“BlackFrancfranc”で黒の魅力を再発見 カツセマサヒコが誘う、魅惑的なBlackの世界

文芸・カルチャー

PR公開日:2023/11/6

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年12月号からの転載になります。

カツセマサヒコさん

 家具や雑貨を通して、心地よい暮らしを提案するインテリアショップ「Francfranc(フランフラン)」が、“黒”の世界に誘う特別企画を実施。この企画に合わせ、カツセマサヒコさんが短編小説を書き下ろした。黒い家具に囲まれて気づいた、いつもと違う自分。心に潜む変身願望を刺激する『STORY OF B』とは。

(取材・文=野本由起 写真=諸井純二)

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自分のいる空間を好きになると自分のことも好きになれる

「Francfrancに来ると、ファンタジーの世界に入ったように感じるんです。僕にとっては、気持ちが高揚する楽しい場所。パステルカラーの家具から奇抜なアイテムまであるので、ちょっと変わったものを探す時には立ち寄ることが多いです」

 以前から、Francfrancの家具やインテリア雑貨を愛用していたと話すカツセさん。中でも、社会人2年目にしてひとり暮らしを始めた時は、たくさんのアイテムを買いそろえたという。

「初めての自分の城を持つことに浮かれていたんですよね。とにかく色数の多い部屋を作りたくて、黒いソファになぜかショッキングピンクのクッションをふたつ並べて、ラグは黄緑、テーブルは赤(笑)。Francfrancはカラフルなイメージがあったので、目につく限りの強い色のアイテムを手に取りました。どこに何を置いてもいいという圧倒的な自由度に興奮していましたし、Francfrancには浮かれた僕の期待に応えるアイテムがそろっていて。大量のインテリア雑貨を嬉々として持ち帰ったのが、一番の思い出ですね」

 その後も、外出先でふらっと立ち寄ったり生活雑貨を購入したり。Francfrancとカツセさんの蜜月は、今も続いている。

「2010年頃に新宿サザンテラス店に立ち寄った時、店内に流れているハウスミュージックがすごく気に入って。お店の方に聞いたら『これ、売ってますよ』と言われたので、BGMのCDを買って帰ったことも。自宅がFrancfrancになって嬉しかったですね(笑)。長年愛用しているのは、体を洗うネット。昨日も新しく買い替えて、何色を使うか家族でじゃんけんして決めました。身近な生活用品からしっかりした家具まで、そろうのがありがたいんですよね」

 そんなFrancfrancが、ハロウィン特別企画「Black Francfranc」を実施した。期間中は、店内に黒い家具や雑貨を集めたスペースを設置し、ピンクやパステルカラーのフェミニンな印象とはひと味違う、魅惑の黒をアピール。カツセさんは、特別企画に合わせて短編小説を書き下ろし、いつもの自分とは違う“B面の私”、心に秘めた変身願望を描き出した。

「今回あらためてFrancfrancの黒いアイテムを拝見しましたが、ニュアンスが絶妙ですよね。黒のインテリアと聞くと無骨なイメージを思い浮かべますが、Francfrancのアイテムは曲線がやわらかくて、かわいらしさ、優美さが内包されているように感じました」

カツセマサヒコさん

インテリアを替えれば旅先のように大胆になれる

 作中では、黒い家具に囲まれる夢を見て、「もう一度、あの世界に行きたい」「もう一度、あの世界の自分になりたい」と思いを巡らす「私」の密やかな変身願望が描かれる。インテリアを替えれば、いつもと違う自分になれる。空間が人の心に及ぼす影響について、カツセさんはどう考えているのだろう。

「洋服や持ち物より、インテリアを新しくするほうが日常的に受けるポジティブな影響が大きいと思うんです。部屋のレイアウトや家具を思いきり替えれば、旅に出た時のように大胆になれる。自分がいる空間を好きだと思えたら、自分のことも好きになれる。インテリアを替えることは、変身を呼び起こすスイッチになるのではないかと思います」

