルに上がっているJR東海道線5駅を中心とした散歩コースやグルメ・カフェ情報はもちろん、「生きていれば91歳になっていた作家・開高健が生前通っていたスポットを巡る「開高健の散歩道」。パン文化が盛り上がる湘南エリアならではの企画「わざわざ行きたい一軒家ベーカリー」「茅ケ崎はサンドイッチの名店ぞろいなのだ」。食べ物だけじゃなく活字文化にも注目だ!と企画した「本と湘南①②③」。さらにウルトラセブンのあの人にインタビューした「鵠沼でモロボシ・ダンに会いたい!」などなど盛りだくさんにお届けします。

 せっかくの夏。気分だけでも開放的に、本誌で誌面散歩を楽しんでいただけるとうれしいです。そして今月も密を避けつつ、できる範囲で散歩を楽しんでください。

土屋広道(つちやひろみち)
1972年埼玉県生まれ。関西学院大学社会学部卒業後の1996年に株式会社弘済出版社に入社(合併を経て2001年に株式会社交通新聞社)。『鉄道ダイヤ情報』『旅の手帖』編集部を経て、2008年より『散歩の達人』編集部所属。2017年11月号より同誌編集長。

『散歩の達人』最新号は7月21日(水)発売!