今は“ワーママ3.0”の時代?仕事と育児への向き合い方をつづった漫画に共感の声続々【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2024/3/4

働く私と病気の子どもたち

「保育園の洗礼」という言葉をご存知だろうか?保育園に入園した子どもが、次から次へと風邪などの感染症にかかり、早退や休みを繰り返すことだ。月の半分も保育園に通えなかった…という話も珍しくない。保育園の洗礼でなくとも、集団保育の場にいる子どもは病気になりやすいものだ。保育園を早退・お休みしなければならなくなった際、問題になるのは誰が病気の子どもの面倒を見るのか、そして保育を担った人が仕事を休んだ分、どうするのかということだろう。急に仕事を早退しなければならなかった、月の半分休んで有給がすべてなくなってしまった…仕事と育児のバランスに悩む家庭は多い。SNSで育児漫画を発表しているまぼさんもその一人。まぼさんの仕事に対しての向き合い方や、2児の母となって子供たちが病気になったとき、仕事とどう折り合いをつけているのかをまとめた連載『働く私と病気の子どもたち』は大きな反響を呼んだ。まぼさんに、作品に込めた思いをインタビューした。

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育児のつらさや苦労を成仏させるために漫画を描き始めた

「そもそも、私が育児漫画を描くようになったのは育児に対しての自分の苦労を成仏させたいという思いからです」と語るまぼさん。

「なので、漫画を描くのはまず、自分のためという意識です。子どもが病気になると、仕事が滞ってしまって私も余裕がなくなってしまうということがありました。うちはいわゆる共働き家庭ですが、子ども達が病気になったとき、その対応をほとんど私だけがしているという現実がありました。イレギュラーなことに対応し続ける私に対し、夫は普段通りに働いているので、その落差にどうしてもイラッときてしまうものがあって、その苦労を漫画にぶつけたような感じです」

働く私と病気の子どもたち

 投稿した漫画には多いときは100を超えるコメントが寄せられている。特に印象的だったものはあったのだろうか?

「そうですね、非常に多くのコメントをいただきました。私としてはあくまでも自分の家庭の話を描いていましたが、『男性はこれだから』みたいな男女の分断を煽るようなコメントがきてしまって、私の漫画がそういった火種になってしまったことはちょっと反省しています。ただ、お父さんもお母さんも働いているのに、何かあったときにお母さんが一手に対応を引き受けている家庭が多いんだというのは実感しました。その一方で、男性からコメントをいただくことがあって、『男は男で大変なんだ』という話が印象的でしたね。今って男性でも家事・育児を妻とイーブンでやっていくのが当たり前という風潮にありますよね。ただ、会社勤めをしていると男性が家事育児に向き合うためのサポートがないこともあります。家事育児はやらなきゃいけないけど、やらなかったころと同等の成果を出して当たり前というのは辛いんですよ、という話でした。私は私の視点で描いていたんですが、男性には男性の辛さがあるんだなと感じましたね」

 確かに、子どもの体調不良による休みが発生した際に、母親のほうが職場に対して早退や休みを申請しやすいという雰囲気はあるかもしれない。

「きっと今は過渡期なんでしょうね。働くお母さんも大変だけど、働くお父さんも大変。とはいえ、これでお父さんが『育児しながら働くなんて無理』『子どもが病気で早退なんてできない』って折れてしまうと、次の世代も同じことになってしまうので、辛い役割を負わせて申し訳ないけど、働くお父さん頑張ってってエールを送りたいです」

「会社員と育児の相性が悪すぎる」会社員から個人事業主へ

 作中で長男・よいたん、長女・しおさんの2児の母になることで、仕事への向き合い方も変化していったことを描いていたまぼさん。現在は仕事に対してどのように向き合っているのかを聞いたところ、「実は会社を辞めて個人事業主になりました」との返事が。

「身も蓋もない言い方ですが、会社員と育児は本当に相性が悪いな、と感じています。もちろんできているご家庭も多いと思うのですが、我が家に関しては帰宅してからの時間が子どものお世話だけで終わってしまって、子どもとの十分なコミュニケーションを取れない生活が続いてしまっていました。SNSでの育児漫画をきっかけに、イラストの仕事をいただけるようになったのでそちらと、もともと会社員としてやっていたインテリア関連の仕事を個人で受けるようになりました」

 会社員から個人事業主へ。2児の母になったことで会社員でいることに難しさを感じるシーンが多くなったがゆえの決断だったそう。

働く私と病気の子どもたち

「2021年にしおさんを出産して、2022年4月に会社に復帰したんですが、現在の働き方のままでいるのは無理だというのを6月くらいには感じていたんです。子どもたちはとっても仲がいいので、いつもくっつきあっています。なので、家庭内感染を食い止めることができなくって。子どもが1人だったら子どもが昼寝をしている隙にどうにかメールだけでも返しちゃおうってなるんですが、2人だとね…何もできない(苦笑)。それで会社と協議をしたんですが、人手不足ということもあってもう少しいてほしいと話があり、2023年5月にようやく独立できました」

 個人事業主になり、大変さはありつつもスケジュールの自由度が高くなったことで、育児にもいい影響が出ている。

「楽ではないですが、イレギュラーな事態に臨機応変に対応できるようになりましたね。子ども達とのコミュニケーションも深くなっていって、私が幼い頃に自分の母にしてきてもらったことをようやく自分の子ども達に対してできるようになったな、と感じています」

 夫・びぼさんは、まぼさんの独立についてはどのように反応しているのだろうか?

「『助かる』って言われたんですよね。あなたを助けるためにフリーランスになるんじゃない、フリーランスになる=子どもたちの対応を私一人でやるということではない、子育てに対しての比重は変わらないからね、という話はしました。とはいえ、夫は自分の仕事を愛しているし、仕事はすればするほど成果につながっていきますから応援したいという気持ちもあります。とはいえ、余裕がなくなるとなかなか美しい考えでいられなくなってしまうというのはありますね」とまぼさん。

 普段、びぼさんは帰りが遅いため、保育園にお迎え以降の子ども達の世話はまぼさんが一手に引き受けるいわゆる“ワンオペ”状態。ただし、びぼさんが週1回の在宅ワークのタイミングで、子ども達の世話はびぼさんに担当してもらい、まぼさんの“おひとりさま時間”を持つようにしているという。

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