『夜桜四重奏』初心者に送る鑑賞ガイド!【俺の覇権アニメ】

アニメ

公開日:2013/12/6

 群雄割拠の秋クール・テレビアニメも、いよいよクライマックスに差し掛かろうとしている。今回はその中から一本、ヤスダスズヒトの人気コミックを原作とする『夜桜四重奏 ~ハナノウタ~』を取り上げ、今シリーズだけでは分かりにくい作品の成り立ちについて解説しよう!


【はじめに】
 ライトノベル界の大ヒット作『デュラララ!!』のイラストを手がけ、一躍ブレイクしたヤスダスズヒト。その画風はシャープで清潔感がありつつ、とにかく女子の可愛さ(特におっぱい~ちっぱいまでバストの柔らか描写、ぷにぷに加減)は他の追随を許さない。
 そんな人気絵師ヤスダスズヒト初のオリジナル長編漫画が『夜桜四重奏』だ。人間と妖怪が共存する町を舞台に、ちょっと不思議な日常コメディと緊迫感溢れるバトルを織り交ぜた本作。セーラー服からナースにシスター、スク水にケモノ耳と、出し惜しみの無い女性キャラに、シスコン眼鏡男子からシブめのおじさん、ショタ神様まで取り揃えた男性キャラと、隙のない布陣は男女幅広い層から支持を得ている鉄板ぶりだ。

【ここで簡単な設定&ストーリーのおさらい!】
 舞台は七本の巨大な桜の木に囲まれた、桜新町。ここは世界で唯一、人間と妖怪が暮らす町。

 妖怪とは、本来ここ人間界とは次元の違う世界に住んでいるはずが、何らかの原因でこの世に現れてしまった者たち。そんな妖怪を、向こうの次元に送る能力が、桜新町・比泉家の頭首に代々伝わる能力「調律(チューニング)」。その精度を上げるために立てられたのが、町をぐるっと囲む七本の桜の巨木「七郷」である。
 かつて比泉宗家(ひいずみそうけ)は、二つの世界を結ぶ回路を開くべく、分家の七人を調律し向こうの世界に送った(とされる)。その後、こちらへと送られて来たのが七郷(ななごう)である。桜でありながら花を付けぬこの巨木は、二つの世界にまたがって存在しており、これをガイドとする事によって、妖怪を安定して向こうに送ることが出来るようになった。
 これにより、各地で迫害を受けていた妖怪たちは本来あるべき世界に戻るため、桜新町を目指した。中には、町の暮らしに慣れ定住する者も現れ、いつしかにぎわいを増したこの町は、人間と妖怪が共存する世界で唯一の町となった。

 そんな町で、次々と起こる怪事件。それに立ち向かう4人の若者たち。龍の力を持つ町長のヒメ。純粋な人間ながら比泉の若き頭首で「調律」のお役目を担う、秋名(あきな)。サトリの能力を持つアオ。言霊使いで「半妖」の五十音ことは。そのほか個性豊かな町の住民が、平和を守るために活躍する物語が『夜桜四重奏』だ。
 頻発する事件の影には、比泉宗家そしてこの世界に恨みを持つ男・比泉円神(えんじん)の影が。彼はアオの兄・ギンのカラダを奪い、この世界に降臨。「七郷」の開花を早め、二つの世界の融合を企んでいる。さらに円神の元には、妖怪退治のスペシャリストである「妖怪ハンター」たちが集結。残された時間はあとわずか。桜新町、そしてこの世界の運命は!? (と、いいつつお気楽な日常も!)


【二度目のアニメ化】
 ご存知の方も多いかと思うが『夜桜四重奏』がアニメ化されるのは、今回が初めてではない。08年には、現在『革命機ヴァルヴレイヴ』を手がける松尾衡監督の手によって『夜桜四重奏 ~ヨザクラカルテット~』として、1クール12話がオンエア。松尾監督お得意のプレスコ(声優のアフレコを先行し、それに合わせて作画する手法)が採られたのも話題になった。
 ちなみに、この時集められた声優さんたちが、そのまま今回の『夜桜四重奏 ~ハナノウタ~』に同じ役でシフトしているわけだが、同時に松尾監督の『ヴァルヴレイヴ』の方にも参加している方も多く、キャスト陣に注目してみるのも面白いぞ!

