山﨑賢人主演、映画公開!『羊と鋼の森』を読書メーターユーザーはこう読んだ

エンタメ

2018/6/13

『羊と鋼の森』(宮下奈都/文藝春秋)

 羊。鋼。森。一見、どう関連するかわからない3つの単語。それらはすべてピアノの中に広がる森を意味している。羊の毛のフェルトでできたハンマーが鋼の弦を叩くと、木材で出来た体からあたたかな音を響かせるピアノ。そんなピアノの中の世界に魅了された青年の物語、宮下奈都氏の『羊と鋼の森』(文藝春秋)がこれからますます大きな話題を呼びそうだ。

 本作は、一流の調律師を目指す青年の成長と葛藤の日々を描いたもの。2016年に「本屋大賞」を受賞したこの作品が、今年、山崎賢人主演で実写映画化された。

 主人公は北海道の山奥の村出身の外村直樹。彼は高校2年の時にピアノの調律師・板鳥宗一郎に出会う。板鳥が調律したピアノから鳴る音に故郷の森の匂いを感じた彼は、ピアノをまともに弾いたことさえないのにもかかわらず、調律師の道を進むことを決意。専門学校を卒業後、板鳥と同じ楽器店に入社し、もがきながらも、板鳥や先輩社員、客たちと触れ合いながら、調律師として、人間として、少しずつゆっくりと成長を続ける。

 この物語では地軸を揺るがすような大きな事件が起こることはない。外村がただ一日一日を丁寧に生きていく姿を温かく静謐な筆致で綴っているのだ。そんな物語を読書家たちはどう読んだのか。

それまで音楽とは全く縁のなかった青年が、ピアノの調律という森に踏み込んでいきます。 調律師というお仕事小説でもあるかもしれませんが、それ以上に何か一つの道を選び、歩き始めようとする姿がとても心に響きます。 先輩たちから素直に学ぶ姿が、誰からも暖かく見守られる所以でしょう。 コツコツ毎日真面目にやる…そんなことの大切さをも改めて気づかせてくれました。 そして1つではない豊かなピアノの音の他、木々の葉のなる音、風の音、多彩な音を作品から感じます。(むつぞー)

ピアノの調律の奥深さを知った。静謐さの中に情熱が潜んでいる。そして美しい文章。心が洗われていくような気がした。(まいさん)

心地良い音楽のように物語がそっと沁みこんできた。音が重なり音色となって音楽を生み出すように、宮下さんの言葉や想いが1人のピアノ調律師の物語を生み出し、私たちの心を震わせる。北海道の集落で育った純朴な青年は、ピアノの中に森を見る。ピアノと森が与える「ゆるされている」感覚。自分の居場所であり聖域でもある場所に向かって真摯に努力を続ける姿は、私たちへのエールとなる。(Tomo)

しみわたってくる感じ。なんていうんだろう。優しくて、穏やかで、しなやかな物語。静かな中に、ピアノの音だけが鳴り響くかのよう。私は、きっとまだ、こんな風に自分の心を震わすような、今後の人生が決まるような「出会い」をしてないなぁ。生きる指針、進むべき指針に出会えた彼がうらやましい。(ユカ)

この本好き!人生でこれだと思える物や人に出会える事の幸せ、出会えたからこその不安や葛藤が伝わってくる。それでも投げ出さずに続けることで少しずつ見えてくるものがあって、それを続けてくことが人生なんだろうな。一回読み終わったばっかりだけど、またすぐじっくり読み返したい本。(ふるこ)

 読書家たちの心を揺れ動かしたのは、この物語のあたたかさだ。この物語はあたたかい。物語それ自体があたたかいだけでなく、台詞や表現のひとつひとつが私たちの心をそっと癒やしてくれる。

「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。」(本書より)

 ピアノの音、森の匂い、心を打つ言葉の数々。映画館で見る前に本でもこの感動を味わってほしい。五感を刺激する美しいストーリーが身体中にじんわりと染み渡ってくる。この澄み切った美しさをあなたもぜひ体験してみてはいかがだろうか。

文=アサトーミナミ