若い世代の「がん」宣告、恋人には何と伝えるのが正解? 容姿の変化とのつきあい方や保険やお金の話等、12歳~49歳のがん患者のリアルな声

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PR公開日:2023/11/29

がん経験者のリアルな生活 「恋愛・仕事・お金」の悩みと上手につきあうヒント
がん経験者のリアルな生活 「恋愛・仕事・お金」の悩みと上手につきあうヒント』(岸田徹/翔泳社)

 目の前にある時は気が付かないけれど、失って初めてその大切さに気が付くもの――。たくさんありますが、“健康”もそのひとつだと思います。ライター自身も昨年に難病を患っていることが発覚。幸い命の危険はなく現在は服薬などで症状を抑えられていますが、それでもお金のことや仕事など、生活への不安はあります。そんな時頼りになったのは、ブログやSNSなどに綴られた同じ病気の人の声でした。かつて私と同じように病気を告知された人が、その後どんな日常生活を送っているのか。同じような悩みにどう折り合いをつけているのか……。それを知ることで、漠然とした不安がかなり和らいだことを覚えています。

 日本人が多く患う病気といえば、がん。「2人に1人はがんになる」とも言われるほど身近な病気ですが、その実情は当事者以外知らないことが多いはず。『がん経験者のリアルな生活 「恋愛・仕事・お金」の悩みと上手につきあうヒント』(岸田徹/翔泳社)は、そんながん患者たちのリアルな声を悩み別に紹介するもの。のべ100人以上の経験談がまとめられており、特に情報が少ないと言われるAYA世代(15~39歳)の声が多く収められていることが特徴です。治療ではなく生活に焦点を当てた内容なので、医療従事者の方に聞きづらい、または聞いても答えが出ないような、でもQOLには直結する、そんな悩みが多く集められています。

 本書の著者は、自身もがん患者である岸田徹氏。25歳で「胚細胞腫瘍(胎児性がん)」という希少がんの告知を受け、抗がん剤治療や手術などを経て社会復帰。再発を経験しながらも、現在は経過観察中だそうです。岸田氏は自身の経験から、同じ患者目線の情報の必要性を痛感。がん経験者へインタビューし、それをYouTubeで配信する「がんノート」というチャンネルを運営しています。本書はそのチャンネルをもとに、がん患者の声を掲載。「縦軸(時系列)だけでなく横軸(悩み別)でエピソードを見れるようになればいいな」という岸田氏の思いから編集された一冊なのです。

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がん経験者のリアルな生活

がん経験者のリアルな生活

「恋愛・結婚」「仕事」などAYA世代ならではの悩みが多く取り上げられている本書。彼氏彼女になりそうな人にがんをどのタイミングで伝えたか。治療によって体力がなくなっている中で、職場の人とどんなことを相談し仕事を続けたかなどの経験が語られます。この先もがんと付き合いながら、長い人生を歩むことになるAYA世代。当事者同士でもなかなか面と向かっては聞くことが難しい話題にも貴重な声が集まっています。

がん経験者のリアルな生活

がん経験者のリアルな生活

「お金」の章では制度や保険の話、「容姿」では病院内にあるアピアランス(外見)支援センターの存在やウィッグ使用者の体験談など、具体的な解決策も多数提示されています。例えば18歳の女性の体験談によると、ウィッグを選ぶ最初は「人毛」を選んだそう。しかし洗った後のブローが面倒で、「人工毛」のウィッグにしたそうです。「人工毛」のウィッグはヘアセットをしなくてもかたちを保ってくれるので、意外とこちらのほうが便利とのこと。ほかにも、高額医療費制度や自治体の医療費助成金などの制度について、クレジットカードで医療費等を支払ってポイントを貯める話など、お金についての体験談も掲載されています。がんだけでなくほかの病気でも参考になるような話もあり、筆者自身もとても勉強になりました。

がん経験者のリアルな生活

がん経験者のリアルな生活

 がん患者だけでなく家族や友人・恋人など周囲の人にとっても、当事者がどんな悩みを抱えているかなどを知ることができる、かなり有益な一冊だと感じます。自分自身が、そして身近な人ががんにかかった時、まずは手に取ってみてください。

文=原智香

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