『ハチクロ』から『3月のライオン』までの軌跡を振り返る! 史上最大規模の原画展「羽海野チカの世界展〜ハチミツとライオンと〜」

アニメ・マンガ

2018/7/20

 2000年『CUTiEcomic』にて『ハチミツとクローバー』を連載することになり、漫画家デビューを果たした羽海野チカさん。その後、休刊などにより掲載誌を『ヤングユー』(2000~2001年)、『コーラス』(2001~2005年)と変えながらも連載を継続し、2006年に完結。美術大学を舞台に描かれた、恋愛と就職、才能と人生、すべてにもがき苦しみながらも、かけがえのない奇跡のような時間。ときにハイテンションなギャグ、ときにシリアスでヒリヒリとしたシーン、鬱屈とした雰囲気、それらが見事に混ざり合った「青春群像劇」は多くのファンの感動を呼び、その後、テレビアニメ化、実写映画化、実写ドラマ化、と展開された。

 また、その後2007年から『ヤングアニマル』で始まった新連載『3月のライオン』は前作とは一転、将棋を題材とした天才少年が描かれている。羽海野さんらしい、あたたかい人物描写や美味しそうな食事シーン、コミカルなギャグは健在ながら、より才能が容赦なくはかられる厳しい世界で行われる対局場面は圧巻。連載中ながら、すでにテレビアニメ化、実写映画化がされ、新たな羽海野チカワールドが広がっている。

『ハチミツとクローバー』は、2003年に「第27回講談社漫画賞少女部門」を受賞、『3月のライオン』は、2010年に「第1回ブクログ大賞マンガ部門」、2011年に「マンガ大賞」と「第35回講談社漫画賞一般部門」、2014年に「第18回手塚治虫文化賞マンガ大賞」をそれぞれ受賞するなど、名実ともに圧倒的な評価と人気を誇る作家である。

 そんな、羽海野さんの原画展「羽海野チカの世界展〜ハチミツとライオンと~」が、7月19日から銀座松屋で開催されている。デビュー作となる『ハチミツとクローバー』や連載中の『3月のライオン』はもちろん、同人時代に描いた作品をまとめた『スピカ~羽海野チカ初期短編集〜』も含めて、これまでの軌跡をふりかえる展覧会だ。

 入り口に一歩足を踏み入れると、まずは羽海野さんのヒストリーが、当時発売されたコミックスの表紙とともに展示されている。ちなみに、会場に入ってすぐの場所には、今回展覧会にきた人たちにあてた、羽海野さん手書きのメッセージも飾ってある。羽海野さんらしいあたたかさに満ちた内容に、序盤から心打たれること必至だ。

 原画の数もすごい。まずは『ハチミツとクローバー』から始まるが、表紙や扉絵など、当時リアルタイムで読んでいたファンは垂涎ものだろう。原画の美しさ、その画力に圧倒されつつも、時折遊び心がきいているのが、羽海野さんの展覧会らしい。

 ファンなら一瞬で気づく、あのシーンが再現されているのも感動。ほかにも、羽海野さん自作の「プックン」が飾られていたりと、まるで作品の中の世界に迷い込んだかのような気分になってくる。

 また、コミックス派だったファンは大歓喜のコーナー「一話読み」も。こちらでは、コミックス未収録の話が一話分、原稿の形ですべて展示されている。ちなみに、7月24日から別の一話が展示されるとのことなので、2話とも見たい人はスケジュール調整をしておいた方がよさそうだ。

 続く『3月のライオン』の展示では、キャラクターごとの原画に加えて、「対局」や「川本家」などのカテゴリーや、生原稿も多く展示されており、こちらも見応えたっぷりだ。展開されたグッズや、映画時に使われたグッズ、アニメーションの台本など、作品に関わるものはすべて余さず展示されているという、ボリューム満点っぷり。

 また漫画作品だけではなく、羽海野さんがファンからもらったアイテムやお気に入りの雑貨、ふだん使っている画材、愛猫ブンちゃんの写真(ここで1コーナー分)など、羽海野さんを構成するものも随所に展示されている。

 原画以外にも、その前段階である「アイデアノート」や「原稿に至るまでの道筋」なども現物が展示されており、ふだん自分が読んでいるコミックスの裏にある羽海野さんの格闘や情熱を感じられる、大変レアなコーナーである。

 ほかにも、米津玄師やYUKIなどアーティストとのコラボレーション、雪見だいふくのパッケージ、雑誌『MOE』に掲載されていたエッセイ漫画などもすべて原画が展示されており、タイトルの「〜ハチミツとライオンと〜」というところだけ見てなめてかかったら、返り討ちにあうレベルの豪華さ。Instagramでしか投稿されていなかったイラストも原画で飾られており(感想コーナー)、史上最大規模というのは伊達ではない。

 そして最後は、お楽しみのグッズコーナー。今回の原画展に合わせて作られた新商品も多数ある。

 かなり豊富な種類が取り揃えられているので、先に欲しいものリストを作っておくのもいいかもしれない。今回ヒグチユウコ、コンドウアキ、名久井直子とコラボレーションしたトートバックとTシャツは数量限定、お一人さまひとつまで。「捨男ステッカー」や「瓦煎餅」は、誰かにプレゼントするにもピッタリ。新商品は売切必至なのでお早めに!! 新商品以外にもオリジナルグッズはたくさん販売されているので、過去に買いそびれたものもこちらでチェックできそうだ。

 お腹いっぱい、大満足の展覧会。購入したグッズにほくほくしながら出口に向かうと、さらなるサプライズが。なんと、展覧会前日に羽海野さんが会場に足を運び、壁に直接イラストを描き下ろしたのだとか。実物はぜひ会場でじっくりとご覧ください。

 とっても粋な計らいに、最初から最後まで羽海野さんの愛情とパッションを感じる展覧会。平成最後の夏の、特別な思い出になりそうだ。

取材・文=園田菜々 撮影=内海裕之