明るい殺意は実体験から!? アニメ『暗殺教室』岸誠二監督語る【後編】
更新日:2015/6/26
原作との運命的な出会い!?
「僕と『暗殺教室』の出会いは、1巻が発売された直後です。脚本家の上江洲誠から、突然送られてきたんです。“すごくおもしろいマンガがあるから読んで欲しい”と。彼がここまで推すことは珍しいので、すぐに読みました。まず超生物とはいえ、先生を殺すという設定に驚き、そのブラックな作品パンチ力に引き込まれました。そのときは、まったく仕事に関係なく一読者として楽しんでいました。それからしばらく、今から約1年半前、フジテレビさんからアニメ化の話をいただきました。ものすごい偶然。もはや運命です。もちろん、この作品を勧めてくれた上江洲を脚本に推薦しましたよ」
『暗殺教室』とは、とある中学校が舞台。ある日、3年E組に赴任した先生は、月を爆破し、1年後には地球を滅亡させるという恐ろしい力を持った超生物。そこで、E組には、卒業までに超生物こと“殺せんせー”を暗殺するよう日本政府よりミッションを与えられた…。
非日常と日常が絶妙なバランスで配合された、青春暗殺劇だ。
▲滋賀県出身の岸誠二監督。関西人らしく笑いの絶えないインタビューだった
原作をほぼ忠実にアニメ化しているように見受けられるこの作品。監督はどのように向き合ったのか。
「自分は、制作に取り掛かる際、作品をできうる限り理解できるように、作品設計をバラバラに分解して見直します。すると原作の松井優征先生の表現なさいたいことが明確にあったため、まずはその世界観を崩すことなく素直に表現しました。さらに映像としてのおもしろみを、原作の持ち味を邪魔しない様に盛り込みました。また映像作品としては、音の表現威力も設計のうちに入っています」
▲「今後の展開を楽しみにしていてくださいねぇ、ヌルフフフフ…」と、岸監督は殺せんせーのように語ってくれた
時間の切り方こそ監督の個性
原作のイメージに忠実に作られているこの作品だが、実に監督らしい一面もある。
「作品ごとに描写の仕方は、切り替えています。けれど、鋭い人には、私の作品だと一発でわかるそうです。映像は時間芸術です。私の編集には独特の時間感覚があるそうでして、どのようなリズムで芝居し、シーンをどんな時間で組み立てるかに、ひとつの特徴があるようです。例えば、「アルペジオ」シリーズでは、ゆったりとしたカット尺にしています。大きな戦艦、潜水艦を表現するためカット尺を大きく取るのです。映像技術の基本でもありますが」
映像がどんなタイミングで切り替わっているのか。作品に夢中になっているとカット割りに注意がいかない。だがカットの割り方も作品のカラーを反映する。意図的に変化をつけているつもりでも、個性がにじみ出てくるのだという。
もっとも分かりやすいのが、音楽に合わせたカット割りだ。ビートに合わせて切り替えるのか。もしくは、あえて外してみるのか。監督の作品を見比べてみるとその“色”が見えてくるだろう。
▲作品のトーンを決めるのは、時間の切り方。ひとつひとつのシーンはどのように切り替わるのか? 時間軸の使い方にも注目してみよう