「渡辺」「安倍」は天皇の子孫、“藤”が付く名字は藤原氏の末裔…つい話したくなる「名字」の雑学!

社会

2015/5/29

 誰にでも一度は「自分のルーツを知りたい」と思ったことがあるのではないだろうか。そんな時、まず取りかかるのが名字をたよりに遡っていくこと。しかし、戸籍で遡れるのはせいぜい3代前あたりまでだし、名家でもない限り個人で調べるのには限界がある。日本には10数万もの名字があると言われているが、公式にその統計を取ったことがないのだとか。

 ではどうすれば名字のルーツを知ることができるのだろうか。『知ってる? 名字の話 思わず人に話したくなる「名字」のヒミツ!』(森岡 浩/宝島社)では、日本における名字の成り立ちや代表的な名字の由来などを多数紹介しているので、その一部を紹介しよう。

「名字」は日常的な呼び分け、「姓」は地位やルーツを示す

 日本人の名前は、前半と後半の2つの要素で成り立っている。前半部分を「名字」または「姓」と呼ぶことがあるが、この違いは何だろう。

 本著によると、もともと「名字」は、家を区別するために私的に名乗っていたもので、屋敷の所在地や自分の支配している領地の土地名などに由来していることが多いという。そのため勝手に変更することもできたという。一方の「姓」は一族の地位やルーツを示すもので、まつりごとを担当する氏族ごとに天皇家から与えられていた。天皇家が統括していたため、勝手に変更することはできなかったのだとか。

名字のルーツを知りたいなら、まずは同じ地名を探してみるべし

名字のルーツは大きく次の8種類に分けられるという。

(1)姓をそのまま名字にしたもの
(2)住んでいる地名
(3)「地形」が由来になっているもの
(4)「方位」や「方角」が由来になっているもの
(5)「仏教用語」が由来になっているもの
(6)「職業」が由来になっているもの
(7)「藤原一族」の子孫
(8)主君などから特別に「もらった」もの

 そのうち圧倒的に多いのは(2)なので、名字のルーツを知りたければまずは名字と同じ地名を探すと良いという。ただし同じ地名が日本中に何カ所もある場合があるので、その中でも古くからある土地を探すとルーツをたどれる可能性があるそうだ。また、珍しい名字なら、同じ名字の人が密集して暮らしている地域に由来していることも多いとか。ただし地名由来の場合、名字に“家を区別する”という意味があったため、逆に由来となった場所ではあまり増えないという傾向があるそうだ。

 名字の分布が分かったら、その周辺の郷土資料を調べたり、古くからその名字を使っている一族を探して話を聞くなども有効だ。個人的には、その地域の墓石に書かれた名前と年代を見て回るのもオススメする。

「渡辺」「安倍」は天皇の子孫

 天皇家の子孫が名乗ったことが分かっている名字もあるという。そのひとつが大阪発祥の「渡辺」だ。平安初期の嵯峨天皇の末裔である嵯峨源氏の一族が、現在の大阪市北部に当たる摂津国西成郡渡辺という地域に移り住み、地名から「渡辺党」という集団を組織したことに由来しているそうだ。その後、一族は海上交通を発展させ、全国各地に渡辺氏の一族を残して勢力を拡大したというのだ。

 また、「安倍」「阿部」「安部」など、様々な漢字を用いる「あべ」さんは、いずれも第8代孝元(こうげん)天皇をルーツにもつという。ということは、安倍首相も同じルーツなのだろうか。

日本人の名字ベスト100のうち、1割は下に「藤」がつく

 日本人の名字ランキングを見ると、上位100位までのうち、1位「佐藤」、6位「伊藤」、10位「加藤」など、実に1割が下に“藤”が付くそうで、これらは基本的に有力貴族だった藤原氏の末裔だという。藤原氏が平安時代に朝廷の重要ポストの多数を占めていたため、家を区別する必要から藤原姓とは別の名字を名乗ったのがその理由。その際、自分の領地や職業を表す文字と、実力ナンバーワンの藤原一族であることを表す“藤”を組み合わせたというのである。

 一番多かったのはやはり領地の一部で、伊勢に領地を持っていた藤原氏が「伊藤」、同じく加賀の「加藤」、近江の「近藤」(36位)など。1位の「佐藤」は下野佐野や佐渡などの地名からつけられたほか、左衛門尉(さえもんのじょう)といった“左(佐)”のつく職業にも由来していたという。

 知れば知るほど奥が深い、名字の話。ほかにも本著には名字と関係の深い家紋についての知識や、名字ランキング1000、難読名字の紹介など、ビジネスやご近所付き合いで小ネタとして披露できる雑学も満載。ぜひ一度ご覧あれ。

文=増田美栄子