村上春樹が授賞式スピーチで触れたアンデルセン童話『影』に大反響「今まで読まなかったことを後悔した!」

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/13

 小説家・村上春樹が2016年の「ハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞」を受賞した。2016年10月30日(日)にデンマークで授賞式が行われたのだが、そのスピーチの中で村上はアンデルセンの作品『影』について触れた。その影響か、Amazonの2016年10月31日付けの“売れ筋ランキング”で『影』が1,158,131位から148位へと急浮上し、“人気度ランキング”では2位にランクイン。村上のコメントがきっかけで『影』を読んだ読者からは、その深い内容に大反響が上がった。

 村上はスピーチで『影』を読んだ感想として、アンデルセンが童話作家として暗く、望みのない物語を描いたことについて驚いたことを伝えた。さらに、作中で登場する“影”についてはネガティブなものとして捉えつつ、影があって初めて光が存在することを訴えている。

 どれほど高い壁を築いて部外者を排除しても、自分に都合よく歴史を書き換えても、自分たちを傷つけることになるだけだということ、自分の影と一緒に生きることを学ぶべきと発言。

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『影』という作品は、暑い国で学者の“影”が一人歩きを始め、勝手に自分の人生を歩んでいくという物語。影は地位とお金を手に入れ、学者に対等な関係を求める。しかしその果てには、やがて主人公と影の立場の逆転という恐ろしい結末が待ち受けていた――。

 読者からは「人間の実存に関わる恐ろしくも素晴らしい傑作!」「 驚くほど深い大人のアンデルセン」「影は結局、心の闇か、学者の一部なのか…色々考えさせられた」「今まで読まなかったことを悔やむほど胸に突き刺さる作品」と絶賛の声が。

 村上のコメントによって注目を浴びた『影』に多くの読書家が唸らされている様子。同作が自分の影と光について考えてみるいいきっかけを作ってくれるかもしれない。