テレ東を“円満退社”できた佐久間宣行が、鈴木おさむ『仕事の辞め方』を読んで思うこと【インタビュー】

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公開日:2024/3/18

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年4月号からの転載になります。

佐久間宣行さん

 発売中の『ダ・ヴィンチ』2024年4月号では「鈴木おさむと拓く、新しい道」と題した特集を掲載している。その特集のなかからさん佐久間宣行のインタビューを公開する。

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成長分野で代えの利かない存在になる

「20代、30代の人たちにとって非常に影響ある本になるんじゃないでしょうか」と『仕事の辞め方』について佐久間さんは言う。45歳でテレビ東京を退社した佐久間さん。第6章「30代後半から種まきを」には、自身の経験と共通するものがあった。

「人生のリスクヘッジを考えると、テレビは自分を一生食わせてくれないかもしれない。ならば会社を辞めても大丈夫な人間になったほうがいい。そう30代で思ったんですね」

 10年後にテレビ業界で起こることは、音楽・雑誌業界を見ればつねに予測できる。当時、CDや雑誌の売り上げは急激な減少傾向にあった。佐久間さんはそこから、地上波のテレビ番組にスポンサーがつかなくなることは明白、と感じていたのだ。

「それで、将来的にテレビが伸びそうな、配信分野に強くなろうと。放送外収入が獲得できるブランド力の強い番組を作ろうと思いました。自分のやりたいこともそちらでしたし」

 佐久間さんは、テレビ東京時代に立ち上げた『ゴッドタン』『あちこちオードリー』などの人気バラエティを、退社後も継続して担当している。『仕事の辞め方』には、辞めてから上手くいく人は円満退社している、との記述があるが、佐久間さんはまさに“円満”の見本ではないか?

「二律背反ではあるんですが、僕でなければダメな仕事を幾つか会社に残したから、辞められたんだと思います。メイン事業、例えばゴールデンの番組は代わりがいるんです。でも僕は、配信分野で代えの利かない人間になっていた。感情論ではなくて、会社に対して“円満”であるための交渉のカードが僕にあった。ノウハウを持っている人が少ない成長分野で、余人をもって代えがたい存在であることが大切なんだと思います」

 鈴木おさむさんは「50代は費用対効果が悪い」と書いている。佐久間さんは、自身の今後をどう捉えているのか。

「50代の自分は、めちゃめちゃ仕事がある状態とは思っていません。将来を考えるときに重要なのは、自分がどの段階にあるか冷静に見極めることです。おさむさんはトップ・オブ・トップのルールメーカーです。SMAPと一緒にテレビのルールを作り替えた。だから今また、自分でルールメイクできる場所に移ろうとしている。僕はルールメーカーではありません。人のルールの中で戦ってきた。今の僕は過渡期にあって、このルールのままではちょっとしんどい。だから違うルール、自分の知見を活かせる場所を探そうかなと思っているところです」

“知見を活かせる場所”とは?

「やりたいことは幾つかあります。日本のお笑いはコンテクストが複雑で海外でウケにくい。人間関係やカルチャーへの造詣をフリにしていますから。でも、フリとオチや緊張と緩和といった仕組みを取り出せば、世界市場に乗り出せると思います。それで成功しているのが、松本人志さんプレゼンツ『ドキュメンタル』です。松本さんも天才ルールメーカーですね。松本さんのフォーマットが輸出されて海外版が作られ、メキシコやドイツですごく人気がある。僕もお笑いの分野で培った知見をもとに、世界に出て行けるものを模索したいと思っています」

取材・構成・文=松井美緒

さくま・のぶゆき●1975年、福島県生まれ。2021年、テレビ東京を退社しフリーランスとして活躍。担当番組に『「LIGHTHOUSE」〜悩める2人、6ヶ月の対話〜』(Netflix)、「インシデンツ」シリーズ(DMM TV)など。

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