自殺屋、ナイフ使い、押し屋…生田斗真主演で映画化された「殺し屋」シリーズの第1弾! 殺し屋たちの「生」の物語を描いた『グラスホッパー』

文芸・カルチャー

2017/11/11

『グラスホッパー』(伊坂幸太郎/KADOKAWA)

 世の中にはありとあらゆるビジネスがあるのだから、「人殺し」ビジネスなるものがあってもおかしくはない。伊坂幸太郎氏の『グラスホッパー』(KADOKAWA)は、人殺し業界(?)で生きる殺し屋の姿を描き出した作品。生田斗真主演で映画化されたことでも知られるこの作品は、『マリアビートル』『AX』と続く伊坂幸太郎の一大エンターテインメントシリーズ・「殺し屋」シリーズの第1弾でもある。

 主人公は元教師の鈴木。妻を殺された鈴木は妻の仇を取るため、非合法団体「令嬢」に忍び込むが、ある日、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら事故ではないらしい。犯人は「押し屋」。交差点の車道などにターゲットを突き飛ばして殺害する殺し屋の犯行だという。鈴木は「押し屋」の正体を探ろうとするが、「押し屋」が妻と2人の息子を持つ父親だという事実に困惑。一方、相手を自殺に見せかけて殺害する「自殺屋」・鯨、巧みに人殺しを遂行する「ナイフ使い」・蝉もそれぞれの理由から「押し屋」を追っていた。

 描かれる殺し屋たちはみな個性的。「自殺屋」・鯨は、今まで殺した人物たちの亡霊に苦しみ、「ナイフ使い」・蝉は、雇い主の呪縛に悩まされている。最初は恐ろしくてたまらなかった殺し屋たちの姿も、その葛藤を思えば、愛おしくすら思えてしまう。彼らはどう生きていくのか。どんな道を選ぶのか。気づけば、そっと息をひそめながら、鈴木とともに彼らの戦いを見つめる自分自身の姿に読者は気づくことだろう。

 天才的な殺人の腕を持つ殺し屋たちに比べれば、鈴木はただの一般人だ。妻の仇を取りたい一心で裏社会に飛び込んでみたものの、まさか殺し屋たちの戦いに自分が巻き込まれるとは夢にも思っていなかっただろう。殺し屋たちに囲まれながらも、彼には何の武器もない。あるとするならば、彼にあるのは、亡き妻との思い出だけ。ことあるごとに鈴木は妻との日々を思い出す。鈴木を奮い立たせる妻からの言葉は、彼をどこへと導くのだろうか。

 無数の殺し屋が登場するのだから、ストーリーはとにかく物騒。人はバタバタ殺されていくし、いつ誰が死ぬかも予測不能。淡々と事を成し遂げていく殺し屋たちの姿は身の毛がよだつほどおそろしい。しかし、死を描いた物語だからこそ、不思議といかに生きるかということを考えさせられる。殺し屋たちと一人の一般人の生き様を描いたこの物語は手に汗握る疾走感溢れるストーリー。どんな人をも魅了する物語を読まない手はない。

文=アサトーミナミ