男たちが「こだわりの食」を語り合う異色グルメマンガ。ラーメンは醤油派、味噌派、豚骨派? 食談義に腹が減る…!

マンガ

PR公開日:2024/4/5

男の食談義
男の食談義』(川原将裕/少年画報社)

 ひとり暮らしを始めて自炊が増えて以来、食へのこだわりも増えたような気がする。カレーには必ずコーヒーを入れる、シチューの具は食感を重視してとても大きくする、みそ汁の具は豆腐とわかめとネギを定番とする、などだ。他にもコンビニスイーツはファミリーマート派、居酒屋に行ってまず頼むのは梅水晶、ビールを飲むならあのブランドがいい……のようにこだわりを挙げ始めたらきりがない。友人達と語ると、なおのこと時間は足りない。それほど違いがあることが一興であり、新しいこだわりを見つける良い機会にもなるのだが。

男の食談義』(川原将裕/少年画報社)は、そんな食のこだわりについて描かれた作品だ。清掃業に従事する男たちが仕事をしながら、ありとあらゆる食へのこだわりを語り合っていく。

 例えば1巻の第5話「男のラーメン談義」では、ラーメンに関する談義が繰り広げられるのだが、全員ラーメンの味の好みや合わせる具材、食べ方が異なる。主人公の一人・源さんの好みはメンマ、ナルト、ネギ、焼きのり、少しのチャーシューがのった醤油ラーメン。そこにライスや餃子を付けてそれらをほおばりながらラーメンスープをすするのがオツなのだとか。しかし他のメンバーは味噌派、豚骨派と異なる好みが続き、個々の良さについて熱く語る。ここでお互いに意地を張ればラーメン論争になりかねないが、本作の主人公たちにそんな意図は感じられない。「生まれた時代も場所も違うからこそ、お互いに心のラーメンについて語れる。それは幸せなのだ」と感じていくのだ。

advertisement
男の食談義

男の食談義

男の食談義

男の食談義

 本作の魅力はもう1つ、ひとり暮らしの社会人が参考にできそうな自炊料理が紹介される点にある。1巻第11話「男の料理談義」では、それぞれが簡単に、かつ栄養が摂れそうな料理について語っていく。源さんのおすすめは玉ねぎとキャベツを使った料理。これらは男のひとり暮らしの貴重な相棒で、サケ缶やサバ缶、魚肉ソーセージ、マヨネーズを活用したおかずの数々は、どれも男の料理として白米のおともにぴったりなのだとか。「最近、夕飯のレパートリーがマンネリ化しているなー……」と感じる人にはきっと一助となる回だろう。

男の食談義

男の食談義

男の食談義

男の食談義

 ただ、話はおかずの紹介だけにとどまらない。雑だが味わいのあるおかずを思い出すことで、源たちが子どものときに父親から作ってもらった、母親の料理とは少し味が違う「男飯」にも思いをよせる。多くの人が一度は食べたことがある、父親の雑だけど特別に感じる男飯が描かれるシーンは、読んでいる僕もなつかしさを抱いてしまった。

 本書は「自分だったらどうやってこの料理を食べるか」「この料理なら何味派か」といったように、答えを出してから読み進めると面白い。きっと語り合うメンバーの誰かとこだわりを共感できるはず。新しい好みやこだわりに出会うこともできるだろう。

文=トヤカン

あわせて読みたい