濃厚なセックス…ムシと人間が融合した人類の超設定にハマる人続出!! 大人気BL小説ムシシリーズ、待望の続編!!

文芸・カルチャー

2017/4/20

『愛の在り処に誓え!(花丸文庫)』(樋口美沙緒:著、街子マドカ:イラスト/白泉社)

樋口美沙緒の大人気BL小説ムシシリーズ7冊目となる最新刊『愛の在り処に誓え!(花丸文庫)』(街子マドカ:イラスト/白泉社)が4月20日に発売された。ファンにはタイトルだけで「来たー!」と待望の、前作『愛の在り処をさがせ!』の続編である。ムシシリーズの舞台は、文明が滅亡した後の地球。人類は、生き残るために強い生命力を持つ節足動物と融合した。人は自らの起源種となるムシの特性を受け継いだ性質を持ち、社会はムシの世界の弱肉強食のヒエラルキーが階級となり、「強」に立つハイクラスと、「弱」に立つロウクラスの2種類に分かれている。

並木葵(なみきあおい)の起源種はナミアゲハ。ナミアゲハのメスは生涯一度の交尾しかしない。ハイクラスだが、葵はごく稀にしか生まれない、身体が弱く短命な「性モザイク(雌雄同体)」だった。18歳の時、グーティ・サファイア・オーナメンタル・タランチュラの最後の一人であるケルドア公国大公シモン・ケルドアに、「子供を産める相手」として縁談を求められ、日本からケルドアへ向かった葵だが、婚姻は半年で終わってしまう日本に帰り、お腹に宿っていたシモンの子どもである息子の空(そら)を出産し、苦労しながらひとりで育てていた葵は、5年後、4歳の空を連れてケルドアへ戻り、シモンのそばにいることを決意する。

――と、400ページの紆余曲折を経て2人がくっついたところで終わったのが前作『愛の在り処をさがせ!』。作者自ら、まだまだ書き足りない、とあとがきで語り、読者も「この続きを! 二人の蜜月を!」と熱いラブコールを送った続刊が実現したのが本書である。続刊ではあるが、ムシシリーズは各巻で完結しているので、この巻から読み始めても問題はない。

さて、本書は、前巻のラストで、ついにケルドア公国で3人が再会した直後から物語がスタートする。蜜月が始まるかと思いきや、葵と出会うまでに、子孫を残すためだけに14歳から28人と番(つが)う人生を送ってきた愛を知らない大公シモンと、短命な性モザイクのため、誰からもかえりみられず、空気のように扱われてきた自己評価の低い葵の心の距離は、なかなか縮まらない。

縮まらないのは心の距離だけではなく、なんと、この2人、再会してからはセックスレス。シモンにとって、セックスは愛情表現ではなく単なる義務で、むしろ、相手を道具に見立てる非情な行為。なぜそんなものを大切な葵とせねばならないのか? 空も生まれているし、葵は身体が弱いし、必要ない、という思考なのだった。シモンの情緒は子どものままなのである。

精神を病んだ母との特殊な環境が、子ども時代のシモンの心を凍らせた。さらに種として世界最後の一人である重責に耐え、代えのきかない大公として国を背負い、公人としてのみ生きることがシモンの日常だったのだ。国民に神のごとく崇められながら、シモンの心は孤独すぎた。そんなシモンのそばにいると覚悟を決めて愛を伝える葵の存在が、シモンの無意識のトラウマを少しずつ癒やし、歪んで固まっていた心を成長させていく様子は、今作の読みどころの一つだ。

シモンが心身ともに愛を覚え、本能に突き動かされて葵を押し倒すまでにさらに200ページが必要とされ、ついについに(前作から数えると約600ページ! をかけて)、葵に愛をそそぎまくるシーンは圧巻。ほんとうの愛に行き着くまでが長かったからこそ、そこからの糖分は脳が溶けそうな甘さ。シモンがあやつる糸で、タランチュラの媚毒を葵の身体のあちらこちらに注入するなど、セックスはかなり濃厚。

巻末には、さらに未来のエピソードも描かれて、満足感の高い一冊。けれど、葵が短命な性モザイクであることを考えると、幸せであればあるほど、その向こうには切なさも隠れている。そんな余韻も含めて楽しんでほしい、丁寧に紡がれた愛の物語である。

文=波多野公美