日本人にはムリ!? はてしなく我慢強い対話が民主主義を成立させる

ビジネス・社会・経済

2015/7/21

ぼくらの民主主義なんだぜ

ハード : 発売元 : 朝日新聞出版
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著者名:高橋源一郎 価格:※ストアでご確認ください

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 隔靴掻痒と、隔靴掻痒であることの誠実。この本から伝わってくるのは、その2つの感慨だ。

 民主主義とはどういうものか、そうして現代日本における民主主義の可能性を探った本書で、高橋氏は鈍牛にも似た鷹揚な足つきで、論壇雑誌からインターネットまでに及ぶ多量の語りを引き合いに出しつつ、考えようとし、だが逡巡し決定的な結論を出さぬまま、民主主義のほんとうの姿の周囲を回り続ける。その歯がゆさは、民主主義というシステムの困難さそのものなのだ。

 本書は、2011年から朝日新聞紙上に連載した、「論壇時評」をまとめた新書だ。

 たとえばタイトルと同名の「ぼくたちの民主主義なんだぜ」なる一文の中では、台湾の立法院を数百の学生が占拠した事件を取り上げ、「民主主義とは、意見が通らなかった少数派が、それでも、(僕の意見を聞いてくれて)「ありがとう」ということのできるシステム」だと述べる。しかし、そのようなシステムを可能とするメカニズム、集団における具体的なディテールを語ることがない。ただ、「もしかしたら、わたしたちは、“正しい”民主主義を一度も持ったことなどないのかもしれない」と書くにとどまる。

 1000人の人間がいて、理想の社会を実現するには、1000人すべてが同じ理想を持たなければならないが、理想を持たない者にはひとりの別の考えを持てば足りる。このひとりが「ありがとう」と言えるにはどんな機構を用意すればいいのか。私には分からない。

 あるいは、「あるひとりの女性のことば」では、国際自動図書会での皇后陛下の基調講演に対し、その美しさに身体が震えたと書き、「社会の問題」を「自分の問題」として考え、そして、それを「自分の言葉」で伝える時、「そのようなことばだけが、遠くまで届くのである」と結ぶ。正しい見解である。しかしどうすればそんなことが可能なのだろう。

 いや、私は勘違いしているのだ。

 民主主義などという完成されたシステムなどどこにもないのだろう。ただそこになんとか迫り、実現させようと思い続ける努力の中のはるかな対話と、はてしない熟考というねばり強い営為こそが、民主主義への限りない到達のプロセスに違いない。本書で指し示されているのはそのことに他ならない。

 煩瑣で遠回りとも思える対話を途絶えさせないこと、決して途切れない思考の日々、それが民主主義そのものなのだ。

 と、この本を私は理解した。


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