裏切りと絆の物語…壮絶サバイバル・ファンタジー、死刑囚の少女「イレーナ」シリーズ第5弾登場!

文芸・カルチャー

2018/6/18

『イレーナ、闇の先へ』(マリア・V・スナイダー:著、宮崎真紀:訳/ハーパーコリンズ・ ジャパン)

 守るものができた時、人はまた強くなる。生きることを強く願った死刑囚の少女の宿命と冒険の日々を描いた異世界ファンタジー「イレーナ」シリーズは、最新刊であらたな局面を迎えた。シリーズ第5弾となる『イレーナ、闇の先へ』(マリア・V・スナイダー:著、宮崎真紀:訳/ハーパーコリンズ・ ジャパン)は、ファンタジー好きだけでなく、「あまり翻訳小説を読まない」人たちをも虜にする人気シリーズ。NHK-FM青春ラジオアドベンチャーでラジオドラマ化されただけでなく、Amazon2018年上半期kindle小説ランキングでも上位になった話題作だ。未読の人たちのために、今までの物語をおさらいするとしよう。

 舞台は、隣国シティアと敵対関係を深める国・イクシア。ある殺人を犯した罪で死刑囚となった少女イレーナは、死刑執行の日に思わぬ選択肢を提示される。絞首刑になるか、それとも、国の最高司令官の毒見役になるか…。生き延びるために、毒見役を選んだイレーナは、敵か味方かわからぬ上官ヴァレクの監視下に置かれ、死と背中合わせの日々を送ることに。次第に彼女には“魔力”があり、幼き頃に隣国シティア領から拉致されてきたことが明かされていく(『毒見師イレーナ』)。

 やがて、どうにか生きながらえたイレーナは故郷シティアに帰還。だが、彼女の能力が“霊魂の探しびと”と呼ばれる、かつて世界を恐怖のどん底に突き落とした危ういものとわかると、周囲は不安を募らせる(『イレーナの帰還』)。その事実に戸惑いながらも、心を通わすようになったヴァレクや家族、仲間の助けを借り、自分の運命を受け入れていくイレーナ。ついには、敵対関係を深めるイクシアとシティアの架け橋になることをのぞみ、敵対国との間を繋ぐ連絡官を務めることになった(『最果てのイレーナ』)。

〈霊魂の探しびと篇〉開幕となる第4作『イレーナ、失われた力』からは、イレーナを新たな苦難が襲う。ある夜、何者かに毒矢で射られたイレーナは、いっさいの魔力を失ってしまったのだ。頼みの綱のヴァレクもまた、長年固い絆で結ばれていた最高司令官との関係に、いま暗雲がたちこめ始める。続く、最新刊『イレーナ、闇の先へ』でも、イレーナの力は戻らない。さらに、ヴァレクと最高司令官の間の溝は決定的なものになる。そして、ヴァレクは苦悩の末、ついにある大きな決断を下すことになる。

 ひとたびイレーナとともに冒険へ出れば、あなたもこの世界に引き込まれるに違いない。精緻につくりこまれた世界と手に汗握る展開に思わず魅せられる。新たな敵、試される信頼と裏切り。交錯する思惑と、その裏で蠢く陰謀。そんな日々のなかで紡がれていくイレーナとヴァレクの強い絆はなんとあたたかいことか。怒涛の展開でクライマックスに向かうこの壮絶サバイバル・ファンタジーシリーズをぜひとも最新刊だけでなく、手にとってほしい。

文=アサトーミナミ