2020年東京五輪が人間に与える新しい「可能性」 テクノロジーがもたらす未来の空気

ビジネス

2018/4/17

『教養としてのテクノロジー ―AI、仮想通貨、ブロックチェーン』(伊藤穰一、アンドレー・ウール/NHK出版)

「平成」という時代が終わる。東京オリンピックの開催はその節目とも言える。

「私たちを取り巻く最新の状況を整理するのに良いタイミングが今」と語るのはMITメディアラボ所長・伊藤穣一氏だ。

 著書『教養としてのテクノロジー ―AI、仮想通貨、ブロックチェーン』(伊藤穰一、アンドレー・ウール/NHK出版)の中で、彼は「経済」「社会」「日本」という未来を見抜く3つの視点から、日本人はこの先どう変わるべきなのかを論じている。

 AI(人工知能)やロボットは人間の労働を奪うのか、仮想通貨は「国家」をどう変えるのか、ブロックチェーンがもたらす「金融・経済」への影響は――それらの疑問に共通していえることは、まず私たちが「人間の役割とは何か」と考えることである。もし、AIなどが人間の代わりに働く環境がきたとしたら、現時点で仕事をすることに意義を見出していない人は、すぐ仕事をやめてしまうだろう。伊藤氏はそれを踏まえて以下のように言う。

でも、皆が〈働く〉ことをやめることになるとは思えません。お金のため、生活のためだけに〈働く〉ことが、本来の人間のあるべき姿だとは思えないからです。(中略)メディアラボの研究者に「明日から来なくてもいい」と言っても、彼らはまた次の〈働く〉場所を探すと思います。

 働くという行為はお金を得るだけではなく、「人生の質」を高める役割を持っている。お金に心配がない状態になっても追い求めるものは何なのか。それを一度考えてみる機会が、今なのかもしれない。

 日本人が変わる可能性を秘めたきっかけのひとつとして、伊藤氏は「“空気”がムーブメントをつくる」と予測する。日本人は「場の空気」に触発されて何かを起こす傾向があり、その「空気」にどうやって火をつけるかが肝心と考える。まさにその「空気」こそが、2020年の東京オリンピックであろう。世界中から関心を集める東京オリンピックの開催を機に、新しい文化やムーブメントを生み出すことが、硬直化した日本の社会システムをゆるやかに変えていく。つまり、新しい「価値観」を作るのだ。場の空気で燃えやすい日本人にとってはまたとない機会ではないだろうか。

 また、新たなテクノロジーの登場によって、従来とは一味違ったおもしろいパラリンピックの実現が可能かもしれないと述べる。リオ五輪の閉会式で披露された東京パラリンピックのパフォーマンスは、実にアーティスティックだと好評を得た。伊藤氏は「“障害者のためのスポーツ競技会”という従来の常識をくつがえすような試みを行うには、非常に良いタイミング」だと語る。

 日々、新しいテクノロジーが登場しているが「まだ自分たちの生活には関係ない」と思いがちではないだろうか。伊藤氏は、テクロノジーはもはや「一部の人たちのものではない」「共通して理解しておくべきもの」と言う。

 これから私たちを包み込むだろう新しい場の空気が、これまでにない生き方を迫ってくるだろう。今までは「よくわからない」あるいは「ただ人間にとって代わるだけ」と思っていたテクノロジーが、新しい人生の意味を与えてくれる存在になるかもしれない。

文=女生徒