【スタッフを一新しての再スタート】
 そして5年振りのテレビアニメ化となる今回の『夜桜四重奏 ~ハナノウタ~』だが、いわゆる続編「第2期」というわけではなくイチからの仕切り直しとなったレアケース。前回の際は、複雑なストーリーを1クールで納めるためという事もあり、序盤からラスボス円神と元老院、人間と妖怪の対立構造を全面に押し出し、シリアスめなテイストで描かれるなど、アニメ版独自の解釈や設定の整理(シリーズ構成/脚本は『ローゼンメイデン』シリーズや『STEINS;GATE』の花田十輝)が行われていたが、今回はオーソドックスに原作に準拠した作りだ。

【原作者が自ら選んだメインスタッフ】
 今回の、再アニメ化にあたり、先行するOAD版制作の時点で、プロデューサーから原作者のヤスダ氏にメインスタッフの人選に関する相談が。この時点ではほとんど白紙だったそうで、ヤスダ氏がダメ元で出したリクエストがことごとく実現! 前作とはまたカラーの変わった強力な布陣が完成したのである。
 キャラデザイン&総作画監督も兼任する、りょーちも監督は女の子のかわいさもさることながら、アクションには定評があり、総作監を務めた『鉄腕バーディー DECODE』(2008~2009)の、超絶スピード&ディフォルメで動き回る肉弾戦はすさまじく、今年公開されたザック・スタイナー監督の新作『マン・オブ・スティール』における、スーパーマンVSゾッド将軍のバトルシーンにも多大な影響を与えたほどだ。絵柄的には、旧シリーズも今回も純粋な「ヤスダ絵」とは言えないが、どちらも味があるのだ!

【テレビだけだと分からない?】
 と、言っているうちに、地方によっては9話が既にオンエアされているところも。ここで重大な注意! 9話から参加の新キャラ「狂巻ざくろ」が初登場するエピソード「ホシノウミ」はテレビ版新シリーズに先駆けてリリースされたOAD『夜桜四重奏 ~ホシノウミ~』(2010)に、既に収録済みのため、テレビ版では省略されている…のだ! 新テレビ版から見始めた方の中には、9話のオープニングでさらりと処理されたエピソードを観て「なんじゃそりゃ~~~~???」と思われる方も多いかもしれないが、この変則リリースを追いかけるのもファンの務め……である!
 ちなみにストーリー後半の敵となる妖怪ハンター勢は、敵対時と改心時の豹変振りがどいつもこいつも最高(中でもざくろの可愛さときたら格別!)なので、これはぜひともデレる前の極悪エピソードをOADで観ておきたいところ。なおかつ、このOADはテレビシリーズ以上に、りょーちも監督率いる作画陣(原画・山下清悟ほか)がスパークしており、戦闘シーンなど先に挙げた『バーディ』に匹敵するほどだ!


【第2弾OADも急いでゲットせよ!】
 『夜桜四重奏 ~ホシノウミ~』のOADは原作単行本の9~11巻の限定版に収録された後、現行商品で手に入るのはBlu-ray版のみ。引き続きOAD第2弾『夜桜四重奏 〜ツキニナク〜』の1話が、原作単行本14巻の限定版に収録中。こちらはまだアマゾンに在庫あり。第1弾がバトル面での最高傑作だったのに対し、第2弾はなんと温泉回から! 女性陣が脱いではだけて乱れまくり。これはマジで急げ!

【おしまいに】
 さて、今回は新テレビ版から入門した方へ、ちょっとややこしい『夜桜』周辺事情に触れつつ(むしろ、そっちがメイン?)その魅力について語ってきたが、残すところテレビシリーズもあと数話。原作も、連載が進むにつれて面白さのレベルがさらにアップするというか、確変モードに入るので、このままで終わってしまうのは、ひじょ~に惜しい。同級生トリオや、妖怪ハンター勢の活躍もまだまだ観たい。無理して尺を詰めずに、のんびり日常パートも描いて欲しい。
 というわけで、ぜひとも第2期、第3期を期待する次第。最終決戦に向けて激化するバトルに期待しつつ、円盤買って応援しよう!

(文=柳井洋二)