『マーカス・チャウンの太陽系』新刊著者インタビュー【後編】制作秘話&見逃せない読みどころ・見どころ

新刊著者インタビュー

更新日:2013/8/9

――日本でのマーケティング、広報宣伝活動も糸川さんが一人で行ったとか。

糸川:そうなんですよ。タッチプレスのスタッフが日本にはいませんから。素晴らしい作品ですから、できるだけ多くの人に手にしていただきたい。しかし、自分はマーケティングの専門家ではないので、どうしたらいいのかわからない。そんな時、AppBankにはタッチプレスの前作の『元素図鑑』のレビュアーがいたことを思いついた。そのレビュアーをtwitterでフォローして、「次は『太陽系』が出ます」と案内をしたところ、すぐにレビューがアップされてダウンロード数が一気に増えました。さらにαブロガーの書評家である小飼弾さんにもtwitterのダイレクトメッセージでプロモーションコードをお送りして読んでいただきました。小飼さんには、僕が翻訳した『超マシン誕生』(トレイシー・キダー、日経BP刊)で書評を書いていただいたことがあったので、そのお礼とともにご案内したんです。小飼さんもすぐにレビューを書いてくださり、そこからまた読者が急増。App Storeのランキングが急上昇して1位になりました。

 

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いじればいじるほど知的好奇心と
宇宙へのロマンを刺激する電子書籍

――糸川さんが翻訳中に発見した、電子書籍ならでは本作の楽しみ方を教えていただけますか。

糸川:紙の書籍にないのが動画です。地球の本文の4ページ目にある「ウェゲナーのジグソーパズル」が好例で、画像をスワイプすると4億年前から現在までの地球の大陸プレートの移動が再現されます。

また、気づきにくい機能としては、各天体をピンチアウトすると比較基準となる物の大きさを示すスケールでしょうか。たとえば惑星イトカワをピンチアウトすると、右上にスペースシャトルの大きさ、天王星では地球の大きさを示す白線が表示されます。これがあると、各天体がどれくらいの大きさかイメージしやすいですよね。

知的好奇心を刺激するのは、左下隅にある「データ」。ここをタップすると「基本情報」と「WolframAlpha」を選べます。「WolframAlpha」は英語表記ではありますが、インターネット上のナレッジベース、リアルタイム計算サイトに接続され、現在の地球との距離、天体の位置などが表示されます。たとえば太陽だと、アクセスした場所での日没や日の出の時間もわかるんです。こういった機能もぜひ楽しんでほしいですね。本作はいじればいじるほど、新たな発見があるんです。

ぜひ読んでいただきたいのは、水星の4ページ目の「惑星の動き」。ニュートンからアインシュタインへの物理学のパラダイムシフトを語った章で、短い文章なのに内容がとても深い。こういう表現はマーカスならではのもの。地球に住むすべての人に向けて書かれているんです。

 


ウェゲナーのジグソーパズル。画面をスワイプすると大陸を動かすことができる


画面右上にスペースシャトルの大きさがスケールとして表示され、天体の大きさをイメージしやすくしてくれる


「WolframAlpha」の画面を開くと、リアルタイムな情報が表示される