深田恭子さんが選んだ1冊は?「私は忘れられてもいい。でも、大切な人たちのことを忘れたくない」

あの人と本の話 and more

公開日:2023/2/13

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年3月号からの転載になります。

深田恭子さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、深田恭子さん。

(取材・文=野本由起 写真=TOWA)

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「私は忘れられてもいいんです。でも、大切な人たちのことを忘れたくなくて……」

 そう話しながら、瞳を潤ませる深田さん。このたびお勧めしてくれたのは、若年性アルツハイマー病により記憶を失っていく女性と、彼女を支える恋人の純愛ストーリー。入り口は、同名のドラマだった。

「役に憑依したかのような戸田恵梨香さんのひたむきなお芝居が素晴らしくて、毎週涙が止まりませんでした。ムロツヨシさん演じる真司も含め、すべてが愛おしい作品です」

 脚本を手掛けた大石静さんとは、旧知の仲。これまで何度も大石作品の主役を務めてきたうえ、プライベートでも親しくしているそう。

「大石先生の脚本は、セリフや言い回しが独特。インパクトがあり、直球で胸に響く言葉が多いんです。ご本人もとっても楽しい方。“恋は素敵なもの”とおっしゃるロマンチストでもあります」

 小説版を読んだことで、作品の理解もさらに一段と深まった。

「ドラマでは、役者さん本人の魅力が加わったうえで人物像が出来上がります。文章で読むとまた印象が違いますし、小説とドラマを比べて楽しむという特別な体験ができました」

 同じ恋愛ものでも、現在配信中のドラマ『A2Z』は少々趣が異なる。深田さんが演じるのは、夫から「恋人がいる」と告げられ、年下男性との恋に走る文芸編集者・夏美役。深田さんいわく「キュンと現実が入り混じったドラマ」だそう。

「夏美は、魅力的なものが好きな女性。興味を持った相手は自分のものにしたいし、それを自分の言葉で伝えたい。私は平和主義者なので、なかなか友達になれないタイプかもしれません(笑)。他の登場人物も、自由に生きる人たちばかり。恋は熱いものなのか、あっけないものなのか、考えさせられるドラマです」

 原作は山田詠美さん。恋や仕事にまつわる文学的なセリフも散りばめられている。

「普段使わない言葉も多く、とても新鮮でした。心に響いたのは、『大切な本はやっぱり紙で読みたいし、手元に置いておきたい』というセリフ。私もデータより製本化された台本のほうが、気持ちが入るんですよね」

 深田さんにとっては、30代最後の作品でもある。

「田中圭さんとのシーンは難しいお芝居も多く、挑戦の連続でした。ぜひ恋のドキドキ感を味わっていただけたらと思います」

メイク:園部タミ子 スタイリスト:大友洸介

ふかだ・きょうこ●1982年、東京都生まれ。96年、第21回 ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを受賞。近年は、ドラマ『ダメな私に恋してください』『下剋上受験』『ハロー張りネズミ』『隣の家族は青く見える』『初めて恋をした日に読む話』などに出演。主演ドラマ『ルパンの娘』は、2021年に映画化。

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