恋愛頭脳戦は“ファーストキッス”では終わらない! 果たして恋の勝者はどちらに?『かぐや様は告らせたい』

マンガ

公開日:2022/12/28

※本記事は作品の内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

 シリーズ累計2200万部を突破した『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』(赤坂アカ/集英社)は、先日発売になった28巻をもって大団円を迎えた。

 四宮かぐや(しのみやかぐや)と白銀御行(しろがねみゆき)が、お互い「相手に惚れさせ、告白させよう」と権謀術数の限りを尽くしてきた、まさに恋愛頭脳戦の記録である。

 ただ「かぐや様」はまだまだ終わらない。原作のおよそ折り返しにあたるまでを3期にわたってテレビアニメ化している状況で、今まさに快進撃は続いている。

 テレビアニメ第3期『かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-』の原作「文化祭と二つの告白」編の続き、単行本14巻から16巻までのストーリーを紹介したい。なお本稿は、テレビアニメ3期の続編にあたる、劇場で特別上映中の『かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-』の原作部分を紹介している。

 このクリスマス周辺の出来事を描いたエピソードは本作の大きな山場のひとつ。個人的な思い入れを言わせていただくと、最も泣ける部分で今読み返してもぐっときてしまうため、ぜひ読んでもらいたいと思いキーボードをたたいている。クリスマスを過ぎたところで恐縮だがご勘弁願いたい。

advertisement

ウルトラロマンティックが過ぎても恋人未満のふたり

 家柄が良い、秀才、そんなエリートたちが集う秀知院学園。その生徒会の会長・白銀御行と副会長で名家の令嬢・四宮かぐや。ふたりは「告ってきたら付き合ってやらなくもない」と同じ思いを抱き、相手に告らせようと長きにわたって恋愛頭脳戦を繰り広げてきた。そして学園の文化祭ラストで、ついに初めてのキスをした。気持ちが高ぶったかぐやから、白銀への熱烈なやつだ。ただふたりとも明確に「告らせても」「告っても」いない。かぐやと白銀の関係は曖昧なまま、恋愛頭脳戦の決着は持ち越しとなったのだ。

 繰り返すが「告らせたかった」かぐやは“自分から”白銀にキスをしてしまった。これが招いたカオスな現実から逃避するように、自身の人格を分裂させる。

 心の内で何人かのかぐやの人格が激論を繰り広げる。「(自分からキスしちゃって)どうするのこれ……」「本当に好きなら我慢できないわ!」そして冷徹で計算高さが前面に出ている人格、通称“氷かぐや”が自分たちに向かって、ヒステリックに泣き叫ぶ。

白銀御行を一番最初に好きになったのは
他でもないこの私よ!

 眠っていたかぐやが目を覚ますと、彼女は人が変わっていた。冷たい表情、攻撃的な言動、そのかぐやこそ、白銀が1年生の時に出会った頃の、周囲を拒絶する近寄りがたい少女であった。

 これは“普通”に憧れるかぐやが、最も白銀に見せたくない顔だろうか。

 ようやくキスまでこぎつけたはずの白銀は、ここから氷かぐやに向き合わざるをえない。

恋愛頭脳戦は“ファーストキッス”では終わらない!笑って泣けてまた笑える最高のラスト

 白銀御行は文化祭で計画を完璧に実行し、かぐやにウルトラロマンティックな思い出を作らせた。その結果、彼女とキスができた。ただ「告らせる」ことはできなかった。「もはや恋人と言ってもいいのでは?」と思いもしたが、踏み出せない。そこに現れたのが、ただでさえ素直でないのに5割増しで分かりにくくなった氷かぐやだ。

 彼女のきつめの当たりとプレッシャーに負け、ついに白銀は倒れてしまう。目的を決めて計画を遂行することには長けていた彼だが、実は弱さを隠していた。白銀は子どもの頃の失敗から、頑張り過ぎるくらい頑張るのが習慣になっていた。そして虚勢を張って結果を出し続けてきたのだ。白銀が大きなペルソナをかぶっていたことを、かぐやは知ることになる。

 人に見せたくなかった顔を出してしまったかぐやと、あくまで弱みを見せまいとする白銀。初めてのキスから関係が進展させられない彼らにチャンスが訪れる。

 生徒会書記の藤原千花(ふじわらちか)がクリスマスのホームパーティにふたりを誘ったのだ。その夜かぐやと白銀は、今までより直接的な恋愛頭脳戦を行うことになる。その勝者とは?

 多くのラブコメ作品において「キス=恋の成就」という構図は定番ではある。しかしこの物語は「ファーストキッスでは終わらない」のである。

 この14巻から16巻では、甘々なピュアラブコメから一気に進展するのか、となった時にふたりの内面が深く描かれた。ただ『かぐや様は告らせたい』は、むしろここからが本番というか、文字通り山を登り、そこからラブコメ作品の新しい景色を見せてくれる。

 まずはとにかくこのクリスマス周辺でふたりが願いを叶えられるのか、どちらが「告らせる」ことができるのか、ぜひ16巻まで一気に読んで確かめてみてもらいたい。最後のエピソードでは“笑えて泣けてまた笑ってしまう”ことを保証する。

文=古林恭

あわせて読みたい