ゆで汁やもどし汁はうまみの宝庫! だしもスープの素も使わない、10分でできる絶品スープレシピ【作ってみた】

文芸・カルチャー

公開日:2023/11/3

しみこむスープ
しみこむスープ』(角田真秀/主婦の友社)

 秋が深まってくると、恋しくなるのが疲れをほっと癒やしてくれる温かいスープ。お湯を注ぐだけのインスタントタイプもいいけれど、時間と心に少し余裕がある時は、簡単なスープを自分で作ってみるのも楽しいものだ。

 10月30日に発売された『しみこむスープ』(角田真秀/主婦の友社)は、まさにそんな場面にうってつけの1冊。著者の角田真秀さんは、だしやスープの素を使わずに食材のうまみを引き出すレシピを得意とする料理家。ポイントを押さえれば基本の調味料だけでもしみじみおいしい健やかなスープになることを、レシピを通して教えてくれる。

「料理はがんばらず、マイペースでつくるのがいちばん楽しい」と角田さんが語るように、本書に登場するレシピは少ない材料で、無理なく作れる簡単なものばかり。この中から2品作ってみたので紹介したい。

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トマトジュースでさらりと仕上げる「鶏肉のトマトクリームスープ」

 だしやスープの素を使わずに、うまみのあるスープに仕上げるにはいくつかのコツが必要。たとえば、肉や魚介のゆで汁をそのままだし代わりにしたり、乾物のもどし汁を加えたり、食材を炒めてコクを出したり。こういったポイントをスープに合わせて上手に取り入れると、「こんなに簡単に、おいしいスープができるなんて!」と驚くような味わいになる。

 まず作ってみたのは「鶏肉のトマトクリームスープ」。具材は、鶏むね肉、玉ねぎ、トマトの3つ。加えて、トマトジュース(食塩無添加)、小麦粉、オリーブオイル、白ワイン、生クリーム、塩、粗びき黒こしょうを用意する。

しみこむスープ

 鶏むね肉はひと口大よりやや大きめに切って塩・こしょうを振り、小麦粉をまぶす。玉ねぎは1cm厚さのくし形切りに、トマトはざく切りにする。具材の下ごしらえはこれでおしまい。

しみこむスープ

 次に鍋にオリーブ油を熱して鶏肉を炒め、色が変わったら玉ねぎを加えて炒める。玉ねぎがしんなりしてきたらトマトを加えてざっくりと混ぜ、白ワインを加えてさっと炒める。

▶▶おいしさのポイント
鶏肉、玉ねぎ、トマトを炒めることでうまみが増す!

しみこむスープ

 続いて水、トマトジュースを加えて5分煮る。

▶▶おいしさのポイント
市販のトマトジュースを活用すると味が決まりやすい

しみこむスープ

 仕上げに生クリーム、塩を加えて混ぜ、器に盛り、こしょうを振ればできあがり!

しみこむスープ

 具だくさんのトマトクリームスープは、鶏のうまみとほのかなトマトの酸味が広がるさらっとした仕上がり。スープの素を使っていない分、素材一つ一つのおいしさが際立っていて、口当たりはやさしいけれど、食べ進めるほどにクセになるような味わいだ。鶏むね肉もさっと煮るからパサつきがなく、やわらかな食感。食欲のない朝にも食べやすい。

乾物のもどし汁もうまみになる!「たら、切り干し大根、わかめのスープ」

 2品目はたらを使った「和」のスープ。スープの味に深みをもたせる決め手となっているのが、うまみ成分をたっぷり含んだ切り干し大根だ。

 用意する材料は、甘塩たら、切り干し大根、わかめ、酒、しょうゆ、はちみつ、ごま油、しょうが(せんぎり)。

しみこむスープ

 まず切り干し大根をさっと洗ってたっぷりの水に5分ほどつけてもどし、食べやすい大きさに切る。

▶▶おいしさのポイント
このもどし汁を捨てずにスープに活用

しみこむスープ

 鍋に水と酒を入れて火にかけ、煮立ったら中火にして、切り干し大根、もどし汁、わかめを入れて3分煮る。しょうゆ、はちみつ、ごま油を加えて混ぜる。

▶▶おいしさのポイント
はちみつを入れると、まろやかな仕上がりに!

しみこむスープ

 器に盛り、しょうがをのせればできあがり。

しみこむスープ

 具材それぞれのうまみがスープに溶け出して複雑に混ざり合い、だしを使っていないのに奥深い味わい。角のある塩気を、隠し味のはちみつが丸くまとめてくれている。ほくほくのたらの身、シャキシャキとした切り干し大根、つるんとしたわかめ、この食感の違いも◎。なによりお店で出てくるような上品なスープが10分で作れたことに感激!

 今回作ってみた2品は、どちらも具だくさんでボリュームもたっぷり。これにパンやご飯を添えるだけで、大満足の食事になった。

 少ない材料と調味料で手軽にできる角田さんのスープなら、くたくたに疲れて帰ってきた1日の終わりや、なにもやる気が起きない時でも気負わずに作れる。1日1杯、「これさえあれば充分だ」と思えるスープに出合える本書は、寒くなるこれからの季節に手放せない1冊になりそうだ。

文=齋藤久美子

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