「ひとりじゃない」。水瀬いのりを支え、奮い立たせる言葉の意味――水瀬いのり・音楽活動5周年インタビュー④

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公開日:2020/12/2

水瀬いのり

 12月2日。1stシングル『夢のつぼみ』で声優・水瀬いのりが音楽活動をスタートして、5周年を迎えた。戸惑いながら歩き始めた水瀬いのりの足跡は、多くの聴き手の応援を受け、支えられながら、リリースを重ねるごとに確かなものとなっていった。これまでに8枚のシングルと3枚のオリジナルアルバムを発表、日本武道館をはじめ大きなステージに立ち、ファンと心を通わせて絆をはぐくんできた結果、「水瀬いのりの音楽」は5年間愛され続けてきた。そのあたたかい関係性は、きっとこれからも変わらないだろう。今回は、音楽活動5周年と、水瀬自身の25歳の誕生日でもある12月2日の9thシングル『Starlight Museum』リリースを記念して、連載形式で5本立てのロング・インタビューをお届けしたい。第4回のテーマは、「Starlight Museum」。5年間への想いを言葉にした楽曲のこと、そしてこれからの自身のありたい姿について語ってもらった。

ひとりじゃないって言いたいし言われたい、と思いながら活動をしている

――最新シングル、“Starlight Museum”についてお話を聞いていきたいと思います。まず5周年というテーマがあった中で、「どんなシングルにしたい」というビジョンがあったんでしょうか。

水瀬:これまでの5年間があって、それでいてこの5年がゴールではなく、ここから始まる6年目に向けた、節目でもあり始まりであり、終点であり起点でもあると思うんです。自分の5年間を形にできたら、音楽にできたらいいなって思いながら、制作をしました。

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――この曲の歌詞は、共作なんですよね。5年間応援してきた人、これまでの水瀬さんの楽曲を何曲か聴いたことがある人は、いろんな曲の歌詞が入ってることにすぐ気づくと思うんです。ある意味で集大成的な内容だし、さらに今後について期待が高まるような歌詞だと思うんですけど、“Starlight Museum”の歌詞も、完成したときに感じることはいろいろあったんじゃないかな、と。

水瀬:そうですね。今回は共作という形ではあるのですが、一緒に歌詞を書いていったというわけではありません。デモの段階で櫻澤ヒカルさんが書いてくださった歌詞がとても素敵だったので、その歌詞をできるだけ残したいとおもったんです。一生懸命書いてくださった歌詞なので、「わたしが変えてしまっていいんだろうか」とも考えつつ、もっと自分の想いを乗せたいと思って、いろいろ悩みました。櫻澤さんが曲に向き合って、わたしの5年間を思いながら書いてくださった歌詞を活かしながら、自分らしい言葉をプラスして書いていく、という共作でした。

――この曲の歌詞は、水瀬さんの音楽活動を知りたければ、まずこの曲を聴いたほうがいい、という内容になってますよね。「こういうことを歌ってきた人なんだな」って伝わるというか。

水瀬:はい。デビュー曲から、いろんな楽曲を歌わせていただいて今を迎えていますが、本当に伝えたいことは常にこの気持ちだったなあって、今この歌詞を見ても思います。ファンの皆さんへの思いや、自分が過ごしてきた5年間もあり、1年目の時点や、初めて作詞をする段階では書けなかった歌詞だと思いますし、ちゃんとわたし自身が書いた歌詞だと伝わる1曲になったと思います。

――いろいろ象徴的なフレーズがありますけど、一番気になったのは《一人じゃない》なんですよね。この言葉って、“夢のつぼみ”や“harmony ribbon”にも出てくるし、水瀬さん自身が書いた“Catch the Rainbow!”にも出てくる。改めて聴き直して、とにかくこれは水瀬さんが聴き手に伝えたいことなんだな、と思ったんですけども。

水瀬:そうですね。やっぱりひとりだったら、たぶんこんなに長く歌を歌うこともなかったと思いますし、それは声のお仕事も同じだと思うんです。自分が誰かに必要とされていたり、頑張っていることが誰かに届いていることを知れないままだったら、こんなに走り続けることはできなかったと思います。今でも、ひとりの活動ではありますが、ひとりじゃないって言いたいし言われたい、と思いながら活動をしているので。今回の歌詞を書いているときも、コロナ禍の影響で、物理的に孤独を感じてしまう時間が長かったり、ライブイベントができないことによって、わたし自身活動している意味を考えてしまう時間がありましたし、もしかしたら皆さんもわたしを応援している意味を考えたかもしれない、と思うんです。

