東京女子×上京女子 vol.4 「理想の結婚相手は孫悟飯!? 本当の幸せってなんだろう?」

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

 30歳を目前に外見も肩書も申し分のない男性、幸一郎と婚約した東京女子・華子。幸一郎の大学の同級生で、友だち以上恋人未満の関係を続けてきた上京女子・美紀。ひとりの男をめぐって出会ったふたりの女の視点から、アラサー女子の不安や葛藤を描いた山内マリコさんの小説『あのこは貴族』(集英社)。その出版を記念し、6人のアラサー女子を集めて「東京女子×上京女子」の座談会を開催した。5回にわたる連載レポート、第4回目のテーマは「東京女子と上京女子の結婚観」だ。

▶ 第1回はこちら(東京女子×上京女子 vol.1「女の友情は物理的距離で壊れる!? 」
▶ 第2回はこちら(東京女子×上京女子 vol.2 「逃れられない“東京のカルマ”」
▶ 第3回はこちら(東京女子×上京女子 vol.3 「東京男子と上京男子、魅力的なのはどっち?」

 生まれ育った環境は、女の結婚観にどんな影響を与えるのだろうか。東京女子と上京女子の恋愛観に迫った今回の座談会。東京女子は東京男子と上京女子は上京男子としか付き合ったことがないという意外な事実が発覚したところで、話題はそれぞれの結婚観についてへ。

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自由な人生と結婚して家族を持つこと、どっちが幸せ?

──ここに集まった6人はみなさん独身ですが、結婚願望はありますか?

東京Bさん(以下、東京B):いつかはしたいなって思ってます。

上京Fさん(以下、上京F):私は30歳までにしたいです。

東京Aさん(以下、東京A):20代のころはしたかったんですけど、だんだん結婚願望がなくなってきました。

東京Cさん(以下、東京C):まだあまり考えたことないですね。

上京Dさん(以下、上京D):絶対したくないわけじゃないんですけど、ひとりの方が楽だからなあ……。

上京Eさん(以下、上京E):私もひとりでいる方が好きです。でもずっとひとりは寂しい気もする。

──実家に帰ったとき家族や親戚に結婚を急かされることないんですか? ドラマや漫画だとそういうシーンよくあるじゃないですか。

上京D:私はもう何も言われませんね。マイペースな性格なので、言ってもしょうがないって思ってるのかも。

上京F:結婚というか「家族を持つのが当たり前」って感覚はあるかもしれないです。絵に描いたような大家族のなかで育ったので。

──たしかに「結婚」ってただ好きな人と結ばれる、とかじゃなくて「家族を持つ」ことですもんね。恋愛とはまた違うのかも。

東京C:私は恋愛と結婚は別物って価値観です。いまは、自由にいろいろな人と恋愛してますけど、結婚したら法的な責任が出てくるじゃないですか。それに恋愛結婚っていつか飽きてしまいそうで……。

上京E:わたしは、恋愛と結婚を分けて考えたことないかも……。恋愛の延長線上に結婚があると思っているので。

──結婚に対する考え方は「東京女子と上京女子」とかじゃなくて、人それぞれまったく違うのかも。

東京B:私なんて、最近結婚ってなんなのかよくわからなくなってきました。30歳を過ぎてから、早くに結婚した友だちが旦那さんとうまくいかなくなってきたって話をよく聞くし……。幸せってなんなんだろうって考えちゃいます。

東京A:私は自分の意思で、いまの自由な生活を選んできたので後悔はしてないんですが、たまに「本当にこれでよかったのかな……」って思う瞬間もあります。でもたぶん、どんな生き方が幸せかなんて、周りと比べるものじゃないんでしょうね。

理想の結婚相手はドラゴンボールの孫悟飯!?

──みなさんは、今まで付き合った人のなかで結婚したいなと思った男性はいましたか?

上京E:実は6年間同棲していた人がいて。なんとなくこのまま結婚するんじゃないかなって思ってたんです。それが「他に好きな人ができたから」と振られてしまって……。でもすごく自分勝手な人だったので、今思うと結婚しなくてよかったんですけど。

東京B:私は25歳のとき、当時の彼にプロポーズされたんですが断りました。いい人だったし、パートナーとしては申し分なかったんだけど、ずっと一緒にいられるかって言われると自信がなくて。そのころちょうど周りの友だちが続々と結婚しだしたので、ただ結婚したいだけなのか、その人のことを本当に好きなのかわからなくて……。

──たしかに、結婚するかしないかというより「誰と」するのかって迷いどころかも……。

東京A:一念発起してお見合い結婚した後輩が「結婚相手にするならドラゴンボールの孫悟飯がベストだ」って言ってました。強くて、勉強もできて、奥さんを大切にして。でもお父さん(孫悟空)ほどぶっ飛んでない(笑)

一同:わかる!(笑)

上京F:私は今の彼氏と結婚したいって思ってます。彼は精神が安定していて、家族を大切にしてくれそうなタイプなので、理想の結婚相手なんです。愛想を尽かされないように、料理の腕を上げようと頑張ってます。

──そういう、料理の腕を上げるという努力も、広くとらえれば「婚活」のひとつなのかなという気がしますね。

上京F:その通りです! 上京してくるとき、祖母に「結婚はしなっせよ」と言われて。でも結婚したいからって必ずしもできるとは限らないじゃないですか。そうしたら祖母が「これまで受験や就活に努力して成功してきたのに、どうして結婚に対してだけ頑張らないんだ」って言ってくれたんです。その言葉がずっと心に残っていて、せっかく理想の人に出会ったんだから、ちゃんと頑張ろうと思えました。

──おばあちゃんの言葉、すごくささりますね……! ほかのみなさんは婚活ってしたことありますか?

東京A:20代のころは、親戚にすすめられてたくさんお見合いをしてました。そのとき自由な人生を選ぶか、家族をつくる再生産の道を選ぶか、すごく悩んでいて。結局、自由な人生を選んできたので今も独身です。そのころのお見合い相手のなかに、これまで女性とお付き合いしたことがないって男性がいたんですが、私と話したことで自信がついたとかで、その後すぐに結婚してました(笑) なんかちょっと複雑ですよね。

上京D:お見合いっていろいろな人に出会うんですね。私は、これまで結婚したいと思った男性もいないし、婚活もまったくしたことないですね。一生ひとりでもいいかもって思い始めてます。

 結婚に対する価値観の違いは「東京女子だから」「上京女子だから」とわかりやすくわけられるものではない。自身の経験や周囲の環境によって築き上げられるものだから、人それぞれ違うのが当然。だからこそ「結婚=幸せ」という方程式はまったくの間違いだ。『あのこは貴族』に描かれているように、独身だろうと既婚だろうとバツイチだろうと、自分の人生を我慢したり妥協したりしなければ、誰でも幸せになることができるはずだ。

 いよいよ最終回となる次回のテーマは、東京女子と上京女子のこれからのライフプランについて。子どもや仕事などさまざまな話題が飛び交う。

取材・文=近藤世菜

『あのこは貴族』(山内マリコ/集英社

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『あのこは貴族』(山内マリコ/集英社)

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