TikTokでバズり中!堅物中年刑事×無口女子高生の異色バディが事件を解決する、ミステリーラブコメ『ペンと手錠と事実婚』

マンガ

公開日:2023/9/14

ペンと手錠と事実婚
ペンと手錠と事実婚』(椹木伸一:原作、ガス山タンク:作画/白泉社)

「バディもの」はその組み合わせにギャップがあればあるほど面白い、と個人的に思っている。たとえば警察官×警察官よりも警察官×死刑囚のほうが、先が読みにくくなるし、その化学反応がどんなものを生み出すのか予測不可能だ。

ペンと手錠と事実婚』(椹木伸一:原作、ガス山タンク:作画/白泉社)も、そんな先の読めないバディもののひとつ。本作でバディとなるのは、40歳で堅物の中年刑事・切鮫鋭二(きりさめ・えいじ)と声を発さない女子高生・梔子鶫(くちなし・つぐみ)だ。そしてこのふたりがさまざまな事件を解決していくという、ミステリーに仕立てられている。

ペンと手錠と事実婚

ペンと手錠と事実婚

 しかし、一見なんの接点もなさそうなふたりだが、出会いのシーンからして強烈だ。それは事件現場だった。

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 通報を受けた切鮫が駆けつけたのは、廃墟になったゲームセンター。そこで不審者が暴れているという。しかし妖しい人物だと思って声をかけた相手は、まさかの女子高生。そう、梔子鶫だった。しかも鶫は一切言葉を発さず、スケッチブックを用いて筆談をする。ちょっと変わった子を前に、戸惑う切鮫。そのときだった。廃墟の屋上から男性が転落してきたのだ。見上げれば屋上には人影がある。もしかすると、これは殺人事件かもしれない。不穏さを感じた切鮫は屋上へと駆け上がる。ところが、そこには誰もいなかった……。

 結局、事件は自殺として処理されそうになる。切鮫が目撃した人影については、誰も信じてくれない。そのときである。コミュニケーション用に持ち歩いているスケッチブックに、鶫が事件解決のヒントを綴るのだ。〈ひとり増えた〉〈自殺じゃない〉〈計画殺人〉。鶫が出すヒントはどれも断片的なものばかり。最終的にはお世辞にも上手いとは言えないイラストで説明する始末。もちろん、切鮫は頭を抱える。……が、これまでのキャリアや持ち前の推理力を総動員し、なんと事件の真相を見抜いてしまう。

ペンと手錠と事実婚

ペンと手錠と事実婚

ペンと手錠と事実婚

 本作の面白いポイントは、鶫が細かなヒントを小出しにしてくる点だ。王道の探偵役のように、ひとりでペラペラ喋りながら真相を暴いてみせるのではなく、筆談による断片的なヒントを提示するのみ。それらを一つひとつ集めて真相に辿り着くのが、切鮫の役割だ。つまり、事件解決における切鮫と鶫はとてもフラットな関係であり、どちらが欠けても解決には至らない。この関係こそまさに、バディだろう。ちなみに、鶫が小出しにするヒントはまるで「読者への挑戦状」のようにも読める。鶫のヒントを頼りにして、切鮫よりも早く真相を見抜くことができるかどうか。ミステリー好きであればそういった楽しみ方もできるだろう。

 また、謎めいた女子高生の鶫は、第1話のラストで切鮫に求婚する。40歳で若干くたびれた感もある切鮫にどうして!? 鶫の心情は深く描かれないが、そこにもひとつの謎が秘められているような予感もする。

ペンと手錠と事実婚

ペンと手錠と事実婚

 堅物中年刑事×無口女子高生という、異色のバディが事件を解決していくミステリー&ラブコメである本作。チグハグなふたりはこれからどんな道を歩んでいくのか、追いかけていくのがとても楽しみだ。

文=イガラシダイ
©椹木伸一・ガス山タンク/白泉社

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