 でも、「こんな短い期間で、今までのことってなくなっちゃうの?」と思ったら、すごく悲しくて。こんなことで負けたくないですし、今まで一緒に過ごしてきた時間はなんだったんだろうって考えました。それがあっての今なのに、たった数ヶ月間で――もしかしたらこれから数年続いていくかもしれないですけど、確かにあった楽しい思い出まで過去に変わってしまうのは、あまりにもつらいと思って。こんなときだからこそ「ひとりじゃない」って言いたいと思いました。わたしはこうして音楽活動をさせてもらっているので、その活動でみんなにそれを伝えるべきだと思いました。アニメーションや音楽やインタビューを通して、みんなに発信し続けることはやめないようにしよう、という思いを持ちながら書いた歌詞でもあり、伝えたい思いがありました。

――水瀬さん自身はひとりじゃないし、聴いてくれる人に「ひとりじゃないんだよ」と伝える、両方の意味がある、ということですか。

水瀬:はい。たった何秒かのフレーズかもしれないですけど、ちゃんと意味を持って歌っているので、意味を持って聴いて受け止めてほしいですし、これが今伝えたい気持ちなので、それを感じながら、今までの楽曲も聴き返してもらえたら、すごく嬉しいです。

水瀬いのり

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「Inori Minase LIVE TOUR 2019 Catch the Rainbow!」より

どんなときでも水瀬いのりではあるけど、それでいて自然体のままステージに立てる、そんな姿が理想

――歌詞の中では、《叶えたい夢》というフレーズも印象的でした。

水瀬:みんなで素敵な景色を見ていたいんです。みんなが笑顔でわたしの歌を歌ってくれて、わたしも笑顔でステージに立っていて、まわりではいのりバンドが笑顔で支えてくれていて、裏に戻ればいつものスタッフさんたちが笑顔で迎えてくれる。それが夢であり、もう実現している光景をこれからも見続けたいです。自分の中で、絶えずそういう景色を見ていたいと思っていますし、それが自分の見つけた夢なのかな、と思います。

――カップリングのM-3“思い出のカケラ”も、これまでの5年間を想起させる楽曲になっていますね。

水瀬:そうですね。たぶん、わたしを応援してくれている方にはきっとそう届くと思いますし、それでいて、“Starlight Museum”ほど「アーティスト・水瀬いのり」を感じさせすぎない楽曲にもなっていると思います。家族、友人、恋人など、自分のまわりにいる大切な人たちと過ごしてきた時間や、受験シーズンがあって、また冬が来て、春には新入生や社会人になったり、自分の進む道が変わっていく中で、いろいろなシーンに寄り添える楽曲になったと思います。世代、年齢問わずたくさんの人に届く曲だと思います。

――9枚目のシングル“Starlight Museum”は、水瀬さんの25歳の誕生日にリリースされるわけですが、「25歳の自分はこうありたい」と考えている目標を教えてください。

水瀬:やっぱり、自然体でいたいなって、すごく思います。ときには、曲のイメージに合った表情だったり、ライブでもそういう姿を見せていきたいと思いますが、親しみやすさと――普通っぽさというか(笑)、そういうものがもしかしたら自分の魅力なのかなって、この5年で気づきました。決して唯一無二のオーラがあるわけでもないですし、ものすごく華があるわけでもないですし、街を歩いていても誰にも気づかれないですし。普段暮らしているときは、自分が「声優で歌手の水瀬いのりさん」という認識を忘れなそうになりますが、それでもラジオやライブに出させてもらったり、こうして音楽活動で歌を歌わせてもらうときには、「あっ、わたしは水瀬いのりなんだ」と思う瞬間があって。それって、けっこう特別な感覚なのかな、と思います。ひとりの25歳の女性としての人生ももちろんありますし、こういった活動をしていく中で、いろいろな楽しいこと、挑戦したいこともあって、両方で磨きがかかっていったらいいのかな、と思います。

――「声優で歌手の水瀬いのりさん」と水瀬さん自身がある程度乖離してるんだけど、それが悩みの種になっているのではなく、自然にいいバランスで成立してる、ということなんですかね。

水瀬:そうですね。確かに、それはすごく思います。どんなときでも水瀬いのりではあるのですが、それでいて自然体のままステージに立てる、そんな姿が理想です。

第5回は12月4日配信予定です。

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取材・文=清水大輔  写真=GENKI(IIZUMI OFFICE)
スタイリング=田村理絵 ヘアメイク=大久保沙菜

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12月5日(土)19:00〜開催!

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