親友型、カウンセラー型…笑顔で殴りあう女のマウンティング! 瀧波ユカリ✕犬山紙子

暮らし

公開日:2017/4/14

『マウンティング女子の世界 女は笑顔で殴りあう』(瀧波ユカリ犬山紙子/筑摩書房)

 色々なことが分かり始めた大学生の頃。私は女の子同士の会話に違和感を持つようになった。(あれ? この2人…こんなに仲良かったか? なぜニコニコしながら…なぜ必要以上にニコニコしながら会話している?)。(この子ずいぶん笑顔で言い放ったが…今の一言は嫌味に近くないか? 俺の捉え方が卑屈なだけか?)。やがて私も社会人になり、ちょっぴり経験を重ね、ついに確信を得た。女性同士の会話、注意深く聞くと恐ろしいときがある。その答えを求めるべく探し出したのが『マウンティング女子の世界 女は笑顔で殴りあう』(瀧波ユカリ犬山紙子/筑摩書房)だ。

 本書は、「私の方が上ですけど?」と示したがる女性のマウンティング心理を解き明かすべく、漫画家の瀧波ユカリ氏とエッセイストの犬山紙子氏が対談を通して、女のマウンティングの世界を紹介している。女性同士の会話に違和感を持ったことがある男性、もしくはマウンティングをやりすぎて反省している女性におすすめしたい。しかし女性に幻想を抱く男性、これからもマウンティングし続けたい女性は、幻想が粉々に砕け散ったり、良心の呵責に苦しんだりするので、絶対に買わないでほしい。まずは本書で紹介されているマウンティング女子の生態の一部をタイプ別に紹介したい。

■親友型

「打ち解けてなんでも話そうよ! それが私たちにふさわしい交流の仕方だよ」と、プライベートを根掘り葉掘り聞いてくるタイプ。相手から情報を引き出した上で、「何でも言える仲だよね」という大義名分のもとマウンティングする。住んでいる場所、家賃、彼氏など、狙いやすいマウンティング情報を聞き出すのが上手い。彼氏の写真を見て「イケメンすぎないところが逆にいいよね」と言いがち。

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■カウンセラー型

 求めてもいないのに、メイク、ファッション、恋愛などのアドバイスをしてくるタイプ。「彼氏ができました」と報告しようものなら、“セックスレスにならない方法”や“浮気しない方法”など、イマイチ活用できない的外れなアドバイスを上から目線でする。必要もないアドバイスを繰り出し、「相手が私の意見を求めている」という架空の雰囲気を作るテクニックを持っている。この方法により相手との上下関係を作り上げる。

■自虐型

 自分の状況を逆手にとり、自虐から自慢に入っていくタイプ。よく聞くセリフを載せていこう。既婚女性に対抗するためのマウンティング「私なんて全然結婚できなくて、独身生活を謳歌しまくってま~す」。反対に、独身女性に恋愛の話を聞かされた後のマウンティング「子どもを育てていると毎日が忙しくて、ちっちゃなことで悩んでいるヒマはないかな~」。化粧が濃い女性へのマウンティング「ずっとすっぴんだから化粧の仕方が分からなくて」。これらのセリフをドヤ顔で言い放ったとき、その女性はマウンティングをキメているそうだ。

■都会暮らし女子×田舎暮らし女子

 最後に女のマウンティングの世界をより明確に伝えるべく、本書に載せられている「マウンティングシミュレーション」を要約してご紹介する。都会女子を演じているのは犬山氏。田舎女子を演じているのは瀧波氏だ。文字が大きくなっているところがマウンティングのセリフだ。

犬山 この間、引っ越したんだけど、新しいウチってこんなかんじなんだよね。港区なんだけど、やっぱりそんな大きな家には住めなくって~。ユカリの家は広いからうらやましいな。

瀧波 うちは実家だからね。

犬山 いいよね、実家。黙って座っていれば料理も出てくるし。私はもっぱら近くのカフェでランチだよ~。 (中略)

瀧波 紙子の住んでいる部屋って何部屋で家賃はどれくらいなの?

犬山 ワンルームだけど12万円くらいかな。

瀧波
 マジで~。私の友達、地元の駅近に住んでるんだけど、新築2LDKで8万円だって。彼氏と住んでるんだけど、それでも高いって言ってて~。

犬山 あははは!田舎って何だかほほえまし~い。

 いかがだろうか。このようにして今日も世の女性たちは笑顔で誰かを殴っている。誰かの上にまたがってマウンティングしている。私は本書を読みたくなかった。もう女性たちの会話を純粋に聞くことができない。……最後に私も世の女性に向けて捨て台詞を、マウンティングをさせてもらおう。本書を読んだ感想を言いたい。

いのうえ あははは!女性って何だかほほえまし~い。

文=いのうえゆきひろ