信長の強さの秘密はお金? 野口英世の金銭感覚はゼロだった? 教科書では教えてくれない偉人のお金の使い方

文芸・カルチャー

公開日:2024/3/8

偉人の年収 How much? 年収でわかる!? 歴史のヒーロー偉業伝
偉人の年収 How much? 年収でわかる!? 歴史のヒーロー偉業伝』(NHK「偉人の年収 How much?」制作班:監修/KADOKAWA)

 私たちが生きる上で欠かせないお金。稼ぐことや使うこと自体が好きな人もいれば、お金との付き合い方に人間性が表れるとあって、他人の金銭感覚に興味をそそられる人も多いだろう。そしてお金が大好きなのは、お金に親しみ始めたばかりの子どもも一緒。ピュアな瞳で「それ、いくら?」と尋ねまわる子どもの姿に親としてはヒヤッとするが、彼らの知的好奇心を育てるチャンスになる。

 そんなお金に興味を持つ子どもが歴史や仕事について学べるのが、本書『偉人の年収 How much? 年収でわかる!? 歴史のヒーロー偉業伝』(NHK「偉人の年収 How much?」制作班:監修/KADOKAWA)だ。

 年収という切り口で、歴史に名を残す人物の生き方や偉業に迫るNHK Eテレの番組「偉人の年収 How much?」を書籍化した本書。番組と同様、主に小学生以上の子どもと親が楽しめる内容だ。放送で取り上げた人物の中から、「戦国時代を生きた偉人」「好きに一直線!オタクな偉人」「晩年に活躍した偉人」「日本の紙幣にまつわる偉人」というテーマ別にセレクトした11人の人生を、その年収や稼ぎ方、お金にまつわるエピソードとともに紹介している。

advertisement

 お金という角度から偉人を見ていくと、彼らの意外な一面が見えてくる。たとえば戦国時代のヒーロー・織田信長の活躍を支えたお金について詳しく解説する。交通の要所である港から得た税収で兵力を強化したこと。敵将・今川義元の居場所を見つけた者に多くの褒美を与えるなど、情報収集にお金を費やしたこと。着実に稼ぎ、大事なポイントでしっかり払う武将のカッコいいお金の使い方から、子どもたちは学ぶことが多いだろう。

 感染症の研究で功績を残した野口英世の金銭感覚もユニークだ。アメリカ人の同僚に「ヒューマン・ダイナモ(人間発電機)」と呼ばれるほど医学への情熱は高かったものの、彼の金銭感覚はゼロ。19歳で上京した際、恩師や友人から受け取った餞別を2カ月で使い果たしたり、アメリカ留学のため集めた資金を自分の送別会で散財したりと、お金に関する残念なエピソードに驚く。千円札の肖像になったのに大丈夫?と疑うほどの金銭感覚に、思わず親近感を覚えてしまう。

 50歳からのセカンドキャリアで日本地図を作った伊能忠敬の人生も、働き方が多様化する時代を生きる子どもたちに伝えたい知識だ。子どもの頃から天文オタクだった忠敬は、商人として成功した後、正確な地図を作るという夢を叶えるため、事業や投資で成した財産から1万両(今の価値で10億円以上)を持って江戸へ。天文学を学び直し、自ら天命と語った地図作りに尽力した。将来の夢はひとつでなくてもいい、何歳からでもリスタートできるということを、伊能忠敬の生き方は教えてくれる。

 他にも、偉人のお金にまつわる驚き&面白エピソードが満載だ。親子で読めば、「あんなにすごい人なのにお金がなかったの?」「こんなに使っちゃったんだ!」など、会話もはずみそうだ。偉人を身近に感じられるため、教科書の堅苦しい歴史は苦手という子も楽しく学べるだろう。偉人の年収のほか、年表や当時の物価などの情報も整理されているので、Eテレですでに視聴済みの人も、本書で新しい気付きを得られる。未体験の歴史の魅力と学び方を教えてくれる1冊だ。

文=川辺美希

あわせて読みたい