親子で楽しめる美術の入門書 『小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画』が面白い!

文芸・カルチャー

更新日:2023/4/2

小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画
小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画』(青柳正規:監修/小学館)

 ピカソと言えば「ゲルニカ」、葛飾北斎と言ったら「富嶽三十六景」――。教科書に出てくるような名画について、作者やタイトルはわかるものの、そういえば詳しい成り立ちやメッセージについては知らない……。そんな、大人になってもあまり美術に親しんでこなかった方におすすめの一冊が『小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画』(青柳正規:監修/小学館)です。我が家では長男のために購入したのですが、大人が読んでも面白い! 誰もが知る名画の解説から絵を鑑賞するときのポイントまで、芸術を楽しむためのはじめの一歩が詰まった一冊なのです。本稿では本書の魅力を実際の章立てに沿ってひもといていきたいと思います。

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描かれたものから文化や物語を読み解く

 第一章には「何が描かれているのか」と題して、同じモチーフを描いた絵の比較や、一枚の絵の詳細な解説などが記載されています。例えば同じ富士山を描いた絵でも、まだ誰も富士山に登ったことのなかった時代の想像で描かれた富士山があれば、神のいる山として描かれた富士山もあり。雄大さを示すために全景を描いた作品や、あえて雲の上に突き出た頂上だけを描くことで巨大さを示した作品などさまざまな捉え方で描かれた一枚が紹介されます。またボッティチェリの「春」には9体の神や精霊が描かれていますが、本書ではそれぞれのポーズや視線の向きから、一枚に描かれたふたつの恋の物語を解説。恥ずかしながら筆者はまったく知らなかったため、「そういうことだったのか!」と感動しました。

画家たちの工夫がわかると、絵を観るのが楽しい

 第二章では、「どう表現されているのか」と題して画家たちの工夫を紹介します。まずスーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」を例にとり、点描という技法を紹介。絵の具を混ぜずにそのまま小さな点としてカンヴァスに塗ることで、より明るく鮮やかに見えることなどが実際のサイズまで拡大した部分図などを用いて解説されます。そのほか白いものを表現する方法を4つの絵を用いて示したり、動いている姿を表現する方法としてマンガ『ドラえもん』を含む4つの例で紹介したり。画家たちがカンヴァスに残した、漫画家が作品に残した試行錯誤の軌跡がわかると、絵を観るのが一層楽しくなります。

知識を得て、絵画の世界に親しむ

 第三章「絵画をもっとよく知ろう」では、絵を描くときや観るときの約束事を解説。青い衣服が聖母マリアを示す記号のひとつであることや、人の目に強く訴えかける力を持つ、色の三原色を用いた絵などが載っています。その他にも第四章では絵を描くときに使う画材や技法について、第五章では日本各地の美術館についても紹介。実際に絵を描いたり、絵を観に行ったりする手助けにもなりそうです。

 大人が読んでも満足度の高い一冊。ぜひ親子で楽しんでください。

文=原智香

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