間宮祥太朗×佐藤二朗×川栄李奈で映画化『変な家』の第2弾。必要ないはずの廊下が設置された理由に驚愕!?

文芸・カルチャー

更新日:2024/1/24

変な家2〜11の間取り図〜
変な家2〜11の間取り図〜』(雨穴/飛鳥新社)

 引っ越ししたり家を建てたりするわけじゃないけれども、家の間取り図を見るだけで楽しくなる。そんな方にオススメなのが『変な家2〜11の間取り図〜』(雨穴/飛鳥新社)です。

『変な家』シリーズは、2020年にウェブメディア「オモコロ」に掲載された記事と連動してYouTubeにアップされた「【不動産ミステリー】変な家」から始まりました。2023年11月時点で再生回数1560万回の「元祖」の動画が、当時話題になり、2021年に小説化第一弾『変な家』が出版。

 さらに、間宮祥太朗・佐藤二朗がダブル主演、川栄李奈が共演という豪華キャストで映画バージョンが2024年3月15日から劇場公開が決定。本記事でご紹介する小説版「2」は12月15日に発売されました。

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「1」では覆面ホラー作家の著者が知人から「不可解な家がある」と都内のある中古一軒家の間取り図を渡され、建築士と謎を解き明かしていく展開です。本書「2」は、「1」が予想外の大反響を得て、全国各地からいろんな情報提供があった上で、著者がひきつづき中部地方の物件を中心に探索を続けているという設定から始まります。

 筆者は「1」を知り合いの何人かが読んでいて、「面白い本がある」と聞いていましたが詳細は知らず、「不動産ノンフィクションドキュメント」だと勘違いしながら以下に引用する冒頭のミステリアスな展開を読みました。

根岸 この廊下、必要ないと思いませんか?
筆者 必要ない……?
根岸 だって、行き先がないんですよ。この廊下から、どこにも行けないんです。これがなければ、私と両親の部屋は、もっと広くできたはずです。なんのためにこんな無駄な空間を作ったんだろうって、ずっと不思議でした。

たしかに、言われてみれば妙な空間だ。収納スペースにしては細すぎるし、ドアや窓がついているわけではない。

 エピソード形式に章立てされた本書を読み進めていくうちに、章末で「え!?」というような大どんでん返しがある構造が繰り返されたため、「あ……これってフィクション?」と、2話目で筆者は気づきました。

 しかしそうした構造が繰り返されるわけではなく、「ドキュメントと勘違いして読む」タイプや「2から読む」タイプの読者もこまやかな配慮で抱き込みながら、さらに深くダークなミステリーの世界を中盤以降に展開していきます。

 家が建てられる経緯や間取りの細部にこめられた意図・事情を活用して、「そんな家あるはずない」「そんな出来事ありっこない」というような展開が描かれつつも、「もしかしたらあり得るかもしれない」と思わせるポイントを突いてくるのが著者のスタイルの特徴です。あり得ない出来事が、しっかりとした線で構成されていて誰でも一度が見たことがある「間取り図」の中で展開されるので、妙に説得力が出てくるのだと思います。

早坂 この家を建てたのは、ミツコちゃんのお父さん。「ヒクラハウス」の社長です。建築会社の社長ともあろう人が、こんなミスをするなんてありえない。たぶん…………ミスじゃないんです。
筆者 ……だとすると……。
早坂 この家は、お祖母さんを事故に遭わせるために造られたんじゃないでしょうか。
筆者 …………。

「え、じゃあウチのこの間取りも何か事情が……」と若干思ってしまう怖さもありますが、そこは本書が「あり得なさ」のほうに振り切っていてくれているので、「うちは大丈夫か」と安心でき、夜にトイレに行くのが怖くなるようなことはおそらくありません。筆者のように「2」から読んでも全く読み進めるのには問題ないので、ぜひ小説・映画・YouTubeと、好きな順番で著者の世界観に出会ってみてください。

文=神保慶政

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