 しかも、“黒”を取り入れることに意味がある。

「僕の自宅のリビングは、壁が一面だけ真っ黒なんです。それだけで、部屋がぐっと大人っぽい印象になるんですよね。今の時代、気持ちをローにしておくことが大事だと思うので、僕にとっては黒であることが重要です」

 部屋の雰囲気は、住む人の気持ちを左右する。それだけではなく、その部屋にふさわしい自分であろうと、能動的に変化を起こそうという気にもなる。今回の書き下ろし短編は、こうした心理にまで一歩踏み込んだ小説になっている。

「『この部屋に住むのは、きっとこういう人だろう』と、自分を演じる気持ちってあると思うんです。もしかしたら変身って、そういうことなのかもしれません。僕は2年前に引っ越した時、初めてちゃんと仕事場を作りました。本だらけの雑多な部屋ですが、扉ひとつ挟むだけで違う世界が広がっていて。そこに入ると仕事をするぞ、原稿を書くぞという気持ちになるんですよね。今回の小説では黒い寝室を描きましたが、寝室って眠るだけではなく考え事をしたり、ちょっと殻に閉じこもったり、疲れきって倒れ込んだりする部屋でもあります。つまり、ネガティブからポジティブに切り替えるための場所。黒一色だと自分に集中できそうですし、気に入った家具に囲まれれば、空間に包み込まれるような心地よさが生まれるんじゃないかと思いました」

 家具一式を替えるのは難しくても、インテリアの一部に黒を取り入れるだけで気持ちが変わる。どんなものが取り入れやすいか、カツセさんにアドバイスを求めると……?

「一目惚れしたものを置くのがいいですよね。衝動買いした雑貨って、気に入って意外と長く飾ることが多い気がして。専門家ではないので個人的な感覚でしかありませんが、白や淡い色の空間に黒を取り入れるなら、ひとつではなく複数置いたほうが空間になじむ気がします」

 今回、Francfrancにまつわる小説を書いたことで、カツセさん自身もあらためてブランドの魅力を再確認できたと話す。

「執筆にあたってFrancfrancについて調べていたら、ちょうど誕生30周年を迎えたばかりだと知ったんです。新タグライン“かわいくなれ、世界。”に込められた“かわいいは、人生を豊かにする心の高鳴りをもたらすもの”というメッセージにも、深く共感しました。Francfrancに足を踏み入れた時、買い物をして帰る時、確かに心の高鳴りがある。オンラインショッピングもいいですけど、リアルの店舗は圧倒的に情報量が多いし、偶然の出会いがあってワクワクするんですよね。だからこそ30年も続いてきたのだと思いますし、今回の小説でもそういったブランドの軸を大切にしたつもりです。年齢を重ねるといつもどおりの自分でいるほうが楽ですが、いつもと違う自分もいることに気づくと少し勇気が湧いてくる。殻を破る行動を助けられたらと思って書いたので、最後まで読んでいただけたらうれしいです」

かつせ・まさひこ●1986年、東京都生まれ。大学卒業後、2009年より一般企業に勤務。趣味で書いていたブログをきっかけに編集プロダクションに転職し、17年4月に独立。20年、『明け方の若者たち』で小説家デビュー。21年、同作が映画化。他の著書に『夜行秘密』など。

『STORY OF B』書影

『STORY OF B』とは
今の会社に勤めて5年、平穏な日々を送る「私」は、ある夜夢を見る。それは黒い家具に囲まれた部屋で、心躍るひと時を過ごす夢。翌日、後輩のマンションを訪れた「私」は、夢とそっくりの漆黒の部屋に魅了され……。黒に誘われ、いつもと違う“B面の私”に気づく物語。

『STORY OF B』の全文公開中
黒を基調としたアイテムを集めたハロウィン特別企画「Black Francfranc」に合わせ、カツセマサヒコさんが黒い家具が登場する短編小説『STORY OF B』を執筆。Francfranc公式SNSと店頭で発表された。現在は、Francfranc公式SNSと特設サイトにて公開中。

“Black”な家具たちが登場するショートストーリー 『STORY OF B』を読む

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