「学校なんて行かなくていい」は本当か? 荻上チキ×青木光恵スペシャル対談
更新日:2016/3/14
中学なんていらないとは言えない?
――今までの話をまとめると、一概に学校行かなくてもいいとは言えないってことですよね。
【荻上】 いじめの問題がクローズアップしている時に、「学校なんて行かなくていいんだよ」って、テレビでコメンテーターの人が言いますが、これは危険だと思って警鐘を鳴らしてきました。
学校に行かなくていいっていった段階で、いじめの問題が個人の問題に矮小化されるんです。本人の選択として学校に行かないと、家庭でなんとかしなければならない。自費で教育にお金を投資しなくてはいけなくなり、いろんな選択に自らコミットしなきゃいけない、さまざまなハードルが高くなってしまいます。そして、そういった行動をとった時点で教師とか学校とかは責任をとらなくて済むんですね。
安易に「学校なんて行かなくていいんだよ」と言うんじゃなくて、やるべきことはまず、学校をマシにすること。それと並行して、場合によっては行かなくてもいい環境を作ること。誰もが、安全な環境で、安心しながら、良質な教育を受ける権利を満たすための社会環境を作ること。そこに力を注がなくてはいけないということですね。
【青木】 なかなかそこまでいかないですよね。周りにも「学校は行かなくても大丈夫だよ」と言う人も多いんですよ。そう言いたくなる気持ちもわかるんですけど。「そうだよね。行かなくてもいいよね」と軽く同意はできないですね。向こうも軽い気持ちで「学校なんて行かなくていいよ」って言ってるわけじゃないんでしょうけど、行かなくていいって言っても、じゃあ行かなくてどうするかっていう話にならないじゃないですか。そう言って励ましてくれることに関してはありがたいと思いますけどね。行かなきゃ駄目って説教されても困りますし。
【荻上】 「行かない代わりに何があるの?」って聞いたら、多くの人は答えられない状態ですよね。親が教えるというケースもありますが、誰もができるわけではない。
【青木】 私もやっぱり自分で教えられればいいなって思った時期もあったんですけど、現実的にやっぱり無理ですね。
【荻上】 無理ですよね。親が全部担うのは不可能です。全人格をそこに投与しなきゃいけなくなると、自分は「親」としてしか生きられないんだ。と思うようになります。そういった意味でも、僕は一概に行かなくていいとは言えないです。