ネコに愛される写真家・岩合光昭氏が撮影した、世界中のネコと風景

新刊著者インタビュー

更新日:2014/2/24

ネコの二面性を撮影していきたい

――これからはどんなテーマでネコ写真を撮影しようとお考えですか?

【岩合】ネコの二面性ですね。これをどう写真にするかに挑戦していかねばならないところです。さきほどのハトを狩ろうとするネコの写真もそうですが、真剣なようで真剣じゃないし、緊張感があるようでいて、緊張感がない(笑)。本当の野生のネコ、たとえばライオンもそうですが、狩りは100%条件が揃っていないと成功しません。ノラちゃんはものすごい緊張感で野鳥を狙います。そういうときに出くわすと「邪魔しちゃいけないな」って思います。

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――だから屋外にいるネコの写真が多いんですね。全世界を旅して、魅力的なネコがいる街はどこでしょうか?

【岩合】今、しばしば報道されるイスラム圏ですがネコは魅力的ですよ。イスラム圏のヒトは家畜とのつき合いが長くて、深い。ネコとのつき合い方も上手なんです。ネコとヒト、両方にとって幸せな街だと感じることが多いですね。お互いにとって良い距離感を知っているんです。ところでイタリアの男性もネコの扱いが上手いですよ(笑)。ある港街で撮影していると、男性がやってきてネコの背中をぽんと叩くというか、なでていきました。そこに非常に色気を感じました。ネコとのつき合い方でそこに住むヒトと街が見えてきます。

――そういう意味ではネコは人の合わせ鏡でもあるんですね。だからネコの写真ファンが多いのでしょうか?

【岩合】おそらくそうでしょうね。ネコは色気や気配といった「気」をまとっていて、僕らのところに持って来てくれます。そして、自然なようでいて、ネコ自身がそのことをわかっている二面性があるんですよ。そういうeveryday cat、普通のネコをこれからも撮影していきたいと思っています。
以前、ご主人の投げる雪球に一心不乱に遊ぶ、ミーちゃんというネコに出会いました。その日は陽が落ちて撮影には暗かったので、翌日出かけたんです。ところが、ご主人がいないと僕がいくら雪球を投げても「ふん!」ってなもんです(苦笑)。ミーちゃんは遊ぶのが好きなのではなく、自分が遊ぶ様子を見て喜ぶご主人の顔が見たくてやっている。それをわかってやっているところがある。
娘のネコ、にゃんきっちゃんもそうです。「お父さんのモデルになってね。役に立たないとダメよ」と娘が言い聞かせるものだから、ちゃんとモデルをやってくれる。けっして差別せず、こちらの気持ちに応えてくれる。こういう普通のネコのしたたかさ、二面性をもっと撮り続けて、読者のみなさんに可愛がってもらえる写真集をこれからも出版していきます。

 

岩合さんのお嬢さんの愛猫・にゃんきっちゃん。「彼がうちに来ると、胸をどきどきさせてシャッターを切っています」。ネコへの愛情が写真に表れる

 

電子『ちょっとネコぼけ』

岩合光昭/小学館/App Store/iPad/800円

「ネコを撮影したら世界一!」とレビュアーが心底思っている岩合光昭さんのiPadアプリ版ネコ写真集。30 年以上かけて撮影した膨大な写真から88点を厳選し、半数以上に岩合さん自身による音声解説を収録。世界的動物写真家の卓越した観察眼ともに、ネコに向けられるやさしいまなざしを体感できる写真集。本書の魅力はiPadの高精細なディスプレイでの再現される写真の素晴らしさ。ネコの毛のもふもふ感や体温、さらに鼻息まで感じられるリアルさ。ネコの後ろに広がる風景も愛しい。