動物園で考えたい、100年後のパンダたちの姿

スポーツ・科学

2018/3/4

『100年後も見たい 動物園で会える絶滅危惧動物』(日経ナショナルジオグラフィック社)

 2017年に東京・上野動物園で誕生し話題になった赤ちゃんパンダ、シャンシャン(香香)。その愛くるしい姿に心和まされた人も多いはずだ。彼女たちジャイアントパンダが絶滅を危惧されていることは、よく知られている。だが、全国各地の動物園で見られるライオンやキリンといった超メジャー級の動物たちも同じように危機にあることを、どれほどの人が知っているだろうか。

 身近な動物園で飼育されているが、野生では絶滅が危ぶまれている動物たち40種を美しい写真で紹介しているのが、『100年後も見たい 動物園で会える絶滅危惧動物』(日経ナショナルジオグラフィック社)だ。

 本書は、「存在すら知らない相手を守ることはできない」という趣旨のもと、世界の動物園などで飼育されているすべての動物1万2000種を写真に残す壮大な企画の一環で、いきいきとした活動的な構図で撮影された動物たちの写真は、最近流行っている写真図鑑の中でもひと味違う味わいがある。1種ごとに、どこの動物園で見られるかのデータが付いているのもうれしい。

■野生で消えゆく動物たち

 美しい姿が世界中の人々に人気で、日本でも数カ所の動物園で会えるのが、ユキヒョウだ。雪に溶け込むような白っぽい毛皮を持ち、野生では中央アジアの寒冷な山岳地帯に棲むが、狩猟により数を減らしてしまった。その保温性に優れた毛皮が災いしたこともあるが、生息地の破壊などで獲物となる草食動物が減少したため家畜を襲うようになり、それが住民とのトラブルを招いたという側面もあるという。

 また、飼育下でよく繁殖するワオキツネザルには、日本の50カ所以上の動物園で会うことができる。「ワオ」は漢字で「輪尾」。輪のある長い尾をピンと立てて歩く姿は可愛らしい。野生では、3世代36年間で個体数が半減してしまったというが、動物園で多く見かける動物が絶滅の危機にあるとは、なかなか人々は気づかないものだ。

 そして、シカの仲間であるシフゾウのように、野生では絶滅してしまったが動物園でかろうじてその種が保全されている動物もいる。

■動物たちを乗せたノアの箱舟はどこへ向かうのか

 多くの野生動物が絶滅へと追いやられつつある今、動物園は「最後の避難所=ノアの箱舟」になろうとしていると、本書では述べられている。これからの動物園に期待されるのは、「種の保存」の役割を担うことだと。

 動物たちの絶滅寸前まで繁殖に望みをかけ、最後に残った個体が死んだ後にはその動物の細胞を冷凍保存しているというサンディエゴ動物園の記事は、興味深いがとても哀しい。研究室を占める液体窒素のタンクの中で、1000種もの動物たちの細胞が眠っているという。私たち人間はいつか彼らを復活させられるかもしれないが、同時に彼らをそこに追いやったのも私たち人間なのだ。

 今私たちにできる身近なことは、危機に瀕した動物たちに関心を持ち続けることではないだろうか。本書のタイトルにもあるように、100年後にも彼らを――できることならば野生の姿の彼らを――見られるように。

文=齋藤詠月