「だから私はハロプロが好き」小説家・柚木麻子【寄稿】

エンタメ

2020/2/11

ハロプロ

 つんく♂曲に限らずハロプロは都会の中の少女の孤独、または半径100メートルほどの馴染みの場所の幸福について描き続けてきた。一人で歩く時、ふとハロプロ楽曲を小さく口ずさんでしまうのは、アスファルトやテナントビル、横断歩道や駅など、日本の町並みとの親和性が高い歌詞ばかりだからだろう。家の中で聴くのもいいが、スーパーマーケットやチェーン店で、不意にハロプロ曲を耳にする時がファンの醍醐味だ。歌詞を一粒舌に乗せれば、そこから空間がどんどん広がっていって、目の前の風景とピタッとつながるのがわかる。そんな時、自分はこの場所に存在しているのだ、という強い実感が湧いてくる。

 ハロプロ曲のヒロインたちは自分が住む町に馴染もうと、言動やファッションに意識を巡らせ、仲間や居場所を作ろうと必死になる。それが恋愛という形を取ることもあるが、彼女たちの一番の目標はその場所で生活していくということだ。地方出身者が多いハロプロメンバーの生き様にも重なる。そのがむしゃらさに自分を重ね、切なくなったり、勇気づけられることもあるが、私が愛してやまないのはその先だ。

 町から撥ね付けられ、ヒロインが決定的に居場所を失ったその先である。故郷に帰ろうと、止まろうと、別の場所に向かおうと、必ず彼女は町を許す。それは自分が過ごしてきた時間や空間を、恥ずべきものにはしたくない、彼女の誇りからくるものだ。先に進みたいからこそ、彼女は町と和解する。ふわふわと空間を漂うような他人任せの歌詞は一つもない。私がこんなにハロプロが好きなのは、地に足をつけて生活していく愚直さとそれを恥じない誇りがあるところだ。パフォーマンスにも、メンバーの言動にも、そしてファンからさえそれを感じている。誇りを胸に、ハロプロのヒロインは、ハロプロを愛する人々は、今日もどこかの町を急ぎ足で駆け抜けて、自分の暮らしを回していくのだ。

柚木麻子さん

柚木麻子
ゆずき・あさこ●1981年東京都生まれ。2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞、同作を含む『終点のあの子』でデビュー。『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞受賞。ほか「ランチのアッコちゃん」シリーズ、『BUTTER』『デートクレンジング』『マジカルグランマ』など著書多数。(撮影=齊藤晴香)

 

柚木さんが好きな曲

『オシャレ!』松浦亜弥
東京在住と思しき、頭も良く裕福そうな女の子の、はっとするような孤独。居場所を探して、自分という人間を知りたくて、町から町へ移動し、一瞬のつながりにぬくもりを感じても、それが錯覚だとわかっている。軽快なメロディと真逆の寂しさを裏原宿あたりを歩くと、いつも思い出す。

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