年間1億食! マクドナルド「ハッピーセット」の“絵本と図鑑”が、子どもの発想と思考力を育む秘密

暮らし

更新日:2021/12/24

マクドナルド

「どうして正義のヒーローは、悪者をなぐっていいんだろう?」――子どもにこんな質問をされたらあなたはどう答えるだろう。12月17日からマクドナルドで販売がスタートした「ほんのハッピーセット『みんなで!どう解く?』」は、こうした「答えのない問題」を子どもたちに問い、さまざまな答えを引き出していこうとする画期的な一冊。これまでも絵本やミニ図鑑NEOといった「本」のハッピーセットが人気を集めてきたマクドナルドが、1年にわたって子どもたちと進めてきたプロジェクトの集大成にあたる取り組みだ。

マクドナルド

 先日、開催された完成発表会にはアンバサダーを務めたQuizKnockメンバーらも登場し、『みんなで!どう解く?』のこれまでを振り返った。本作にはどんな思いがこめられているのか。ハッピーセット開発担当者・日本マクドナルドマーケティング本部の小嶌伸吾さんにお話を聞いた。

(取材・文=荒井理恵)

子どもたちの発想や思考力を育むために生まれた新企画

――今回の「ほんのハッピーセット『みんなで!どう解く?』」とはどういうものなんでしょう?

小嶌伸吾さん(以下、小嶌さん):マクドナルドでは2018年から本のハッピーセットを販売していますが、今回の本はポプラ社さんが発行する『答えのない道徳の問題 どう解く?』と協力して、子どもたちと一緒に1年間作ってきたプロジェクトの集大成として生まれたものです。現在ハッピーセットのおもちゃは、発達心理学の先生とともに作っているのですが、このプロジェクトも「子どもたちの発想や思考力を育むために何かできないか」ということで進めてきました。これまで2月にはオンラインワークショップ、その後は「今月のどう解く」という月替わりのお題にSNSで回答を集め、夏休みには自由研究キットを無償ダウンロード公開、さらには教育関係者に向けて学校の道徳の授業で利用できる教材キットを無償提供するなどの取り組みを行ってきました。

――企画のはじまりはどういったものだったんですか?

小嶌さん:3年ほど前なんですが、ポプラ社さんの『答えのない道徳の問題 どう解く?』の作者の方から、何か一緒に取り組めることはないかとお声がけいただいたのがきっかけです。とはいえ単純に本を出しても意味がないので、マクドナルドとして取り組みをどう発展させられるかをじっくり考え、ようやくそれが形になった感じですね。

マクドナルド

 マクドナルドには子どもたち自身が楽しんで来ているので、それを入り口に「どう解く?」に触れてもらえたらと思われたのではないでしょうか。

――マクドナルドが「道徳」をテーマにする意義をどう捉えていますか?

小嶌さん:おもちゃの開発でも意識しているのは、単純に知識を「学ぶ」だけではなくて、知識を「活かす」だったり、知識を「得たい」という意欲を生むために、何ができるかということなんです。そしてもっと子どもに主体性を持たせて、大人には子どもの意見を大事にするようにしてほしいと思っています。こうした取り組みをマクドナルドが行うことに違和感を覚える方もいるかもしれませんが、マクドナルドの想いを知ることで、もっと子どもたちが大事にされる世の中になるきっかけになればと思っています。

マクドナルド

――『みんなで!どう解く?』には「答えのない問い」が集まっています。こうした世界に楽しく触れるのは、子どもたちにもいい刺激になりそうですね。

小嶌さん:今は家でも学校でも、間違ったことをしたら怒られるという風潮が子どもたちの中で強まっている気がします。みんな間違うのが怖いんですよね。『みんなで!どう解く?』には答えがないからこそ、自由に自分の考えを言えますし、それが普段の生活にも活きていくとよいと思っています。大人には子どもの話を同じ目線で聞くきっかけに、子どもには自分の意見を聞いてもらえないという意識を取り払うきっかけにそれぞれなったらうれしいですね。

advertisement

本を読んだ「先」を考えて届けていく

マクドナルド

――2018年からほんのハッピーセットを出されていますが、本というメディアで子どもたちと接点を持つことで意識されていることはありますか?

