BL、百合、ロリータ、フェチ、女装…文学の世界の極限を美麗マンガで描く

文芸・カルチャー

2018/3/6

『あの極限の文学作品を美麗漫画で読む。』(ひらはらしだれ/興陽館)

「文学」と聞いて、どんなことを想像するだろうか。

「教科書に載っていた難しくてちょっと退屈な話」
「なんだか古臭くて、今の時代の価値観にあわない話」
「おとなしくて内にこもりがちな、図書委員の友人の趣味」…

 という人もいるのではないだろうか。ジャンルを問わなければ「読書好き」を見つけるのは割と容易なことだ。しかし、その中から「文学好き」を探しだすことはなかなか難しい。残念ながら、文学が避けられてしまうのは、その門戸があまりにも重厚に感じられて、近づくことすら躊躇してしまうほど敷居が高くなってしまっているせいだ。文学に触れたことのない人たちが文学を遠ざけ、けむたがる…まさに、食べず嫌いな状態といえよう。

『あの極限の文学作品を美麗漫画で読む。』(ひらはらしだれ/興陽館)は、近代文学作家の中から“究極”の作品を著した選りすぐりの4名の作家(谷崎潤一郎、太宰治、夢野久作、泉鏡花)のそれぞれの代表作1作品ずつを“美麗に”漫画化したものだ。

■谷崎文学は極限のエロスとフェティシズム

『刺青』
 彫物師の清吉は長い間、自らが魂を込めて刺青を彫り込める究極の女を探していた。いちどだけすれ違いざまに見た、かごからはみ出た女の足はまさに清吉の理想。その足を持つ女を追い求め、ある日、使いに訪れた少女を麻酔で眠らせ、一晩かけて背中に女郎蜘蛛の刺青を打ち込む。目が覚めた少女は、男を肥やしに美しくなる魔性の女へと変貌していた。女の背中の刺青を見てひれ伏す清吉。彼はまっさきに女の「肥やし」となったのだった。美と加虐と偏執のみごとな共演を、美麗漫画が豊かに表現する。

■女好きする究極のダメ男、太宰

『人間失格』
「恥の多い生涯を送ってきました」そう言って毎晩浴びるように酒を飲み、複数の女と関係を持ち、金をせびる…究極にダメだがなぜか魅力的な主人公、大庭葉蔵。女と心中を図るも失敗。生きることも死ぬこともうまくできぬと嘆く。純粋無垢な妻をめとり、幸せな日々が続くかのように思われたが、運命は彼を再び死へといざなった…本作は『人間失格』のエッセンスで構成され、濃厚な味付けに仕上がっている。作品の名前は知っていたけれど、実は原作をまだ読んだことがない、という人にはうってつけの作品だ。

 巻末には、あとがき漫画として4人の文豪の絡み合いと、「死んでも読みたい極限の文学作品105」が、掲載されている。近代文学の究極の作品から、現代の純文学にいたるまで幅広くリストアップされていて目移りするほどだ。

 文学好きも、これから読んでみようかという人も、この禁断の沼地へぜひ足を踏み入れてみてほしい。

文=銀 璃子