アーニャが通うイーデン校の講堂ってどんな大きさ? アートブックが答えてくれるSPY×FAMILYの舞台裏

文芸・カルチャー

公開日:2024/1/26

SPY×FAMILY ANIMATION ART BOOK
SPY×FAMILY ANIMATION ART BOOK』(遠藤達哉:原作/ウィットスタジオ)

 子どものころ、アニメをよく見ていた。文字が読めるようになると、面白かったアニメの原作漫画を読むようになった。小学校高学年からは漫画雑誌を買い始めて、これまでとは反対に面白い漫画を愛読しては、それがアニメ化されると見るようになった。

 そんな私がひさびさにアニメをきっかけに原作漫画を読むようになったのが『SPY×FAMILY』(遠藤達哉/集英社)である。独特の愛らしさで人気を博している主人公アーニャの声を担当する声優、種﨑敦美さんの声に惹かれたのが始まりだった。興味を持ってアニメを見始めると夢中になってしまった。SNSなどでファンのつぶやきを読み、原作の画風やストーリーを大切にしているアニメだと知ったのも、原作漫画を読み始めた理由のひとつとして大きい。

 さて、私はここで「画風」とひとくくりにしてしまったが、アニメの画風はどのような経緯を辿って生まれたのだろうか。『SPY×FAMILY ANIMATION ART BOOK』(遠藤達哉:原作/ウィットスタジオ)は日本が世界に誇るアニメーション技術を知る手立てとして役立つアートブックであり、「アーニャは表情豊かだけどこれまでどんな表情をしてきたかな」「アーニャたちが暮らしているところの街並みってどんな感じだろう」というファンの疑問にも絵で答えてくれる。本書は、アニメに登場するキャラクターや場所が、どのように設定されているのか図解によって知ることができるのだ。

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 たとえば登場人物を取り上げたページでは、影付きのキャラクターデザインや服装、表情などが多数掲載されていて「このキャラのファッション、素敵だったから真似してみたいな」という要望も満たしてくれる。また、登場人物のバックグラウンドとなる場所にも注目したい。それぞれの場所全体の美術ボード、異なる角度からその場所を描いた切り返し、どの場面でその場所がバックグラウンドとして使われたのかがわかるように表現されている。細々とした部分までしっかりとした設定があるのだ。「アーニャの通うイーデン校の入学式があった講堂ってどんな形でどれだけ広い?」といった疑問があればぜひ見てみてほしい。講堂のスケールの大きさに圧倒されるだろう。

 私が特に面白いと感じたのは、『SPY×FAMILY』疑似家族の「はは」にあたるヨルのキャラクター設定と食堂のページだ。私はアニメでヨルを見ながら、彼女のファッションがいつもおしゃれなので気になっていた。そのためヨルの私服や正装、パーティー服、部屋着などが掲載されたページは見ごたえがあった。同じような服を買えば着こなしを真似ることもできるかもしれない。食堂のページは場所に関してだけではなく、上部に学食のメニュー表があり、生徒たちが毎日どのような食事をしているのかがわかる。「主人公のアーニャが授業初日に食べたオムライスはこれか!」という発見もあった。

 このように読む人それぞれが自分のお気に入りのページを見つけられるのが本書の魅力ではないだろうか。「この場所はここかな」「このキャラはこの表情をしているな」と本書を見ながらこれまでのアニメ『SPY×FAMILY』を見返すと、きっと楽しさも倍になるだろう。

文=若林理央

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