小嶌さん:本を読んだ「先」を考える余地が大事だと思っています。絵本の場合は物語の先ですし、図鑑の場合は図鑑で知った知識を活用することですね。たとえば、図鑑の巻末にはクイズがついています。得た知識を活かして正解したら、うれしくてもっと覚えたいと思ってくれるんじゃないかと思います。あとは図鑑や絵本というのは普通に買うとそれなりのお値段がしますよね。ハッピーセットが、作家さんを知ったり、動物や魚など世の中の様々なモノやコトに興味を持ったりする入り口になったらいいとも思います。

マクドナルド

――ハッピーセットは家族や誰かと一緒に買うことが多いですから、本と家族の触れ合いの場がセットなのがいいですね。書店や図書館ではなかなかできませんから。

小嶌さん:やはりモノとしての本がそこにあって、たとえば親子で会話だけでなく手触りも含めて一緒に共有するというのはすごく大切なことですから、そうした本でないとできない体験を幼少期からしていただきたいですね。今回の『みんなで!どう解く?』は我々にとってもチャレンジではありますが、こうした試みから「本が提供することの価値」が見直されるといいと思っています。

――本には対象年齢がありますが、どの層をメインターゲットにされているのでしょう。

小嶌さん:難しいところですが、年少さんくらいでも楽しめることを意識しています。小学生になると自分で読んで楽しめるようになりますし、年齢が下になればなるほど自分で読むというよりは大人に読んでもらうことが多くなりますよね。ただ図鑑はテーマの好みによるので、たとえば電車だったら字が読めなくても小さなお子さんがイラストを楽しめたりしますし、内容によって年齢が上下する感じはありますね。

――ちなみにどのくらいのスタッフでハッピーセットを作っているんですか?

小嶌さん:企画制作としてプロジェクトをリードするのは4名程度です。実はおもちゃの場合は、企画も制作もマクドナルド側で行い、ライセンス企業に監修していただくという流れになっています。年間で延べ150から200種類くらいのおもちゃを作っていますが、変わりやすいトレンドを追いかけながら作っていくのはそれなりに苦労もあります。現在の担当メンバーの中にはハッピーセット世代の子を持つママやパパもいますので、調査の数字とリアルな子育ての現場で見えてくることも重ねながら、ひとつひとつのおもちゃをつくっています。

――今後はどんなテーマに取り組まれるのでしょう。SDGsやジェンダーなど、いま子どもたちも触れる機会が増え関心が高いテーマも取り上げていかれるのでしょうか?

小嶌さん:大人が「当たり前」だと思っている価値観というのは、そういう教育をされたから生まれたものでもあるわけです。たとえばマクドナルドではおもちゃのリサイクルを実施していますが、「おもちゃは違うものに循環させて利用できる」ということが子どもたちの中で当たり前になれば、そういう世の中になっていくでしょう。ジェンダーに関しても同じですよね。たとえば「人形遊びといったら女の子、ヒーローものの遊びといったら男の子」というイメージをもつ方が多いのですが、人形ごっこやメイクごっこ遊びのおもちゃが好きな男の子もいますし、ヒーローものが好きな女の子もいます。

 マクドナルドは、そうした個性を尊重できるように、多様性についても子どもたちにいい意味で伝えられる立場にいます。「男の子がメイクごっこしてもいい」と言葉でメッセージしなくても、たとえばハッピーセットのテレビコマーシャルでそういう姿を実際に見せることができます。今後も子供たちの未来や社会をよりよくするために世の中に打ち出せるアクションについて、我々にできることを考えていきたいと思います。

あわせて読みたい