50代のコスプレイヤーも 観光庁が聖地巡礼で狙う世界のオタク

アニメ部

2014/4/16

Visit Japan
日本政府が、海外へ日本観光をアピールする「Visit Japan」キャンペーン。観光庁による、このコンテンツに近年異変が起きているのをご存知だろうか?

Tokyo Otaku Modeとのコラボページにて、なんと、秋葉原案内や「Seichi Junrei(聖地巡礼)」を紹介しているのだ! お堅い政府が、聖地巡礼?

 
Tokyo Otaku Modeの「Visit Japan」特設ページ。中段の青色のバーには「Seichi Junrei」の文字がある

なにゆえ、このようなページを制作したのか? さっそく、観光庁へ突撃してみることに!

ご対応いただいたのは、観光庁で海外に日本観光の良さをアピールしている柳孝嶺さん。『SLAM DUNK』や『ドラゴンボール』好きだという。先の聖地巡礼ページを発注したご担当者である。


▲観光庁 日本ブランド発信・外客誘致担当参事官付係長という、長い肩書きをお持ちの柳孝嶺さん。

さっそくだが、一体なぜ聖地巡礼を国外へアピールしているのだろうか?

 「海外で日本のアニメ好きの人は、潜在的に日本に来て頂ける層ではないかという仮定のもと、昨年より海外へ聖地巡礼や秋葉原観光をアピールしています」(柳さん、以下同)

確かに日本の作品に触れている人は、日本に親近感を抱いているかもしれない。しかも、日本のアニメやマンガ好きのヲタは、過去の取材からも想像以上に多いことが分かっている。それゆえ、お気に入りの作品の舞台を訪れてみたいという気持ちになるのだろう。
では、さぞかし世界中から「ヲタベラー(ヲタ旅行者)」も増えているに違いない!

 「それは……、実は把握しておりません。
訪日観光客へ、消費動向調査という、なにを目的に日本へ来たのか等を調べたデータがあります。その調査で、上位はショッピング、文化・自然体験、日本食と出ています。しかし、調査項目には『聖地巡礼』などが含まれていないのです。おそらく、聖地巡礼目的の観光客がいても、数は少ないでしょう」

なんということだ! 昨年、ついに年間1,000万人以上も訪日したにもかかわらず、ヲタベラーの数は把握されていないと。
では、海外に聖地巡礼をアピールしても意味がないのでは?

 「いえいえ、訪日客のうち、アニメだけが目的の人は、ほとんどいないでしょう。しかし、これは個人的意見ですが、そのなかには、アニメ関連の場所(秋葉原等)を訪れたい人は多いと思います。調査をしていないだけで、ライトなアニメファン層は多く来日していると思います」

なぜなら、日本を訪れる人の6割が、韓国・台湾・中国と東アジアの方々なのだ。さらに続く2割が東南アジアの方々。つまり、日本アニメに親しんでいる人が多いのである。
買い物ついでに、実は聖地を訪れている可能性もある訳だ。

 

▲日本政府観光局の「Visit Japan」トップ画面。確かに伝統芸能推しのつくりである


「それに、このキャンペーンは、将来的に訪日してくれる、日本ファンを育てていくという目的もあります。日本に訪れるのは、比較的、裕福な方が多いのです。即効性のあるアピールではなく、将来への投資です。本当は、いますぐにでも日本に来て欲しいのですけど……」

しかし、世界のヲタたちが日本に来てくれることに、なにかメリットはあるのだろうか。

「外国人客が日本に来て、消費をすることは、外貨を獲得し、日本経済にいい影響を与えます。特に、お金を使うという意味では、いわゆるヲタクの方々に注目しています。ディープなアニメファンの、人数は多くありません。しかし、彼らが趣味に費やす金額は大きいのです。また、繰り返し訪日するため、日本にとって大切な層ではないかと考えています」

なんと、ヲタベラーは、日本にとっても大切な存在だという。では、即効性がなくとも、積極的に海外のヲタへアピールを行っているのだ!

 「フランスのジャパンエキスポ、ニューヨークのコミコン、中国の声優イベントなど。海外のヲタク向けイベントには、観光庁がブースを出展しています。しかし、観光庁全体の予算から見ると、アニメなどを含むJ-POPファン向けのPR予算は……、多く見積もっても数%くらいでしょうか」

歴史的・伝統的資産のPRに比べて、アニメの存在感のなさ…。もっと予算を増やせないのだろうか。

 「個人的には、昨年ジャパンエキスポを視察した経験から、こんなにも多くの日本アニメファンがいるのかと驚かされました。40〜50代のコスプレーヤーも多く、親子でコスプレしている方も見受けられました。しかし、実態調査がなされていないため、客観的説得材料がありません。特に年配者への理解は、難しいですね」

だが、近年は内閣府ぐるみでクールジャパンを推している。もっと予算は増やせないのか?

 「クールジャパン戦略とは、日本のいいものを積極的に知ってもらおうという働きかけです。海外で日本の文化や産業の認知を高め、日本の産業やビジネスが広がることを期待しています。アニメなどのサブカルチャーだけを指すのではないのです」

 

▲    日本政府観光局「Visit Japan」のHPには、アキバ探索を紹介する動画も。メイド喫茶の紹介もあり

クールジャパンというと、真っ先にアニメを思い浮かべがちだが、それだけではない。残念ながら、観光的な視点で見ると、アニメ関連の誘致力は、イマイチというところか……。

 「しかし我々観光庁から見ると、聖地巡礼により、各地を盛り上げてくれることは、ありがたいです。日本に来ていただく選択肢を増やすに越したことはありませんから。それに映画の舞台が観光地になることはありますが、アニメの舞台が観光地になることは、世界中どこにもありません。日本ならではの観光体験ですよね」

聖地として地域を盛り上げることは歓迎とのことだ。と、ここで柳さんからお願いが。

 「おもてなしの国、日本として、聖地のエリアの方には、外国人客の受け入れ体制を充実させていただきたいですね。これから東京オリンピック開催に向けて、多くの訪日客が増えると見込まれます。道に迷っている方がいたら、身振り手振りでもいいので、対応していただけるとありがたいです」

聖地を示す標識など、ハード面での充実には、自治体の協力が不可欠である。だが、聖地巡礼の体験をより印象深くするのは、ソフト面である。
同じ作品を愛するもの同士、また礼節を重んじ、お・も・て・な・しの心を持つ日本国民として、世界に誇れる対応を今まで以上に心がけたい。

まだまだパイの小さな「世界からのヲタベラー誘致」だが、みなさんの協力次第ではこれから大きく育てることもできる。聖地巡礼の海外認知度が高まれば、あなたの街の聖地も世界的観光地になりうるかもしれないのだ!

今回、国ぐるみで聖地巡礼を推している事実が判明した訳だが、聖地巡礼に注目しているのは、政府だけではないのだ。次回、学問目線で聖地巡礼を探る。

<後編へ続く>


<取材協力>
日本政府観光局「Visit Japan」HP

Tokyo Otaku Mode 特設ページ


(協力=観光庁、Tokyo Otaku Mode、取材・文=武藤徉子)